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映画「響 -HIBIKI-」と「平手友梨奈」の関係について


映画『響 -HIBIKI-』を見て、そのままおしゃべりをする会

 平手友梨奈の映画デビューである「響 -HIBIKI-」を観た。

 しかし、つくづく、平手は天才だと思う。才能としての天才という意味ではなく、出会いの天才である。音楽のデビュー作が「サイレント・マジョリティ」であり、映画のデビュー作が「響」であるということは、平手にとって最良のスタートになり、そういうデビュー作に巡り合うことの天才である。

 平手友梨奈の力は、周辺を巻き込み、本気にさせる力である。欅坂(最初は鳥居坂だった)のオーディションで平手の存在感を感じた、秋元康、運営スタッフの大人たちは、猛烈にやる気を出して、この才能に集中した。その期待を14歳の平手は真正面から受け取り、「サイレント・マジョリティ」で返した。その後の、周辺の期待のボールを、平手はことごとく打ち返した。そのことにより、全員素人であった欅坂46のメンバーが刺激を受け、それぞれが成長を果たした。

 一番最初の頃、本気で表現活動を目指していたのは平手だけで、周りとの違和感を抱えていた時期があった。その時に、長濱ねるが参加し、この二人のつながりがグループ全体に大きな波動を生み出したのだと僕は思っている。(有名な、遊びに行った帰りの電車の中でねるが平手を支えると決意した夜の時代のことである)

 欅坂46はみんな大人になった。そして、今回、映画の仲間やスタッフの所へ、平手は単独で参加する。もう「みんなで成長する」という環境ではない。参加した先には、人一倍パワフルでプロフェッショナルな大人の役者たちと監督がいる。その中でも、平手はやはり、欅坂46でやり通した自分のやり方を貫いた。

 最初に監督に、今まで、自分に正直に音楽活動をしてきたので、演技という嘘をつくことで、自分を失うことが不安である、という表明をした。監督は、その話を受け取って、ますます平手以外に、鮎喰響をやれる人はいないと思ったという。鮎喰響は、平手と同じように、自分の意志と感情に対して大胆に正直な役柄だから。

 そして平手が採用した方法は、「鮎喰響を好きになること」だった。好きになって、その人の生き方を支持し応援することによって、鮎喰響として表現出来ることが出来た。素晴らしい表現だった。そのためには、欅坂46の平手友梨奈を一度、抹殺しなければならなかった。武道館のライブも流れ、アニバーサリーライブの出演も拒否して、鮎喰響として半年余り過ごしてきたのだろう。

 今後、平手への映画のオファーが舞い込むことが予想されるが、平手が受けるかどうかは、演じるキャラクターを信用出来るかどうかになるだろう。どんな役柄も器用にこなす役者には、ならないだろう。むしろ、それが出来ないことに、平手の存在理由がある。プロの役者であれば、カチンコが鳴ればその役柄に没頭出来るのだろうが、平手にとっては、撮影の期間全体で役に没頭しないと演じられない。そういう役者が一人ぐらいいてもよいと思う。それが、平手が選んだ、「嘘をつかないで大人と関係する」ギリギリの方法論なのだろう。

 平手は、15歳の時「15歳の時にしか伝えられないことがある」と語った。17歳の今も17歳でしか語れない・表現出来ないことを追求している。背伸びしたり、卑下したりしない。そういう生き方が出来る人は少ない。

 映画の内容は素晴らしい。構成もリズムもカメラ位置も無駄がないので、観ていて飽きる間がない。平手は、楽曲作りでも、ライブのセトリや演出でも、自分の意見やアイデアをスタッフにぶつける子である。映画の現場でも同じだろ。今回、共演した役者さんたちの感想を聞いていても、何か、流されて仕事をしていた人たちが、平手によって、ふと、原点に帰らされたような印象がある。平手には、メンバーやファンを含めて、当人の預かり知らないところで強い影響を与えてしまうところがある。平手にとって、監督が芸大出身のインテリで北野たけしのバイオレンス映画に憧れていた月川翔監督であったということも、幸福な出会いだっただろう。面白い日本映画が、もっとたくさん生まれることを期待したい。平手には、もう一本、月川組で作られた映画を見たい気がする。「響2」か。

 僕は欅坂の平手を追いかけてきたので、アヤカ・ウィルソン演じる祖父江凛夏(そぶえ・りか)が気になって仕方がなかった。凛夏は、高校の文芸部の部長。売れっ子の作家の娘で、親の七光りで小説を出すが、響に「つまらない」と言われて傷つき、芥川賞の発表のある1ヶ月間は絶好する。響が、芥川賞・直木賞のW受賞した日に、絶好の約束だった1ヶ月が終わったから、普通に友達に会いにくるように、凛夏の所に訪れる。

 凛夏が今泉佑唯の顔と重なってしまった。響の才能を認めるが故に反発する凛夏。二人がまた友達のようにふざけあえると良いな。

響・あらすじ

 出版業界は不況で、編集長は、売れ筋の大家ばかりに気をつかい、新人発掘など見向きもしなかった。

 文芸誌「木蓮」の編集者である花井ふみ(北川景子)は、出版不況を変えるようなスターが出てこないかと探していた。ある日、文芸誌「木蓮」の新人賞に直筆での応募作が届く。データでの応募のみを受け付けていたため、その応募作「お伽の庭」は破棄されようとしていたところを偶然、花井ふみが見つけ、読んでみると、すさまじい作品だと惚れ込む。この作品のために私は編集者になったのだ、と確信する。しかし、鮎喰響(平手友梨奈)の名前はあるが、住所や連絡先は何も書いていなかった。

 鮎喰響はその「お伽の庭」を投稿し、高校に入学する。響は本を読むのも書くのも好きだが、冗談が通じない性格で、自分の考えを決して曲げないし、すぐ行動で表現する。

 高校では、文芸部に入るが、そこは不良のたまり場になってる。不良っぽい男子学生に胸ぐらつかまれると、指をへし折る。「殺すと言われたから殺されないようにしただけ」と平然と答える。屋上で、根性あるなら飛び降りて見ろと言われると、本当に飛び降りる。樹木の枝にぶつかり無事。ひゅーと言って、立ち上がる響。

 文芸部の部長は、祖父江 凛夏(そぶえ・りか)(アヤカ・ウィルソン) 。本棚を見ると、右側と左側に本が分かれている。左側の棚は、イケテル小説、右側の棚は、イケテナイ小説。それを響はすぐに見破る。りかがイケテル棚に入れていた小説を、響は、イケテナイ棚に入れなおす。二人が意地をはって、その本を入れ直しする。最後は、響が、棚を暴力的に倒してしまう。

 文芸界では二つの作品が話題になっていた。一つは凛夏の父でベストセラー作家の祖父江秋人(吉田栄作)の新作が発売されたこと、そして『木蓮』の新人賞に「お伽の庭」が選ばれたこと。

 父のネームバリューは出版業界では圧倒的で、凛夏にも作家デビューの話が出て来る。編集の打ち合わせで祖父江の家を訪ねたふみは、凛夏の友人を訪ねていた響と念願の出会いを果たす。

 木蓮新人賞の授賞式で「お伽の庭」を読まずに批判する田中康平(柳楽優弥)に対してパイプ椅子を振り上げてたたきのめす響。

 以下は、映画をご覧ください。

追伸

 原稿を手直ししていたら、米さんの卒業報告が出てた。そうだよな、こないだの幕張ラストが卒業式。一回りした欅坂46は、それぞれ成長したし、新たなメンバーが入ってくるのだから、21人の第一期欅坂46は一度解散して、第二期の欅坂46を再スタートした方がよいと思う。平手も悩んでいるところだろうな。

欅坂46「夏の全国アリーナツァー2018」の幕張最終公演


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