新型コロナウィルス、世界的に株価復調も経済的影響は引き続き警戒

中国株式市場は4日、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な株安局面から切り返した。ただ、複数のヘッジファンドは感染拡大に伴う経済的影響を懸念し、依然として警戒姿勢を堅持している。

世界的に株価復調も都市封鎖の延長等警戒

旧正月明けとなる3日の中国株式市場は大幅安となり、時価総額で約7000億ドルが消失。
上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数(.CSI300)は8%安となった。
だが、4日のCSI300指数は2.5%上昇。中国人民銀行(中央銀行)が市場安定化に向けた決意を示したことで、前日の急落から持ち直した。
これに追随する形で欧米の株式市場も買いが優勢となり、S&P総合500種(.SPX)は4日中盤の取引で1.7%高となっている。

上海を拠点とするヘッジファンド、ユーコム・インベストメントのグ・ウェイヨン最高投資責任者(CIO)は「危機に直面すると、空が落ちてきたと皆が感じる。だが結局、空は落ちない」と指摘。
景気回復を見込み、上海国際機場(600009.SS)など売り込まれた空港株を選好していると述べた。
上海国際機場は3日終値時点で年初来19%安。4日は8%高となった。

世界経済に対する投資家心理を示すとされる原油価格は3日に13カ月ぶりの安値を付けたが、足元では下げが一服。
北海ブレント先物(LCOc1)は0.7%高の1バレル=54.83ドルで推移している。
一方、サンライズ・キャピタル・パートナーズのCIO、クリストファー・スタントン氏は「まだ終わっていない」とし、株式のポジションを減らす一方、ボラティリティー拡大時に利益が出るデリバティブ商品を取得したと明かした。
中国・杭州市のグローバルマクロ型ファンドを運用するユアン・ユーウェイ氏は、不動産や小売、高級品、旅行、レジャー関連セクターが感染拡大に対する脆弱性が最も大きいと言及。
同氏は旧正月前にヤム・チャイナ・ホールディングス(YUMC.N)やスターバックス(SBUX.O)など複数の銘柄をショート(売り持ち)した一方、中国の動画共有サイト「ビリビリ」(BILI.O)など株価が上昇する可能性がある銘柄をロング(買い持ち)したと明らかにした。
日本を拠点とするヘッジファンドマネジャー、ヤン・シャオファン氏はさらに悲観的だ。同氏は世界経済の成長に連動するとされる銅をショートする一方、安全資産に逃避する資金の流入ペースが金よりも緩やかな銀をロングしているという。

ヤン氏は「新型コロナウイルス自体はそれほど恐ろしいものではないが、都市封鎖や休日延長に伴う供給網の混乱や工場閉鎖が短期的に経済に大きな影響を与えるだろう」と述べた。

中国人旅行客の減少で米経済に打撃

新型コロナウイルスの感染拡大に絡む渡航・入国制限が米国への中国人旅行客の減少につながり、米経済に打撃を与える可能性があるとアナリストが警鐘を鳴らしている。

オックスフォード・エコノミクスは、新型ウイルスの感染拡大を受け、中国人旅行者による米国での支出が今年の大半に103億ドル失われると試算する。
ムーディーズ・アナリティクスの首席エコノミスト、マーク・ザンディ氏も、中国人旅行客の減少は米経済と新型ウイルス拡大の最も直接的な関連を反映していると指摘する。

ツーリズム・エコノミクスによると、2002年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)終息以降、中国から米国への渡航者(学生含む)は1270%急増し、19年には280万人に達した。

オックスフォード・エコノミクスは、中国人旅行者1人当たりの支出は航空運賃や教育費を除くベースで1旅行につき平均6000ドルと算出する。
中国人旅行客の減少によって大きな打撃を被るとみられているのは、旅行先として人気の高いカリフォルニア州ロサンゼルス近郊のリバーサイドやナイアガラの滝に近いニューヨーク州バッファロー。

ナスダックは過去最高値を更新

そんな中でも、4日の米国株式市場では、ハイテク株の構成比率が高いナスダック総合株価指数が続伸し、前日比194.57ポイント(2.1%)高の9467.97で終え、1月23日以来の過去最高値を更新した。電気自動車(EV)大手テスラが連日急伸したほか、アップルやマイクロソフトといった大型ハイテク株に資金が集まった。

新型肺炎の感染拡大が止まらないなかでも、投資家は株式への強気姿勢を崩していない。世界的な金融緩和状態や運用難がリスク資産に資金を向かわせている。

総括

昨日の株価復調は、パニック売りの反発と考えたほうが良いだろう。
新型コロナウィルスの懸念が和らぎ、リスクオフとなったと判断するには時期尚早。

各国でワクチン開発、渡航禁止措置による感染拡大防止策の効果が見られたときに始めて安心するべきだ。

とはいえ、そのときにはすでに有能なヘッジファンドは「仕込み済み」と思われるので、真に押し目を狙うことは難しいが、復調の順張りが比較的安全だろう。

出典

ロイター 2/5 ヘッジファンド勢、中国株反発でも警戒崩さず 経済的影響を懸念

ロイター 2/5 中国人旅行者減、米経済に100億ドル打撃も 新型ウイルス拡大で

日本経済新聞 2/5 ナスダック指数、最高値更新 肺炎拡大でもリスク選好

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