【現代表記】 福沢諭吉 「英国 議事院談」 (選挙の法)

底本には小泉信三監修『福澤諭吉全集』第二巻(再版)所収の「英國議事院談」を使用した。


選挙の法

 英の本国およびオールスにおいて、一州の奉行ぶぎょうへ議員選挙の命をだすときは、この命の到りし後二日の内に、選挙の場所を定めてこれを本所となし、此所ここより諸方へ布告文を伝え、所々の便利に従い、方角の模様によりて、またその場所を設け、一日をぼくし、選挙にあたるべき人物の姓名をかかげ、其可否を定む。ただし州に於ては其奉行たる者、みずから此事を施行し、城邑じょうゆうにては選挙がかりの士官ありて之を取扱とりあつかうこと奉行に異ならず。

 選挙にあたりたる人員多くしてその当否を決しがたきときは、奉行ぶぎょうまたかかりの士官にて其人の姓名を呼び、選挙人をして各々おのおの左袒さたんする所にしたがいて手を上げしめ、其手を上ぐる者の多少によりて選挙を定む。

 都府城邑じょうゆうおいては、翌日選挙人の数を点検してその姓名を記し、諸州に於てはまた其翌日にいたりこれを記す。ただこの時には選挙人の身分をただし、元来議員を選挙すべき権あるや否やを検査し、あるいは選挙の会に欠席せしことなきや否やを吟味するのみ。ごとく選挙人の多少を記すことは、諸府諸州に於て一日を限り、学校に於ては五日を限りとす。検査すでおわるときは、選挙にあたりたる人の姓名を記し、初め政府より議員選挙の命をだせしときの書面にして、之を国王の書記官に返呈す。

 一人の議員を選挙すべきに、二名の人物ありて、これを選挙する者の数同様なれば、二人の姓名を建言す。

 学校においては、方今議員を選挙するに書面をもちゆるを例とす。(入札の類をう。諸州諸府の選挙は言語をもちて可否を決するなり。)

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