「AIのべりすとalpha2.0」の新しさとはなにか
(1)終わりと始まり
近代というのは、人間と人間の戦いだった。人間はやがて組織を作り強い組織を目指した。同時に、組織を動かすための強く自立した個人を生み出した。その結果。政治もビジネスも表現も、強さや販売数を競う争いの時代になった。
組織はやがて近代国家になり、強い国家同士の戦争になった。戦争は、強い個人たちが集まり、戦略と戦術の研磨にあけくれた。その結果として生まれたのが、コンピュータである。砲弾の弾道計算からはじまり、暗号機を解読し、冷戦時代には、分散型のコンピュータ・ネットワークを開発して、それはやがてインターネットになった。
デジタル革命とは、もともと「近代社会のシステムは、本来、機械がやるべきことを、機械が未熟のため人間がやらされていたので、機械が出来ることはすべて機械にやらせて、人間は人間だけしか出来ないことを追求しよう」というコンセプトだったと思う。
しかし、更に、コンピュータは進化し、Google DeepMindによって開発されたAlphaGo(アルファ碁)は、2015年にプロ囲碁棋士たちを続々と破っていった。そこから更に年月が経ち、人間だけしか出来ない領域は、 どんどん狭くなっていった。
しかし、その流れを「追い詰められている」という風に思うこと自体が、近代の戦いの意識にとらわれていることなのではないか、ということを、Staの開発した「AIのべりすとalpha2.0」で遊んでいると、はっきりと思う。近代を超える、新しい時代意識は、とっくに始まっているのだ。
(2) 「AIのべりすとalpha2.0」は何者か?
「AIのべりすとalpha2.0」は、Google TRCの協力のもと、350GB文庫本約122万冊分のコーパスで、日本最大級の68.7億パラメータのAIを訓練した、AIノベルライターです。80年代の人工無能の時代から、よくぞここまで成長したものだと感動するくらい、こちらの言葉の意図を正確に読み取り、反応してくれる。
ものは試しで、以下のサイトにアクセスして、適当な文章を入れてみてください。
例えば「複雑な関係をシンプルにするためには」という文章を入れてみたら、以下のような文章の続きをAIが吐き出した。
複雑な関係をシンプルにするためには、何かしらのきっかけが必要です。
「私」と「あなた」は、どのようにして出会ったのか?
「私」が「あなた」と出会う前に、「あなた」は何をしていたのか? なぜ「私」は「あなた」を殺さなければならなかったのか?
「終わりと始まり」という言葉を入れてみた。
終わりと始まりの狭間で、なにかが光った。
「…………あ」
それは、小さな声だった。
しかし、その声は確かに──俺の耳に届いたのだ。
そして俺は、再び目を開けた。
するとそこには、見覚えのある少女がいた。
(3)物語を作るゲーム
「AIのべりすとalpha2.0」を使って、物語を作ってみようと思う。少し遊んだだけだが、このAIが何なのか分かった。というより、近代以後の私とコンピュータとの付き合い方が分かってくる。それは「人間のやるべきことと、機械のやるべきことを分離して、それぞれ追求する」ということではなかったということを知るだろう。
それは「AIと一緒に遊ぶ」ということであり「関係する」ということなのだと思う。
若い子どもたちに使ってもらったら、物語の生成が、そのまま冒険旅行になっていった。もう、これからは天才的なゲームクリエイターや映画監督が莫大な資金を使って作る大作エンターティメントではなく、誰もがAIと一緒に、物語の旅に出かけることが出来るのだ。それはファンタジーの世界でも、シリアスな世界でも、自由自在である。
コロナ状況の中で、このソリューションが生まれたことは大きな意味があるのだと感じる。自立した大人のビジネスの時代は終わる。
(4)Staとは何者か
Staは、小学校も中学校も不登校で過ごした。保育園児の頃、私が有線放送のCANの一回線を借りて「おしゃべり放送局」という、参加型ラジオ番組をやってた時、母親に連れられてスタジオに来て「僕もやりたい」というので番組を持たせたら「シムシティの裏技をラップでやる番組」を考えてきて、やった。まだインターネットの始まるずっと前だ。
8歳ぐらいの時に、ハイパーカードを使ったゲームを200本ぐらい作ってもってきたので、デメ研の研究員に任命して、当時のWIREDでインタビューしてもらったりした。
その後、独学でコンピュータと英語をマスターし、9年前に「Tone Sphere」という音ゲーを自作開発して、100万本以上をセールスした。昨年は中国のゲームランキングでも一位になった。来年には、「Starbirth(スターバース)」という新作ゲームがリリースされるそうだ。
(5)「AIと共同して小説を書く講座」
ということで、以下の講座をやります。
AIと共同して小説を書く講座
「AIのべりすと」は、自然言語処理するAIと人間が共同して物語を生成するプログラムです。橘川が主宰する、YAMI大学・深呼吸学部では、このプログラムを活用して、「AIと共同して小説を書く講座」を開設します。
深呼吸学部では、肉体と情念から生成される物語の出版化を支援していきますが、同時に、「AIとの共同作業」によるクリエイティブの可能性も追求していきます。
▼Starbirth( Tone Sphere2)
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