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期待役割の変化には自分のレンズのかけ直しで適応しよう

Rettyでプロダクトマネージャーをしている飯田(i_dayu_to)です。

私はここ数年Rettyで働いてきた中で、何度か職種や役職が変わる経験をしてきました。職種としてはデータアナリストからプロダクトマネージャーへ。役職としてはメンバーからマネージャーを経てシニアマネージャーへ。

職種や役職が変わると、これまでとは異なる成果や期待役割が求められ、その度にさまざまな課題にぶつかってきました。課題を掘り下げていくと、その根底にある共通点があることに気づきました。
それは、「自分でも気づかないうちに過去の慣れた物事の捉え方や動きをしてしまい、期待役割の変化に適応できていない」ということでした。

このnoteでは、期待役割の変化が生まれた時に、物事の捉え方(ここでは「レンズ」と表現します)をどう変えていくか、という点について書いていきます。
職種や役職、環境の変化などにより期待役割が変わる中で、うまく適応できずに悩んでいる方に少しでも新たな気づきが生まれたら嬉しいです。

🎄この記事はRetty Advent Calendar 2023の23日目の記事です🎄


「技術的問題」と「適応課題」

リーダーシップ論で有名なハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツ氏によると、課題は大きく「技術的問題」と「適応課題」の2つに分けられると言います。

「技術的問題」であれば、これまで成果をあげてきた経験や専門性、さらには私たちの文化、伝統、組織、科学から蓄積された知識を使って問題を解決することができる。こうしたやり方は、誰の痛みも伴わず、犠牲も想定でき受け入れられる。

「適応課題」は、経験や専門性だけでは前に進まない。社会やコミュニティや組織の人々が大切にしている価値観や信念を明らかにし、彼らが変化に適応できるように戦略的かつ政治的に対処することが求められる。それは厳しい現実を直視し、価値観の一部を手放して優先順位をリセットし、過去の忠誠心を見つめ直し、一時的な痛みや失望や恐怖に対処するよう突きつけることである。

ロナルド・ハイフェッツ著『最難関のリーダーシップ - 変革をやり遂げる意志とスキル』より

言い換えると、技術的問題はこれまで培ってきた知識を使って解消できる課題で、適応課題は価値観や信念という、組織の人々が持つレンズに紐づく課題だと言えそうです。

私は両者を分けて捉えられていない時、目の前の課題の多くを技術的問題として捉えていました。先輩マネージャーのやることを小手先で真似てみたり、世の中的にうまくいっていると言われているようなことを形だけ試してみたりと色々なことをしました。
場当たり的にうまくいったケースもありましたが、その多くは根本的には解消されておらず、悶々とする日々が続きました。

期待役割が変化する時、適応課題にぶつかりがち

職種や役職には組織や事業にどう貢献して成果を出すかという期待役割がある一定紐づいています。それらが変わると求められる成果も変わり、その成果を出すためには自身のレンズや振る舞いも変えていく必要があります。

ここでの落とし穴は、新たな期待役割が求められる中でもこれまでうまくいったやり方や慣れたやり方を続けてしまうことです。

データアナリストからプロダクトマネージャーになった頃、前者のレンズのまま業務に取り組んでしまいました。日々素早い意思決定が求められる中で、不確実性を下げるために分析をし過ぎてなかなか決めきれないなど、うまく成果に繋げる効果的な動きが出来ないことがありました。
詳しくは以下の資料に載せているので、気になる方は覗いてみてください。

また、マネージャーになりたての頃、自分がプレイヤーの時の延長線上で物事を捉え、行動してしまって空回りしたことが多々ありました。
チームとして成果を最大化するにはどうすれば良いか」ではなく、「チームの成果を出すために自分ができる限りのことをなんでもやる」という、主語=自分の考えが先行し過ぎてしまい、その結果自分がやった方が早いからと様々なことに手を出し、タスクやMTGが増え続けていきました。
この動きを続けた結果、仕事を抱え過ぎてパンクしてしまうなど、自分がボトルネックとなりチームの成果や動きに制限が生まれてしまいました。

当時の上司からは「仕事はどんどん任せた方が良い」、メンバーからは「いつも忙しそうにしているから相談しづらい」などのフィードバックを何度ももらいました。
フィードバックを受けるたびに反省して、意識的に仕事をお願いするようにしてはみたものの、同じ過ちを繰り返している自分がいました。見せかけで振る舞いを変えているように見えても、結局プレイヤーのレンズをかけたままで根本が変わってなかったのだと、当時を振り返ると思います(今も出来てるかは分かりませんが...)。

これまで培ってきたやり方を続ける方が、余計なこと(だと自分が無意識に振り分けていること)にエネルギーを割かずに済むので楽できます。
ただ、そうすると期待役割に合った考え方、動き方ができなくなって、上手く成果につながっていきません。意識的に変えようとしない限り、これまで通りのやり方を続けてしまいます。

捉え方を変える一歩目は、自分のレンズに気づくこと

そもそも自分の成果の捉え方や仕事の進め方を気にしたことはありますか?
知らず知らずのうちに前提にしてしまっている自分なりのスタイルがあり、本来であれば変えた方が良いものまで過去のやり方を踏襲してしまっている可能性があります。

そのため、まず大事なのは自分がどんな物事の捉え方をしているかという自身のレンズに気づくことです。
ここでは、2つのアプローチをご紹介します。

視座・視野・視点の軸で物事を捉え直す

自身のレンズに気づくには、「どんな立場から(視座)・どんな観点/切り口で(視点)・どの範囲を(視野)見るか」を軸に整理するのがオススメです。

職種転換時には主に視点と視野が、役職変更時には主に視座と視野が変わりました。超簡易的かつ一部ではありますが、変わった点として主に以下がありました。

■ 職種転換(データアナリスト→プロダクトマネージャー)
データアナリスト
[視点] 不確実性を下げる意思決定への貢献ができるか
[視野] 客観的なデータをもとにした意思決定支援をメインとしており、意思決定後の実行領域にはあまり関与しない

プロダクトマネージャー
[視点] どのようにユーザー価値を最大化し、事業貢献できるか
[視野] 事業やプロダクトの成長につながることは全て対象

■ 役職変更(プレイヤー→マネージャー)
プレイヤー
・[視座] 個人として成果を出す
・[視野] 所属チームの成果が最大化するにはどうすれば良いか

マネージャー
・[視座] チームとして成果を出す
・[視野] 所属チームの成果はもちろんのこと、他のチームや部門とも相乗効果を生むにはどうすれば良いか

また、自分だけでなく、別チームやメンバーがどうやって成果や業務を捉えているのかを、直接聞いたり日々の言動から想像してみたりするのもオススメです。他と相対化して比較することで、客観的に自分のレンズを捉える機会になります。

観察とフィードバック

1つ目の方法は、自分で思考して気づく必要のあるアプローチです。ただ、自分のレンズは自分ではなかなか気づけないから厄介です。

そこで、自身の言動に対する他の人からのフィードバックや、それに対してどう感じたかという感情を観察することもアプローチの一つとして有効です。
自分の想定と違う反応が周りから得られて違和感を感じたり、苛立ちなどの負の感情が生まれていると感じたりすることがあれば、それは自分のレンズに気づく重要なヒントかもしれません。

例えば、自分があまり重視していない観点に対して他の人から指摘が入ったとします。納得感があればそれまでですが、そうではなく「なんでこんなところまで気にしないといけないんだ」と思ったとしたら、それは自分と相手のレンズの違いがある可能性があります。
「相手はなんでこんなことを気にするんだろう?」「自分とは何が違うんだろう?」と自問してみることで、無意識のうちに自分が前提としている考え方に気づく機会になります。

さいごに

先に触れた本の引用にもあるように、自分のやり方や考え方を変えるにはそれなりの痛みを伴います。これまで上手くいっていたのであれば尚更です。

周りからここを直した方が良いとか、世の中的にこうやってやるのが良いと言われても、それを取り入れたいと思うかは自分次第で、腹落ち感がなければ変わることに向き合えないと思っています。
腹落ち感を伴うには、小さく試してみてうまくいく経験がないと難しいんだろうなと感じます。いきなり大きく変えるのは大変なので、これまでの自分だとやらないだろうなと思うことを、ほんのちょっと勇気を出してやってみることで、これまでと違うレンズをかけるきっかけになるんだろうなと思います。

とはいえ、いうは易し。
これからも色々小さく試しながら、レンズの変化を楽しんでいきたいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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