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「ドル円相場と○○の関係」という都市伝説⑧人民元(前編)

「米中貿易摩擦で、アメリカが中国に人民元切り上げ圧力をかけているらしい。この状況は、1980年代の日本と似ている。あのときもプラザ合意以降、円高ドル安が進んだ。
当時の日米関係を現在の米中関係に置きかえてみると、今後、長期的に元高ドル安が進むはずである。
2020年現在、人民元は割安かもしれない。つまり元安である今のうちに日本円を人民元に両替しておく。すると10~30年後に元高が進む。そのタイミングで日本円に戻せば、為替差益で大儲けできるにちがいない」

そう思ったので、調べてみた。

結論からいえば、そんなに甘くなかった。

§目次

前編
・プラザ合意とドイツマルク、米中摩擦
・中国人民元とは
・ドル・元レートの長期推移
・ドル・元・円レートの長期推移

後編
・FXレバレッジ1倍は外貨預金の代わりになるが、しかし……。
・中国株インデックス
・今回はお見送りすることに


§ プラザ合意とドイツマルク、米中摩擦


まず、1980年代と2020年代との比較から。
アメリカが突然「米ドルは高すぎる」と駄々をこねる国であることは間違いない。

●1980年代
覇権国:アメリカ
挑戦国:日本、西ドイツ

戦後、高度経済成長を遂げた日本と西ドイツを、アメリカは挑戦国として認定する。
アメリカの主張:「日本円、西独マルクに対して、米ドルは高すぎる。そのため貿易においてアメリカは不利である。たとえば日本製品はアメリカで不当に安く販売され、アメリカ国内の雇用が失われている。これからは米ドルを切り下げたいのでよろしく」
このアメリカの要望に先進諸国が同意(プラザ合意)。その後、1985~2015年の30年間で、日本円とドイツマルクともに、米ドルに対して通貨高となった。

マルクの対ドルレート長期推移は次の通り。
1985年以降、マルク高ドル安が進行したことがわかる(マルクは99年からユーロに移行)。画像1(画像は「investing.com」より)

・マルクの対ドルレート長期推移は次のサイトで確認できる。
「Federal Reserve Economic Data」https://fred.stlouisfed.org/series/EXGEUS#

・99年ユーロ移行後を含めた長期推移は次のサイトで確認できる。
「investing.com」 https://jp.investing.com/currencies/usd-eur

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