子どもを殺す言葉

とにかく自分で作る。
買わない。買っても素材を買って自分で作る。
そんなことを1年間やってみてわかった事がある。

「早くしなさい」

という言葉が子どもの心を殺す
ということ。
成長には時間がかかる。
今でこそ大抵のものは作れるようになったが、はじめは失敗だらけで成功する見込みも無ければお金ばかり飛んでいく。(節約も兼ねていたのに・・・)
とにかく失敗する。
その度に「なんでだ・・・?」と自問自答を繰り返す。
作ってみてわかった反省点や改善点を次に活かす。
でもまた失敗する。と同時に時間が過ぎ去っていく。
必死に、必死にそんなことを何度も繰り返しているうちに人は無意識のうちに成長しているんだ、ということに気がついた。

それは大人だけではなく、子どもだってそうなんだ。
子どももとにかくチャレンジする。
できる、できないなんて関係ない。とにかくチャレンジする。
できるまでやる。出来るまで挑戦する。
失敗したことなんて意に介さない。
失敗で落ち込むことなんてない。
とにかく出来るまで挑戦し続ける。
でも人の成長においてそれがすごく大事な事なんだって33歳の今になってようやく気がついた。
その子どものチャレンジ精神や挑戦心を打ち消す言葉がある。
それが

「早くしなさい」

だ。この言葉は子どもの成長を止める。
間違いなく止める。
成長というのは先にも言った通り、時間がかかる。
必ず失敗というルートを通らなければならない。
成功だけをする道は確かに早い。
でも一番大事な挑戦やチャレンジという精神がまるで抜け落ちてしまう。
答え合わせしかできない子どもになる。
答え通りの生き方しかできない子どもになる。
社会人経験のある親御さんならわかると思う。
自分で考えることができず、マニュアル通りの事しか出来ないアルバイトや学生がいた経験は誰しもがあるはずだ。
主体性がなく常に受け身で自分の頭で考えることができない、そんなスタッフや従業員と働いた経験はないだろうか。
「早くしなさい」
この言葉は子どもが目の前の事象についてじっくり考える時間を奪う。
「なんでだろう・・・」
「どうしてだろう・・・」
「不思議だ・・・」
大人からすれば何もしていないように思える子どもでもその実、非常に物事を深く観察しているものだ。彼らは何も考えずにただ物事を観察できる。
だから大人からすれば何もしていないように見える。
だから「そんな事してないで早くしなさい」と言いたくなるのだ。
気持ちはわかる。
でもこの言葉が多くの子ども達の好奇心や想像力を奪い去っていることもまた事実なのだ。
世のお母さんたちが子どもたちに対してもっともよく使う言葉が何を隠そうこの「早くしなさい」という言葉であるという統計もある。

世のお母さん、お父さん方。
余計なお節介かもしれない。人様の家の教育方針に口出しできるほど俺は立派な人間じゃない。
でもこれだけは覚えておいてほしい。

「早くしなさい」という言葉は子どもの心を殺す

子どもの知的好奇心や創造力、仕組みや構造を理解しようとする力をこの言葉は奪い去る。

そしてもうひとつ、子どもを殺す言葉がある。
それは

「いいからやりなさい」

という言葉だ。
意外に思うかもしれないが、この言葉は子どもの動機づけ能力を根こそぎ奪い去る。人間において動機づけを司る脳は前頭葉や前頭前野であるが、この脳の成長をこの言葉は止めてしまう。

やる気がない、やりたい事がない、やりたい事が分からない。
そんな若者が多く存在する。
本来、人は物事の動機づけを自らの意思に結びつける能力を後天的に会得する生き物である。それは前頭前野の発達に伴い顕著になり、16歳くらいにもなれば自分の意思や明確な動機を持ち得る。
(第一次反抗期や第二次反抗期などはまさにその成長が著しい時期なのかもしれない。)
しかし「いいからやりなさい」という言葉には何の動機もない。
この言葉を使う親は動機を子に与えずに行動させようとしているのだ。
これがあなたが部下で上司にこう言われたらどう思うだろうか?

あなた「これは何に関する書類ですか?」
上司「いいからやりなさい」

一言で言ってクソ上司である。
しかし明確な動機を与えてくれず奴隷扱いのような指示しかできない親がこの世には5万と存在する。
人が行動する際に動機というのは非常に重要な意味を持つ。
なぜそれを行うのか?
明確な動機があるのとないのとでは成果物や結果に大きな差が生まれる。
それなのに、だ。
「いいからやりなさい」
こう言われてあなたならやる気になるだろうか?

それでも子どもは親に従うしかない。
だから嫌々でもやる。
しかし、そうして育った子どもはそのうち動機づけをしなくなる。
親から動機づけを学んでいないから自ら動機づける術を得ずに社会に出る。
社会では主体性が求められるが、自らの意思に対して動機づけ出来ないまま大人になった人はこの動機づけが出来ない。
誰かに動機を与えて貰わないと行動できないのだ。
こうして「人に言われないと何もできない人」が出来上がる。

人の成長には時間がかかる。
出来るできないに関わらず挑戦して、失敗して、なんで失敗したのかを考え、また挑戦する。
この工程には時間が掛かる。
大人が考えればすぐわかる事でも子どもからすれば大学入試レベルの超難問であり、時間を掛けて頭の汗をひたすら流してようやく分かる、といったレベルだ。しかし、その汗をかくことが脳の成長や精神力の成長に欠かすことができないのは言うまでもない。
この涙ぐましい挑戦と失敗の連続を繰り返したことがない人間が成功を収めるとだいたい調子に乗って最終的に失敗する。
本当の意味での挑戦をし続ける人にとって「成功」とはほんのたまに訪れる偶然でしかないからだ。
どんな挑戦にも必ず成功と失敗の2面性がある。
この2面性がある限り、人は調子に乗らないし、次に反省を活かそう、そういった謙虚な姿勢でいられるのだ。
それとは逆に成功しかさせて来なかった親御さんの子どもはこの成功しか求めないにんげんになる。
で、成功してもだいたい調子に乗って失敗に終わる。
どこぞのベンチャー企業の社長の話をしたい訳ではないが、まさにそういう浅はかな人間になる。

だからもし、このブログをたまたま見てくれた親御さんがいたなら。
どうか子どもの成長を急がず、待ってあげてほしい。
急がせた子と、じっくり考える時間を与えてあげた子のどちらが最終的に賢くなるかは分かるはずだ。
人の成長も植物の成長も時間が掛かる。
いま、俺達が食べている野菜には農薬や化学肥料が使われている。
確かに化学肥料のお陰で作物は早く育つ。
しかし、栄養価は50年前の1/3程度しかない。
そうやって成長を急がせて中身のない野菜を育てるような子育ては、どうかやめてあげてほしい。
成長には時間が掛かる。

「早くしなさい」
「いいからやりなさい」

この言葉を言いたくなったら親御さん自身の心に余裕がなくなっている証拠だ。ピリピリした上司のもとで仕事がしたい?したくないでしょ?
親のストレスは必ず子どもに伝わる。
そのストレスが脳の発達や心の発達を妨げるんです。
だからこの言葉を使いたくなったら、少し休みましょう。
子育ては急がなくて良いんです。
そのほうが良いんです。

自分は33歳にして今までしてこなかった挑戦に挑んで何度も失敗して痛い目にもあいながらその度に考え、調べ、そしてまた挑戦するということを繰り返す事で本当の意味での「自分の頭で考える力」が身につきました。
挑戦や理解しようとする時間を奪う事は「成長」を奪う事です。
どうか、これからお子さんを育てるお母さんお父さん方においてはこの二言だけは気をつけてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?