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20秒後のまるごとバナナ

まるごとバナナが好きだ。

山崎製パンが製造•販売しているオムレツケーキ。
子どものころから、好きで、好きで、一日一個食べる勢いだった。
ふわっふわのスポンジに、たっぷりのホイップクリーム。そこにネーミング通りのバナナが、一本まるごと、みっちりと、はさまれている。

バナナは、なんとも居心地が良さそう。
ホイップクリームに包まれて、その上からスポンジが、やんわりサポートしている。
絶妙なポジショニングである。

ヤマザキのブランドサイトを見てみると、
スポンジが踊ってる!
もう食べ物の域を超えている!
しあわせ!
ずっと見ていたい!

そう、これが、おいしくないわけがないのだ。

そのままでも十二分に最高な「このお方」を、電子レンジで温めたことがあった。

こんなにおいしいのだから、温めてもいけるんじゃないか、と思った。
トーストにアイスがのっている「ハニートースト」だって、熱い物と冷たい物の融合だ。

きっと「このお方」も、新たな世界を生み出してくれるはず。

20秒、熱を加えた「まるごとバナナ」は、生クリームが液体になり、不恰好な見た目になっていた。
でも、深みのある味わいに変化していたのだ。

おいしいかも!
生クリームが溶けて、スポンジに染み渡り、溶けているところと、いないところの食感の違いが絶妙…。
口の中がえらいことになっている。

ああ。
冷蔵バナナには出せない食感が出ている。

わたしには冷蔵バナナより、レンチンバナナの方がはまったのだ。

口の中が、おいしい!おいしい!を連呼する。

『飯島社長、ごめんなさい。
保存方法10℃以下、要冷蔵、表記に背いて、じぶんの欲望のままに、加熱してしまいました』。

🍌


わたしはむかしから、微妙に惜しい食べ物が好きだった。
まずくはない、ちょっと惜しい食べ物。

例えば、ちょっと味付けが薄いとか、着色料つきまくりのどぎつい色の食べ物とか。

むかし社食で食べていた、具なしカレーもそのひとつ。
2センチほどしかない、豚肉の塊が、寂しげに浮いているだけのカレー。
特にスパイスにこだわっているわけでもなく、いたって普通の味だった。
でもわたしは、その惜しいカレーを毎日食べていた。
真っ赤な福神漬けをがばっとかけて。

そうゆう微妙な感じが、癖になっていくのだ。
あれ?わたし、いま、美味しいって思ってる?
うん、実はこれ、美味しいのかもしれない!

そしてまた一口。また一口と食べ続けていく。すると突然、わたしの舌は、世紀の大発見をする。
むちゃくちゃうまい!に変わっていたりするのだ。

🍌

まるごとバナナに話を戻すと、
要するに、一番美味しい食べ方は冷蔵バナナ。
多勢が推すのも、たぶん冷蔵バナナ。
だから、山崎製パンさんも10℃以下、推し。

ちょっと冒険したければ、レンチンバナナ。

そんなところだと思う。

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