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お気に入りのやつ

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#小説

夢の中

うまく息ができなくなる。
喉の奥に石でも詰まっているような心地がした。
言ってしまった。
ついに心の奥にしまっておいた言葉が、冗談と称して滑り出して刃物になってしまったのだ。
本来であればスッキリするはずなのに、彼女がつぶやいた言葉を見てどんどん黒いものが溜まるばかり。
こんなことになるなら、もう少し早く嫌いだとでも言っていれば良かっただろうか。
いや、無理に決まっている。
だってそうすれば彼女は

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少し小説を

意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた。

「何か心配事でも?」
心配しかないよ、これから時代が変わるんだから。
そう言ったら彼は「心配する事ないさ。俺より未来がある君が、なんで心配するんだ」と笑った。
私は自分の未来に心配してるんじゃないんだけど、
これは私の大切な思い出の話。

出会ったのは何年か前の出来事で、私は彼にいわゆる一目惚れをした。
出会ったと言っても大きな蜘蛛の巣の隅っこで

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