林雄二郎さんからの手紙
昨日、事務所の荷物を整理して、大切なものを発見した。メールがなかった時代、僕は、たくさんの手紙を書いたりもらったりしていた。ロッキングオンやポンプといった投稿雑誌を作っていたので、読者との膨大な手紙のやりとりがあり、もらった手紙はダンボール箱に無造作に入れて残してあった。マンガや書籍の作者に対しても、読後感を送ったことがある。これは何人かしか送っていないが、返事をいただいた人とはその後、素晴らしいお付き合いをさせていだたいたこともある。
林雄二郎さんの本をはじめて読んだのは1979年の暮だったと思う。そしてしばらくして手紙を書いた。当時編集長だった「ポンプ」を同封して送った。そしたら、お返事をいただいたのだ。その手紙が、乱雑な封筒の束の中にあった。
以下、林さんからのお返事である。
前略御免下さい。
お手紙と貴誌ポンプ五冊有難うございました。拙著を読んで下さいまして、しかも刺激をうけられた由たいへんうれしく思いました。あなたのリサイクルの思想は基本的に私の考え方と通じて居ります。「個」と「全体」とがリサイクルするという考え方は、私も考え及ばなかった考え方で大いに教えられましたが、私も考えてみましょう。新しい展開が可能かもしれません。またミニコミとマスコミとの関係についても従来のミディコミといったような安易な考え方に批判的なあなたの姿勢に大いに共感を覚えました。それをまた単に考えているだけなく、「ポンプ」という雑誌によって実践して居られるのは非常に立派だと思います。送って下さった「ポンプ」を興味深く見させていただきました。むろんまだほんの一部しか読んでいませんが、なかなか面白いですね。民放の深夜放送でこのような放送がありますね。時々、夜ふかしをした時に面白く聞いていたのですが、(私は本来は夜型ではなくむしろ朝型ですので、夜は十時以降は概ね頭がバカになるのですが……)このような活字になってみるとまた別の面白さがあります。別便で購読料をお送りいたしますので以後も郵送して下さいませんか。これからはポンプの読者のひとりになりましょう。私の新しい思考の糧となるのではないかと期待しています。
それにしても、拙著の、あなたは最もユニークな読者の一人です。あなたのような読者を得たことは私にとって望外の喜びです。あなたのお仕事が今後もますますご発展することを心から期待します。
林雄二郎
林さん64歳、橘川は30歳になったばかりの年である。
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