【現代表記】 福沢諭吉 「西洋事情」 (ロシア 銭貨出納)
底本には小泉信三監修『福澤諭吉全集』第一巻(再版)所収の「西洋事情󠄁」を使用した。
西洋事情二編 巻之二
魯西亜
銭貨出納
魯西亜の国は文明未だ洽ねからず、製産の物未だ多らざるが故に、其土地の広さと人民の数とに比すれば、歳入の高甚だ少なし。1862年会計局の公報に拠れば、歳入2億9586万1839ルーブル、歳出3億1061万9739ルーブルにして、出入の差1475万7900ルーブルなり。同年歳入の割合左の如し。
分頭税
2825万8826ルーブル
地税
2525万6733ルーブル
砿山、帝土、山林
1179万8032ルーブル
商売免許の税
2422万8978ルーブル
港運上
3180万ルーブル
酒税
1億2302万2580ルーブル
右の外売買税
3498万7624ルーブル
小目諸税
1650万9030ルーブル
共計
2億9586万1839ルーブル
同年歳出の割合左の如し。
国債の利息
5429万6188ルーブル
軍務局
1億657万5892ルーブル
人民教育
415万6824ルーブル
海軍局
2058万9830ルーブル
裁判局
550万2896ルーブル
寺院
466万1098ルーブル
文武官老退の者へ与る扶助金
1318万69ルーブル
鉄道社中へ貸附
775万9662ルーブル
右の外雑費
9389万7279ルーブル
共計
3億1061万9739ルーブル
1867年の記に拠れば、帝家の費用は891万9741ルーブルなりと云う。
1861年会計事務執政の公報に国債の高を記すこと左の如し。
外国の逋債
3億5359万7700ルーブル
内国の逋債
2億2661万6997ルーブル
金庫の手形及びポーランド、ヒンランドの逋債
4億1800万ルーブル
右の外に政府より紙幣を出だすこと7億5000万ルーブルより多し。但し此紙幣は国中の為替問屋及び政府の請合にて通用するものなり。其元金は9624万1618ルーブルを貯置き、会計事務執政の権に属す。近来は紙幣の通用益々多くして、国内の正金は減じたりと云う。
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