見出し画像

雑誌「イコール」公開編集会議20231113

「公開編集会議」イコールとは何か
読者からの質問に編集長がお答えします。
読者からの質問は、淵上周平が代わりに聞きます。

質問の宛先は、イコール編集部 equal-info@demeken.net  あてに、タイトルは「編集長への質問」と書いて送ってください。

▼イコール・クラファン実施中。




●ChatGPTとシェア図書館・シェア書店


淵上・時代ミーハーマガジン「イコール」の創刊について、いろいろお聞きしたいので、よろしくおねがいします。

橘川・なんでも聞いてくれ。

淵上・橘川さんは長年、出版業界にいて、今や沈没寸前の雑誌というメディアの状況を十分にご承知と思いますが、どうして今更、雑誌を創刊したんですか?


橘川・なんか閃いたのよ。「雑誌の時代が来るぞ」と。


淵上・またいつもの直感ですが。またいつものように早すぎませんか?


橘川・今度の直感は、時代の流れをよく見てたら来たので、グッドタイミングだと思う。雑誌をやる気になったのは、2023年になって「ChatGPT」と「シェア図書館・シェア書店」の動きが急速に社会に出てきた時なんだ。


淵上・ほぉ、それは興味深いですね。AIもシェア図書館も、だいぶ前から話題になっていましたが、世の中的に話題になったのは、2023年ぐらいからですね。まずChatGPTについて、何が刺激になったのか教えてください。


橘川・ChatGPTの源流はコンピュータ・データベースによるパターン認識の技術だよな。更に源流を探れば、人間の知の集積である本を集めた図書館や博物館になる。人間はさまざまな個人が発見した時代の経験や発見を集積して、分類して、最適な課題解決を探していた。それを最先端の画像センサーでインターネット上のあらゆる知識を集積し、高速の計算回路で最適解に導くのがAIの原理だよな。


淵上・まぁ、そういうことですね。

橘川・それで、図書館の司書の人たちとは昔から付き合いがあって、各地の図書館で講演したことがある。その時に必ず言ってきたのが、図書館が立派な建物になって、蔵書も充実して、市民にも評判がよいとしても、出版界が崩壊したら、あんたたち並べる本がないよ、と。


淵上・確かに。

今、出版業界は崩壊の危機にある。この崩壊は自業自得のところもあるのだが、出版社が良書を出せないのなら、図書館が連携して、クラウドファンディングを実施して、出したいけど赤字になるという専門出版社や少出版社の出版企画を支援すればよい。

図書館が既存の出版物だけを購入するのではなく、まだないけど大事な本を事前購入すればよい、ということですね。


橘川・その通り。


淵上・それは分かるんですが、書籍はどんどん電子化されて、ChatGPTはインターネット上の情報を蓄積しているのだから、紙の本はいらないのではないですか。


橘川・そこだよ、そこ。最終的には、紙はいらなくなると思うが、人類はそこまで進化しているわけではない。


淵上・紙の本はまだ必要だと。


橘川・私は70年代から参加型メディア一筋なので、考え方としては誰もが表現できるインターネットの価値は十分に分かっているつもりだ。しかし、そんなに簡単に紙の文化がネットに置き換わるとは思わない。

淵上・70年代に「ロッキング・オン」や全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊して、ハソコン通信の初期から自分でBBSを立ち上げたり、ニフテイのフォーラムでシスオペやってきた人の発言とは思えませんね。


橘川・構造的には、ネットワークによる参加型システムが最良だと思っている。しかし、私は同時に旧来型の「編集者」でもあるわけだ。その観点でインターネットを自分で使ったり、読んだりしていて、気がついたことがある。


淵上・それは何ですか?

橘川・インターネットは誰でも思ったことを、思った瞬間に書くことが出来る。しかし、現状では、「インターネットは書くための場所」であって「読むための場所」ではないと思う。書き手も、思ったことを書いてるだけで、読み手のことはあまり意識していないのではないか。受けるか受けないかぐらいの感覚で書いてる。

淵上・本は違うのですね。

橘川・本は逆に「読むためのメディアだ」。編集という概念が入って、読み手の読みやすさや分かりやすさをプロデュースされた文章になる。

淵上・橘川さんは、参加型メディア一筋で、旧来型の編集は嫌いだったのでは。

橘川・そう、昔、ポンプをやっていて、ある投稿が来て、なかなかの内容と文章だった。ただ、とても長い文章なのでポンプには載せきれないので、面白いと思った部分だけを掲載したんだ。そしたら、その投稿者からクレームが入って「載せるなら全文載せろ、載せないなら全部載せるな」と。もっともだと思ったんだよな。だから、参加型メディアを作る時は、なるべく書き手の意思を尊重するようにしてきた。

淵上・しかし「イコール」では編集をすると。

橘川・そう、これは私の「振り子理論」というのがあるのだが、一つの価値観や方法論を追求する時は、必ず、その反対側の価値観や方法論を意識して、試してみろというものだ。


淵上・今回は、ビジビシ編集してるんですね。

橘川・まあ、そういう旧来型の編集は専門ではないので、周りの仲間に助けてもらいながらね。


淵上・今の話で「読ませるための本」が大事だと言う事は分かったのですが、ChatGPTとの関係はどうなんですか。


橘川・ChatGPTが拾ってるデータはインターネットからなんだが、大半は書籍をデジタル化したものがソースになっているはずだ。単なる書き飛ばしたインターネットの書き込みが、そのまま人類の集合知になるには、人類はまだ未熟な段階だと思う。まずインターネットで書きたいことは書いてもらい、それを読者を想定して内容と文章を深化させた本にする過程が必要だ。

淵上・橘川さんが前著の「メディアが何をしたか?Part2」で「本書はChatGPTで書いたものではない。ChatGPTに食わせるために書いた本だ」と書いたことですね。

橘川・それな。私はChatGPTが進化すれば、人間が電子書籍を読む必要がなくなると思う。


淵上・どうしてですか?


橘川・本というのは、自分の知らない知識や体験を、本を読むことで個人が疑似体験して知識や教養として身につけて、何かの問題が発生した時に、対応出来るようにするものだ。電子書籍になったら、それはChatGPTが食っていくんだから、個人が読む必要はないじゃないか。必要な時にChatGPTに聞けばよい。


淵上・読書の意味がなくなるってことですか?


橘川・そういうことになるが、それでも時代はどんどん進んでいくわけで、新しい現象や事件が起きる。まだ書籍にも電子書籍にもなっていない、生々しい現実の動きは、まず個人がリポートして、やがて電子化されてChatGPTが食う。その現在から未来に向けて動いている隙間は、まだ言葉にも情報にもなっていないことがある。


淵上・それを追いかけるのが時代ミーハーなんですね。


橘川・一人ひとりの時代ミーハーの活動や報告をライブに掲載していくのが「イコール」なんだよ。




クラファン支援よろしく。


橘川幸夫の無料・毎日配信メルマガやってます。https://note.com/metakit/n/n2678a57161c4