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バーター・エクスチェンジの時代(橘川新刊増補用の原稿)

こちらの原稿は、生成型書籍「メディアが何をしたか?Part2」の新版用の下書き原稿です。


 神保町には現在、3つのシェア書店がある。「PASSAGE」「猫の書斎」「@ワンダー二十世紀書店」の3つだ。橘川は現在、「二十世紀書店」に棚を持っている。「PASSAGE」はフランス文学者の鹿島茂さんが運営していて、棚主も出版の世界では著名な人が並ぶ。出来た時に参加しようと思ったが5000円に躊躇して(笑)しばらくして「やはりやろう」と出向いたが、一番下の段しかあいてなくて諦めた。それでも、しばらくして、「一番下でもよいか」と思っていったら、そこも一杯で予約待ちだ。それで諦めていた所。70年代からの友人であるスタジオハードの高橋くんが「二十世紀書店」に棚を作ったというので見にいって、思わず棚を借りてしまった。

 私らしくもなく、新しい動きにすぐに飛びつかなかったのが悪い。「猫の書斎」も出来た時に、メールで申し込んだのだが、ドタバタしていて行きそびれた。

 しかし、橘川の新刊は、この3つのシェア書店で購入出来るようになる。どういうことかと言うと、「PASSAGE」は中央近くの客の目線が合う最高の場所に、友人の柳瀬博一くんの棚がある。日経BPの辣腕編集・営業マンだった柳瀬くんは、業界情報でいち早く棚を押さえられたのだろう。そこで、柳瀬くんに連絡して、「橘川の新刊1万円分と、柳瀬くんの本を1万円分、交換してくれ」と頼んだ。即了解である。ということで、私の棚で柳瀬くんの本が並び、柳瀬くんの棚に僕の本が並ぶ。

 同じように、同志・久恒啓一さんが「猫の書斎」に棚を借りたので、久恒さんの本ともバーダー取引した。

「シェア書店」の問題は、自分で本を出している著者は、直営店が出来るのでいろんなメリットがある。私は今後、「二十世紀書店」でトークライブをやっていく予定だ。サイン会などの書店イベントが自前で出来る(笑)。

 しかし、個人の著者では、それほど頻繁に新刊が出るわけでもなく、他人の本が増えてくる。それも棚主の個性が現れて面白いのだが、信頼出来る著者同士で交換すれば、多様な品揃えになるのではないか。

 著者以外の人は、最初は蔵書を並べるが売れなければ引き上げるだろうし、ブックオフなどで瀬取りしなくてはならなくなりそうだ。そういう人には「本を出せ!」と言いたい(笑)。まだはじまったばかりだが、シェア書店が全国に拡大したら、そこでの新しい出版文化が生まれる。その時のテーマが「信頼出来る関係の中でのバーターエクスチェンジ」だと思う。

 今回、橘川が取次を使わないで本を出してみて、分かったことは、この本は自前のビットコインだということだ。まずは、他の著者との本でのバーターを行っているが、これは将来、農家の人と、生産した野菜1万円分と、橘川の書籍1万円分を交換出来る。やりたい人は、いますぐでも、問い合わせてくれ(笑)。

 それで、私の本は定価がついているから、農家の人は、自分の家に棚を作って「シェア書店」をやればよい。自分の好きな著者に、野菜と交換を求めて仕入れすればよい。売れた本で現金が入るから、それで携帯代を支払う。

 ようするに、これからの時代は、やりたくない仕事をしてお金を稼いで消費するのではなく、自分で生産したものを交換して、生活していくのだ、そのための連絡システムとしてインターネットは優秀である。

 シェアやバーターは、生産者と消費者の関係ではなく、生産者と生産者の間でのみ意味がある。



(政治・経済の社会から表現・創造の時代へ)
▼覚えておきたい言葉

寺山修司
政治は主に、人たちに何かを禁じる単位である。政治的な権力は、何々を「してはいけない」ということを私たちに要求する。それに対して、映画や演劇、詩、そうしたものの相対としての芸術は、人たちに何かを許す単位にかわりつつある。

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