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自分出版社協同組合(設立趣旨)


 近代は社会の合理性と成長の速度を競っていたので、分業化とネットワーク化が進んだ。一人でやれば出来るものを外部のサービス業者に委託したり、企業でも内部で処理していた機能をどんどん外部発注していった。いずれも中心にある考え方は「金さえあれば何でも出来る」である。優しい言い方をすれば「金で解決出来るものは金で解決し、金で解決出来ないものだけを自社で追求する」である。

 この言い方は「デジタルでやれるものはデジタルにして、人間は人間にしか出来ないものをやればよい」という元祖デジタル革命の方法論と同じだ。

 しかし、その結末はどうなったか。確かに社内に無駄な仕事はなくなり、製造代行、営業代行、会計代行、福利厚生代行、人材研修代行、あるゆるものがアウトソーシング可能になり、ハブレス企業も増えた。しかし、それで、企業は幸福になったのか。

 肉も皮も脂肪も筋肉もなにもないスリムな企業体になったけど、それで生き延びられたのか。いや、生きていく意味があるのか。

 創造ではなく管理が仕事になった。そのために作った会社なのか。

 放送局も出版社も広告代理店も、みんな金融管理会社になって、現場から離れていく。どんな会社でも、創業者は、現場の苦しさと楽しさの中で発展させたのに、その生命力が衰退していく。

 近代はとてつもない人類の可能性の大拡張であった。
 だから、近代のターンオンの可能性も無限大だ。
 その無限大は、宇宙に広がるものではなく、内的宇宙に広がるものだろう。

 小さな出版社を立ち上げ、ベストセラーを続々と出し、有能な編集者と外部ブレーンによって拡大した大出版社は、伽藍堂である。出したい本、出させたい本より、売れる本を探る時代は終わりになりつつある。客観的な価値や社会的評価よりも、当事者の意識が何よりも優先される参加型社会がやってくるのだから。

 2021年、世界の出版界を、いろいろな意味で変革したアマゾン・ドットコムが、日本でもオンデマンド出版のサービスを開始した。PDF原稿を登録すると、数日でAmazonでの購入が可能になる。

 僕のところには昔から、出版の相談が来る。出版社に紹介したり、発行を手伝ったりした。しかし、これからは、Amazonを紹介する。そして、もう外部の出版社の意味はないから、自分で出版社を作ればよいと説明する。

 自分で書きたいものを自分で書いて、仲間たちと一緒に編集したりデザインしたりすればよい。他人に発注する必要はない。自分と仲間だけでやれることだけをやればよい。そして、読んでもらいたい人だけに読んでもらえばよい。

 そういう「自分出版社」が生まれてくるだろう。そして、その上で、自立した自分出版社がつながって、出版協同組合を作ろう。協同して、既存の出版社が担っている作業を行えばよい。書店流通や、広告出稿や、プロモーションイベントは、協同してやればよい。

 これが1981年に書いた「よはとつ図形」の現実化である。

 管理は自分のことだけしていればよい。他人様まで管理しようとするな。

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