追悼・伊藤雅俊さん

　大手スーパー「イトーヨーカ堂」の創業者で、総合スーパーやコンビニエンスストアなどを傘下に持つ「セブン＆アイ・ホールディングス」の礎を築いた、伊藤雅俊名誉会長が、3月10日に亡くなりました。98歳でした。

イトーヨーカ堂創業者 伊藤雅俊氏死去 セブン＆アイの礎築く | NHK

　戦後の流通業界の基礎を作った、ダイエーの中内功さんと、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは、若くして戦争を体験し、物資のない時代を過ごした。その体験をバネに、日本国民の生活を豊かにすることをミッションとして、流通戦争に挑んだ。

　その時代の国民の欲求に呼応して、安くて良い商品を提供することは、時代の願いでもあった。しかし、やがて「豊かな社会」を訪れると、中内さんのハングリーさは企業拡大へ暴走し、イトーヨーカー堂も進めべき道を失い停滞し、セブンイレブンのコンビニ事業にシフトしていった。

　晩年は、伊藤謝恩育英財団を創り、多くの若者に奨学金を渡し、私財50億円を投じて東大の赤門のそばにある「伊藤国際学術研究センター」を寄付した。

　伊藤さんが伊藤謝恩育英財団を創る時に指導したのが林雄二郎であり、林さんの何かの長寿祝いのパーティで伊藤さんが挨拶をして「林さんに財団の魂を入れていただきました」と語っていたのを覚えている。

　戦後という時代を作った人たちが、ひとりずつ退場していく。新しい時代は、まだはっきりと見えないのに。