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欅坂46「夏の全国アリーナツァー2018」の幕張最終公演

 欅坂46「夏の全国アリーナツァー2018」の幕張最終公演は、最初から何か不穏で不安な気配が漂っていた。ここに集まった人たちは、何も知らない人たちではないので、21人で進んできた欅坂46が、すでに今泉佑唯が卒業宣言をし、志田愛佳が「一人でどっかに行っちゃった状態」であり、原田葵が大学受験で戦線を離れていて、そこに坂道合同オーディションで選ばれた新しいメンバーが入ってくることを知っている。どう考えても、3年間走り続けた欅坂46は、この日が一つのゴールであることは違いない。齋藤冬優花も「私たちは一周しちゃったね」と言っている。欅坂46が、右も左も分からない新入生として入学した女子高を、卒業することになったのだろう。新しいメンバーが入ってくれば、また、新しい欅坂46がスタートするのかもしれない。そこに誰が残り誰が消えるのか、最後の菅井友香のMCは、そうしたメンバーの不安な気持ちに刺さっただろう。

 菅井友香のMCは、実に見事であった。ラジオのトーク番組で鍛えられたのだろう、あの活舌の悪い、引っ込み思案の女の子が、いつの間にか、対応力のある大人のアナウンサーに変身している。20歳になった長濱ねるは、クイズ番組やCMにも抜擢され、独立したタレントになりつつある。雑誌の専属モデルで活躍しているメンバーも多い。そして、平手友梨奈は映画女優として、またひとつ独自の領域を切り開きつつある。「響」が大成功すれば、続々と映画のオファーが続くのではないか。

 もう、初期のファンが、たどたどしい未成熟な女の子に声援を送り、励まして育てていく必要もない、立派な存在になりつつある。そのことによって新しいファンを多く獲得するだろう。

 メンバーの卒業は、ファンの卒業の時期なのかもしれない。一度、欅坂46一期生は解散して、新しく参加するメンバーと、欅坂三期生として再スタートした方がよいのではないか。

 平手友梨奈も、欅坂が解散しても、またみんなで会える関係がよい、と言っている。

 そういう複雑な思いで幕張に向かった。セトリは、またスタッフたちも、このライブが初期欅坂46の最後のライブだと分かっていることが伝わるような、欅坂46の魅力が総結集したような楽曲構成になっている。平手友梨奈のソロ曲はなく、ユニットも極力押さえて、全員で歌える曲を並べた。

 第一幕、「Student Dance」「 AM1:27」「エキセントリック」「ガラスを割れ!」からはじまる。「ガラスを割れ!」の舞台で全員で踊っていたかと思うと、平手友梨奈が一人で、猛烈な勢いのあるダンスを舞いながら円形の張出舞台に向かってきた。何が起こったのかというほど、強烈な踊りであった。そして、終わった瞬間、消えた。あたりの人間は騒然となったが、菅井友香は、何事もなかったかのように、MCを開始し、第二幕につなげた。これもあとから考えると、もの凄いプロ根性だと思う。そして、観客全員が平手の姿をステージ上に探したが、そこには平手がいなくて、でも、ステージのクオリティは決して落としてはいなかった。誰もパニックに陥いることなく、とっさに、平手不在のアニバーサリーライブのフォーメーションでライブを続けたのだ。みんな凄いと思う。完成されたパフォーマンスよりも、こうした非常事態に対応できることが、みんなが大人になったことを証明している。

 その時、平手は、スタッフが布のカバーしながら客席を抜けて、病院に向かっていた。大事に至らなくてよかったが、この事件も、10年後に欅坂46の同窓会があれば、笑いのネタになるだろう。いろいろ思い出のネタがありすぎる同窓会になりそうだ。


 そして、最後まで平手のパフォーマンスを観れずに、アンコールも終わり、Wアンコールで平手が帰ってきた。そして、菅井友香のMCである。平手以外はみんな泣いていた。

 一つの伝説が終わった。さて、終わったと思ったら、次のシーンがはじまるのだろうか。それは、オーディションの誰が欅坂46に入るのかで、決まりそうである。

追伸

平手友梨奈の側転だけは見たかったのだが、残念。

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