政治家の会合はなぜ止められないのか。
自民・公明幹部 飲食店に深夜まで出入りと報じられ陳謝
「自民・公明幹部 飲食店に深夜まで出入りと報じられ陳謝」(2021年1月26日 NHKニュース)というような話題が、政治の世界では頻繁に起きている。国民に、7割のリモートワークをと訴えていながら、国会の議会は、相変わらず狭苦しい場所で、発言もしない多くの観客を集めて行われている。
オンライン会議が普及して、議論はオンラインで行うことが可能だし、時間的な効率もよいし、場の雰囲気を忖度することなく、本質的な議論が出来るということを、私たちは2020年体験として実感した。
それでも、なぜ、このような会合が行われ続けているのか。要するに、日本の政治は、国会の議論が、政治の本体ではなく、夜の会合や、密室での打ち合わせが政治的議論や情報交換の本体で、表の議会は、裏側の情報交換で一致・確認したことを披露するだけの、建前の場所だということだ。
大手企業の幹部たちが、リモートワークに否定的だったのは、職場以外での会合や業界団体の密談や、宴会での取引先との会話の中に、業務の方向を決定する会話が行われていたからだろう。業務の本質は、そうした裏側の密室で決められていたのだろう。本音は夜の会合で議論され、昼の舞台は、夜の会合で確認したことを公開して、実行するだけの場所なのではないか。
そして夜の会合に参加出来るのは、組織幹部の信任を得た特別な人間だけであり、一般の人間や関係者には見えない密室で、すべてのことが決められていく。
これは商品開発でも、出版の企画でも、これまでも多くは、酒場の馬鹿話から生まれてきた歴史があることは否定しない。しかし、そういう会合に参加出来るのは、特別に選ばれたものだけであり、インターネット時代という「すべてが露出され、公開される」という新しい時代の方法論(参加型社会)とは、すでになじまなくなっているのではないか。
私たちは、公明正大な情報プラットホームの上で、自らの信念やアイデアを語り、批判や賛同を受けながら、同意事項を煮詰めていく、という、これからの時代の方法論を身に着けなければならない。
それでも、以下のような動きがはじまって、コロナ情況が改革の一歩を踏み出している。
実際に、政治家と官僚の仕事の方法は、コロナ以前は、こんな状態だったのであり、今も、まだそれほど変化していないだろう。
最大の無駄は「割りもめ」。政治家と官僚の関係は変えられないのか
あるジャーナリストの話では、昔は、政治家にオンラインでのインタビューを依頼すると「ふざけるな、議員会館に来い!」と怒鳴られたが、コロナ以後は、インタビューに行きたいというと、向こうから、「オンラインにしてくれ」と言ってくるようになった、と。生身のインタビューは、インタビュー内容とは違う相手の人間性に触れたり、雑談の中からいろいろ発見することもあるだろうが、それはまだ、私たちが「オンライン・コミュニケーション」の体験をはじめたばかりであり、時間が経てば、オンラインでの会話術も体得してくるだろう。むしろこれからのジャーナリスト志望者は、オンラインのインタビュー術を体得しなければならないと思っている。
日本の政治家の中にも、未来を見据えて新しい時代の方法論を身に着けようとしている人たちが少数だが、いることを知っている。しかし、残念ながら、多くの政治家は、それぞれの「村」の代表であり、村の会合で決めたことしか発言出来ない。虎ノ門の交差点近くの小料理屋のママが昔、言ってた。「日本の政治家は、子どもばかり。自分で自分のことが出来ない。海外視察に行くにも、官僚が全部手配して、その上に乗っていくだけ。欧米の議員であれば、自分たちでコース決めて、飛行機やホテルの手配をするのよ。日本の政治家は、人がかついでいる神輿の上で、ふんぞり返って、威張っていることが役目だと思ってるのではないかしら」と。
古い神輿は、すこしずつ機能しなくなり、神社の倉庫に眠るようになるだろう。自立した個人としての政治家が、公明正大、フェアな空間で、日本の未来を議論する日が訪れることを願うだけ。
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