深呼吸学部・講義メモ
◇人は何故、メディアを創り、発展させてきたのか。そのスタート地点に立ち戻ってみたい。
◇それは寂しかったからである。
◇メディアがなかった時、人は、身近な人たちとの関係の中で、日々、笑い、怒り、嘆き、祈った。
◇この関係性の中で育った知識が、人類の技術を発展させた。より大きく、より強い価値観を求めて、人は、自然関係性を捨て、人工的な共同体を求めた。村から若者たちは飛び出し、都市に集まった。
◇都市は、世界中の知識を集結させ、さらに巨大な人工的なコミュニティを作った。便利になったが、その中で生きる者は、寂しくて仕方なかった。いくら頑張っても、いくら儲けても、寂しさは解消できない。
◇なぜなら、身近な人たちとの関係性を捨てて、得た豊かさの中に生きているのだから。
メディアの中で、どれだけ有名になっても、富と財宝を独占しても、その人の寂しさは解消されない。むしろ、得ることによって、身近な関係性は失われていく。同じ目線の友だちは作れず、支配する者と支配される者の構造しか成立していない。
◇見てみろ。ネットで有名になった人たちの、寂しげな目つきを。贅沢な生活をしている人たちの、荒涼とした食事風景を。
◇では、元に戻ればよいのか。あの暖かいけど窮屈な村に戻ればよいのか。時は戻れない。この先に新しい現実を想定するしかない。それは、村から都市へ出てきた川の流れの時代方法論を超えた、新しい僕たちの世界を目指す方法論だ。戻るように進む。帰るように突破する。新しい時代を、僕は、人類の海の時代とした。
◇人工的なメディア状況の中で、僕たちは、思い出すんだ。あの、寂しさを忘れされてくれた、暖かい人間関係を。権力構造のないフラットな関係を。メディアの中で、そうした小さな動きが同時多発で発生すれば、もう、対立構造によって推進してきた、僕たちの間抜けな方法論は、終わる。
◇日々、出会った人ときちん付き合うことによってでしか、未来は見えない。すべての人類が、そうした関係性を思い出していくことによってでしか、人類の新しい世紀は生まれない。
◇メディアの役割は、まだまだ先が長い。僕らが本当に安心して、笑いあい、いがみあい、許しあい、抱きしめ合うのは、まだまだ先のことだ。そのための一瞬の活動を積み重ねていくのが、人類の海を感じた僕らのミッションだ。
◇メディアが、人々の柔らかい関係で満たされた時、メディアの役割は終わる。メディアの死滅、その役割の死滅こそが、僕たちの最終目的である。人類が、悲嘆の末に発狂するか、豊穣のエクスターシーの先に新たな可能性の生命を生み出すかは、僕らの日々の生活態度にかかっているのである。
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