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感情を失うとどうなるか?

人は感情が爆発して失敗します。感情で動いて恥をかきます。感情で判断して誤ります。では感情は何のためにあるのか?

感情を司る部分の1つが眼窩前頭皮質です。好みの異性に惹かれる時、美味しい食事を目にした時に活発になる脳の部分が眼窩前頭皮質です。脳神経学者アントニオ・ダマシオの臨床研究によれば、衝撃や脳梗塞や脳腫瘍などで眼窩前頭皮質が損傷すると感情がなくなるそうです(Damasio, A. R., Tranel, D., and Damasio, H. (1990). Individuals with sociopathic behavior caused by frontal damage fail to respond autonomically to social stimuli. Behavioral Brain Research, 41, 81-94)。

脳の損傷で感情を失くした患者の知性は正常です。だから知能テストの成績も普通で論理的思考や道徳的判断は今まで通りです。つまり理性は残り、感情だけ失ったわけです。

そうなると、まさに理想の人間ではないでしょうか?感情に惑わされず、理性だけで判断できるわけだから。ブチ切れて失言することもない、誘惑されて女性関係で失敗もしない。常に冷静に知性のみで判断できます。

さあ、こういう患者が社会に戻るとどうなるのか?何も判断できなくなるそうです。決断ができない目標が持てない。つまり行動できなくなります。

患者が食堂に入ったとします。メニューを見ます。でも注文できません。かつ丼と天丼、どっちを注文すればいいか判断できないからです。「そんなことはないだろう?」と思うかもしれません。「ちゃんと知性は正常なんだから、頭で考えて選べばいいだろう」。ところが知性だけでは人間は選べないんです。

何を食べたいか感情が動かない限り、頭で考えても自分が何を食べたいか判断できないのです。患者が電化店に入ったとします。同じ値段、同じ性能のテレビが2台あったとします。知性だけで考えても、どっちを選ぶか判断できません。正常な人は値段と性能が同じだったら好みで選びます。ところが感情を失くしてしまうの一緒に消えるのがまさに好みです。

同じぐらい可愛くて、同じぐらい性格が良くて、同じぐらいスタイルの良い女性が二人いるとします。どちらと交際するか?眼窩前頭皮質が損傷したら選べません。正常な人は直感や好みで選びます。感情のおかげです。

「何かやりたい」「これを食べたい」「あれを買いたい」、こういう衝動があるから人間は行動できます。衝動や感情を司る眼窩前頭皮質が働いているから欲求が湧いてきます。知性で判断して欲求が湧くのではなく、好みや感情が動くから欲求が湧きます。欲求が湧くから選択できます。判断できます。感情のおかげです。

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