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いつか、届いたらいいな。

そのむかし、妊娠中の思い出。
大きなおなかで電車に乗ると、ご高齢のおばあさんが、席をかわってくれようとした。
ご高齢だし、申し訳ないので「大丈夫ですよ」と断った。

すると、「私の孫も、今、妊娠中なの。でも遠くに住んでいて、何もしてあげられないから、代わりにあなたに席を譲りたいの」と。

お孫さんを想う気持ちが伝わってきて、ぐっときてしまった。
お言葉に甘えて、少し座らせてもらう。
なんだか実のおばあちゃんに優しくしてもらったみたいな、あたたかさに包まれた。

すぐに降りていかれたので、あまりお話はできなかったけれど、
「その赤ちゃんも無事に生まれたかな」「うちの娘と同い年よね」と、ときどき思い出している。ㅤ

直接なにか出来なくても、ほかの誰かに優しい気持ちを渡すことはできる。その尊さを、教えてもらった。

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ときは流れて。ある日、電車内で座っていると、私の前に、幼稚園くらいの男の子が立った。
その隣りには、小学生くらいのお兄ちゃん、その隣りにお父さん。

家族3人でお出かけのようだけど、なんだか不穏な雰囲気だ。
次男くんの機嫌が、すこぶる悪い。今にも癇癪を起しそう。
これから起こることを予感して、車内がちょっと緊張し、覚悟する。

とっさに「ここ、座る?」と、その子に聞いている私がいた。
お父さんが、「いえ、大丈夫です!!」と断る。
もう一度、その子の目だけを見て、「ここ、座りたい?」と聞く。
彼は、私の目をまっすぐ見て、小さく頷き、自分の意思を伝えてくれた。
その仕草を捉えた私は「どうぞ、どうぞ」と席を譲る。

すると、私の隣りに座っていた男性が、お兄ちゃんに席を譲った。
そのまた隣りに座っていたおじさんが、「お父さん、あなたも座りなさい」と席を立った。
お父さんを座らせる必要性はなかったけれど(笑)、恐縮するお父さんを、ちょっと強引に「いいから、いいから」と座らせて、グッジョブだった。

次男君を見ると、不穏な雰囲気がすっと消えている。
外の景色を見ながら、ご機嫌におしゃべりを始めた。
お父さんも肩の力が抜け、ほっとしている様子(うん、うん、気持ちわかるよ)。
連携プレーで、すごくいい仕事ができた。私自身も、気分がよかった。

***

このとき、妊娠中に、私に席をゆずってくれた、あのおばあちゃんを思い出した。

おばあちゃんが私に席を譲ってくれて、
そんな私が誰かに席を譲って、
その人が、また誰かに優しさをわたして、
いつか、ほんとうのお孫さんと、ひ孫さんまで届いたら、すてきだな。
いつか届いてくれるといいな。

※そんなことを思いながら、冒頭のエピソードをTwitterに載せたら、たくさん「♡」をいただいたので、追記してnoteにも載せてみました。


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