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人にイライラする秘密

人の「失敗」や「無能」にイライラしないコツを1つ紹介します。少しはイライラが減ればいいかと。ストレスは身体に悪いですから。

私の知人に異常に仕事が遅い奴がいます。とろい、のろい。何回やっても学習しない奴もいます。「また失敗?もう少し考えろよ!」。イライラする。

ところが当人は反省していません。なぜ反省しないのか?アルアルなのが犯罪者。殺人犯に対して遺族がテレビの取材で言います。「真摯に反省して謝罪してほしい」。でも反省して謝罪した例は少ないのです。

無期懲役囚の美達大和氏が2010年に上梓した問題作『死刑絶対肯定論(新潮新書)』によれば、「死刑は肯定されるべき。なぜなら犯罪者は反省なんかしないから」だそうです。人を殺しても反省しないそうです。

同じ知見は、ロシアの小説家ドストエフスキーが『死の家の記録』で述べています。ドストエフスキーはシベリアの刑務所で出会った囚人たちを観察しましたが、犯罪者は反省なんかしないそうです。

被害者は反省を求め、犯罪者は反省しない。私たちは「無能な奴」に反省を求め、「無能な奴」は反省しない。何なんでしょう、これは?

そこで参考にしたいのが1つの研究(Jones, E. E., & Misbett, R. E. (1972). The Actor and the Observer: Divergent Perspectives of the Causes of Behavior. In E. E. Jones, D. E. Kanouse, H. H. Kelley, R. E. Nisbett, S. Valins, & B. Weiner (Eds.), Attribution: Perceiving the Causes of Behavior (pp. 79-94). Morristown, NJ: General Learning Press)。

心理学者ジョーンズとミスベットの実験結果が興味深いのは、当人と観察者の認識のズレです。これを心に刻んだらストレスはかなり減ります。お勧めします。

二人の心理学者が発見したのは何か?当人と観察者では原因の認識が違うということです。私たちは人が何かやらかした時は、原因を人の内部に求めます。例えば、「あいつはやりたかったからやったのだろう」、「やりたくなかったからサボったんだろう」、「性格が悪いからやったんだろう」、「能力がないからできなかったんだろう」。

私たちが腹が立つのは人が意図的にやったことだけです。だから赤ちゃんが何をやっても腹が立ちません。赤ちゃんには意図を感じないから。でも大人が何かやった時には100%意図を感じます。だから腹が立ちます。

人間は人の行為を評価する時、その人の中に原因を求めます。意図、性格、人柄、能力などなど。では、やらかした当人はどう思っているのか?

やらかした当人は状況が原因だと考えます。例えば彼氏が彼女との待ち合わせ場所に行く途中に駅で旧友にバッタリ出会ったとします。「お、久しぶり!」。彼氏も「ああ、久しぶり・・・」。でもデートに遅刻しそうだから「今急いでいるから電話して」と切り上げようとしますが、友人は話を切り上げない。彼氏は5分だけ話に付き合って電車に飛び乗りました。

おかげでデートに遅刻。彼女は時間にルーズな彼氏の愛の足りなさが理由だと思います。ところが彼氏からすれば旧友のせいだと考えます。

認識の違いはなぜ起こるのか?彼女には彼氏の状況が見えていません。彼氏しか見えていません。だから原因を彼氏の中に求めます。彼氏は駅で旧友にバッタリ会った状況が見えています。だから状況のせいにします。

服役中の犯罪者にインタビューすると、犯罪に至らざるを得なかった苦しい状況を語るそうです。「お金がなかった」、「あいつが裏切った」。ドストエフスキーが記録するように「なのに、なんで刑務所に入れられなきゃいけないんだ!」と逆ギレするわけです。

私たちも逆の立場に立つと同じ思いをします。「仕事が忙しいから帰宅時間が遅くなった。なのになんで妻は責めるの?」。自分に見えている状況が妻には見えていない。だから相手は自分を責めるけど、こっちだって遅くなりたくて遅くなったわけじゃないんだと。残業しなきゃいけない理由があるんだと。

人は私たちのに原因を求め(家庭を顧みない)、私たちは自分のに原因を見るわけです(残業せざるを得ない)。人は私たちしか見えず、私たちには状況が見える。私たちは人しか見えず、人には自分の状況が見えているわけです。このギャップが犯人です。このギャップを「帰属錯誤」と言います。

ストレスを減らすコツは何か? ①人が何かやらかした時は「そうせざるを得ない状況があったんだな」と思ってあげること。あるいは、少なくとも当人はそう考えているなということを覚えること。②人から責められた時は、自分には見えている状況が相手には見えてないから「しょうがないな」と思うこと。自分も立場が逆なら相手の状況が見えていないから、当人の中に理由を探すだろうなということに気づくこと。

帰属錯誤は必然です。でも相手の行為に意図を想定しなければ、余計なストレスは減ります。相手のネガティブな行為に意図を想定しない、これがメンタルフィットネス!


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