【米国市場】ダウ平均は続落、領事館閉鎖による米中対立に懸念

米国株式市場は続落して取引を終えた。週末を控える中、軟調な企業決算や新型コロナウイルス感染者の急増、地政学的な不確実性などを背景に幅広く売りが出た。

ハイテク株起因の下落

前日に続き、ハイテク株の下げが主要3株価指数の重しとなった。回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体技術の開発が予定より6カ月遅れていると発表したインテル(INTC.O)が16.2%安と、下げを主導した。
LPLフィナンシャルのシニア市場ストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「週末を控え不安感がある」と指摘。過去2カ月間でのナスダック総合やハイテク株の上昇は驚くべきものだったとし、調整があってもおかしくはないと述べた。
週間では3指数とも下落。S&P総合500種とダウ工業株30種は4週ぶりの下げ、ナスダックは過去4週間で最大の下げとなった。
S&Pは今週、2月の最高値を約5%下回る水準まで回復。足元では昨年末とほぼ同水準となっている。一方、ナスダックは年初来で約15%上昇してる。
デトリック氏は「7月のこれまでの上昇を考慮すると、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)や相次ぐ企業決算、史上最悪となり得る国内総生産(GDP)発表を前に不安感が広がるのも無理はない」と語った。
来週30日にはアップル(AAPL.O)、アルファベット(GOOGL.O)、アマゾン(AMZN.O)が決算を発表するほか、米商務省が第2・四半期のGDP速報値を公表する。アナリストによると、第2・四半期のGDPは35%縮小が見込まれている。
米国で確認された新型コロナ感染症による死者は23日に1000人超増加した。死者が1000人を超えるのは3日連続。感染者数は累計で400万人を突破している。
中国外務省は、24日午前に米国大使館に対し、四川省成都市にある総領事館の閉鎖を通知したと発表した。米政府が今週、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じたことへの対抗措置となる。
業種別では、S&P11セクターのうち、一般消費財(.SPLRCD)以外が下落。情報技術(.SPLRCT)が下落率トップとなった。
ヘルスケア(.SPXHC)は薬価引き下げを盛り込んだ大統領令の発令を控え、1.1%安となった。
第2・四半期決算では、S&P500構成銘柄のうち128社が発表を終え、そのうち80.5%が非常に慎重なアナリスト予想を上回った。
個別銘柄では、米クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス(アメックス)(AXP.N)が1.4%安。24日発表した第2・四半期決算は85%の減益となった。新型コロナ感染抑制に向けた世界的なロックダウン(都市封鎖)がカード利用に響いた。
一方、通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ.N)は1.8%高。第2・四半期決算(6月30日まで)で売上高と利益が予想を上回った。ロックダウン措置により、在宅勤務などが急速に広がり、電話やインターネットサービスへの需要が高まった。

米複合企業ハネウェル・インターナショナル(HON.N)は2.8%下落。コスト削減が寄与し、第2・四半期利益は予想を上回ったが、先行きの不透明感が警戒された。
インテルの競合であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD.O)は16.5%高となった。
テスラ(TSLA.O)は6.3%安と続落した。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を1.92対1の比率で上回った。ナスダックでは2.77対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は95億7000万株。直近20営業日の平均は110億4000万株。

米中がそれぞれ総領事館閉鎖

中国外務省は、24日午前に米国大使館に対し、四川省成都市にある総領事館の閉鎖を通知したと発表した。米政府が今週、テキサス州ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じたことへの対抗措置となる。
中国はヒューストンの中国総領事館閉鎖に反発し対抗措置を取ると表明していた。

中国外務省は声明で「米国の措置は国際法や国際関係の基本的規範、ならびに中米領事協定への深刻な違反であり、中米関係に重大な損害をもたらした」と非難した。
その上で「中国外務省は、在中米国大使館に、成都市での総領事館設置及び業務の承認を撤回する決定を通知した」と表明、同総領事館のすべての業務と行事の停止に関する要求を行ったとした。
中国外務省の汪文斌報道官は24日の会見で、成都の米総領事館の職員らが身分不相応な行動をし、中国の内政問題に介入し、中国の安全保障を損ねたと述べた。ただ具体的な説明はなかった。
中国共産党系メディア、環球時報の胡錫進編集長は、中国が米国側に72時間以内の閉鎖を通知したとツイッターに投稿した。
胡氏によると、閉鎖は現地時間24日午前10時(日本時間午前11時)に通知されたという。ここから72時間以内とすれば、現地時間27日午前10時までの閉鎖を意味する。

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の報道官は声明で「報復行動に出るよりも、こうした悪意ある行動をやめるよう中国共産党に促す」と述べた。
中国の王毅国務委員兼外相は、今回の米中関係の緊張は全て米国が引き起こしたと批判しつつも、中国側はなお、米国と相互尊重に基づく協調を望んでいるとの認識を示した。
また、良心と独立の精神を持ついかなる国も、中国に対し米国を支持することはないと述べた。
米国務省と北京の米国大使館のコメントは現時点で得られていない。
成都の米総領事館のウェブサイトによると、同領事館は1985年に開設、中国人約150人を含む約200人が勤務している。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて米国人職員の多くが中国を出国しており、現在何人が勤務しているかは分からない。

発表を受け、中国株式市場や人民元は下落。世界の株式市場にも波及している。

<米中緊張一段と>
米中は今年に入り、新型コロナから貿易、ハイテク技術、南シナ海や香港問題までさまざまな問題で対立し、関係は悪化している。
ポンペオ米国務長官は23日の演説で、米国と同盟国が「より創造的で積極的な手段」を行使して中国共産党に対して対応を改めるよう促す必要があると主張した。
ヒューストンの中国総領事館閉鎖を受けた中国側の対応については、これまでに、湖北省武漢市の米総領事館の閉鎖が検討されているという関係筋情報も出ていた。米政府は今年初め、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて武漢の総領事館から職員を退避させている。
環球時報の胡編集長は先に、香港にある米総領事館が職員の大幅削減を命じられる可能性もあるとの見方を示唆していた。
復旦大学(上海)の教授で米国専門家のWu Xinbo氏は「成都の総領事館で米国はチベットに関する情報や、周辺地域での中国の戦略兵器開発に関する情報を収集しており、武漢の総領事館より重要だ」と指摘した。一方、貿易や経済活動という観点では、成都は上海や広州、香港の米総領事館ほど重要ではないとの見方を示した。

中国のソーシャルメディアには、ヒューストンの中国総領事館閉鎖を非難していたユーザーから今回の決定を称賛する投稿が見られる。

今日の私見

米中対立にまた新しいニュースが飛び込んできた。
大使館への介入は、戦争準備と連想させるくらい有事と関係している。

現在の市場は、新型コロナの新規感染者数よりも金融庁・経済対策への期待、これによる経済の回復期待が下支えとなっている。
米国内の経済指標が好調なことから、この下支えが強固なものとなっており、恐怖指数(VIX)も20台まで低下している。

しかし、ここに米中対立が続くと危険だ。
昨年の米中貿易戦争はプロレスで終わったが、今年は違う。
11月に米大統領選が控えているからだ。
大統領選は勝つためなら手段を選ばない。戦争だってなされる。
有事になると一気にリスクオフとなるだろう。
9~11月はリーマンショックなど大暴落を記録しやすい月であることも注意したい。

出展

ロイター 7/24 米国株続落、決算やコロナ感染が重し インテル大幅安

ロイター 7/25 中国、成都の米国総領事館閉鎖を要求 米に対抗措置