イリヤ・クリヤキンとワタシ

 以前にも書いたが、ワタシは "吹き替え派" だ。
 そして "吹き替え派" と公言する程度に、海外ドラマばっかり見てる。

 先日、デヴィッド・マッカラム氏が逝去した。
 ニュースの見出しには "英俳優のデヴィッド・マッカラムさん死去 90歳 「NCIS」ダッキー役で人気博す" と書かれていた。
 もちろん、リアルタイムで制作・放送されている人気ドラマなんだから、見出しもそっちになるのは当然なんだけども。
 ワタシにとってのデヴィッド・マッカラム氏は、永遠にイリヤ・クリヤキンなのだ。

 イリヤ・クリヤキンとは、「0011ナポレオン・ソロ(原題:The Man from U.N.C.L.E.)」通称・ナポソロとゆー、1960年代のドラマの登場人物です。
 リメイク映画が作られたので、そっちのタイトルでご存知の方もいらっしゃるかもですが、映画のイリヤとドラマのイリヤは、似て非なる…どころか、同姓同名の別人とお考えになった方が良いでしょう。

 そも、第一シーズンはモノクロ放送でしたから。
 時代を感じますなぁ。
 ワタシ自身も、放送をリアルに見ていたワケではありません。
 民放深夜の再(何度目だ?)放送を見た、後発ニワカ組です。
 ナポソロは、ジャンルとしてはスパイ物とゆーか、スパイ大作戦と同じく、アメリカの掲げる正義の名のもとに、暗躍する敵と戦っています。
 U.N.C.L.E.は、United Network Command for Law and Enforcement(法執行のための連合網司令部)の略で、「アンクル」と呼びます。
 ドラマ内では「アンクル(おじさん)」と引っ掛けたコネタなんかがあったり、なかったり。
 暗躍する敵は、スパイ大作戦と違って具体的な悪の組織、Technological Hierarchy for the Removal of Undesirables and the Subjugation of Humanity(人類を征服する為好ましからざるものを取り除く技術階層)とゆーのが存在します。
 こちらも頭文字を取って「THRUSH(スラッシュ・つぐみ)」と呼びます。
 毎回、スラッシュがなんかする、アンクルが調査する、いろいろあって事件解決って流れの、一話完結・勧善懲悪なドラマです。

 イリア・クリヤキンは、アンクルのエージェントで相棒のナポレオン・ソロ(そもそもこっちが主演で主人公)と二人で、スラッシュの野望を打ち砕くヒーローです。
 こう書くと、やたらかっこいい印象になりますが、ドラマの内容(特に第二シーズン以降)はかなりふざけてました。
 ナポさんの吹き替えは矢島正明氏、イリヤの吹き替えは野沢那智氏。
 この二人のなんともおしゃれで、ツーカーで、ふざけた会話がこのドラマの見どころです。

 元はナポさんメインのクールでハードなスパイ物だったのに、イリヤの人気が出ちゃったのでバディ物に方向転換した…ってのが制作側の事情らしいですが。
 一応ナポさん方が上司で主人公だから、派手なアクション(車の窓から顔を出して銃をブッ放すなど)はナポさん担当で、部下(と言っても口を利く時は対等でタメ口)のイリヤは汚れ仕事(運転をする、踏み台になる、怪しい場所に踏み込む時は先に行く)担当。
 とにかく野沢サンがやや甘ったれボイスで「ナポさぁん!」とツッ込み、女の子に目がないナポさんは「今日も素敵だね」などとクールな矢島ボイスで口説き文句を囁いたりします。

 マッカラム氏の芸歴は、映画の主演(B級だけど)もして、他にもぽつぽつドラマにも出ていたけど、ずぅ〜っと「ナポレオン・ソロのイリヤ」って言われていて。
 ダッキー役を始めて間もない頃も、やっぱりずぅ〜っと「ナポレオン・ソロのイリヤ」と言われていて、ドラマの中ですら「ダッキーに似てるのって誰?」「イリヤ・クリヤキンだ!」とか言われてしまうぐらい、ずぅ〜っとイリヤだったけど。
 訃報に「NCISのダッキー役」って書いてあったのは、そーいう意味では嬉しかった。
 ちなみにナポさん役のロバート・ヴォーン氏が亡くなった時は、ほとんど報道もされなかったから、やっぱりダッキーの役は大きかったな、マッカラムさん。
 ご冥福をお祈りするよ。おやすみ、イリヤ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?