日商簿記範囲外のEX論点【暗号資産⑧】~暗号資産の信用取引~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、暗号資産の論点から「暗号資産の信用取引」を紹介します。
※今後、取り扱いが変わる可能性があります。
1.暗号資産の信用取引
概要
暗号資産に関しても、信用取引を行うことが可能な銘柄が存在します。
ただし、有価証券の信用取引と違い、証拠金の2倍までの売買取引が可能とのことです。
また、暗号資産はFX取引・先物取引も行われていますが、取引の種類としてはデリバティブ取引に当たるものである為、紹介は致しません。
なお、会計上の処理は現時点で定められていません。
その為、仕訳に関しては、有価証券の信用取引と同様の扱いで処理するものと考えられます。
仕訳(買い手側)
差入時の仕訳
暗号資産の信用取引の場合、現金ではなく、暗号資産で差し入れることも可能です。
その場合、差し入れる前の時価に一定の率(代用掛目)を掛けた額が委託証拠金の額となります。
代用掛目率は、現在は一律50%であるとされます。
また、暗号資産で差し入れた場合は、差入保証暗号資産勘定(投資その他の資産)で計上するものと思われます。
開始時の仕訳
取引開始時、手数料を含めた暗号資産の購入価額で信用取引暗号資産勘定(流動資産)を計上し、相手方に暗号資産信用取引未払金勘定(流動負債)を計上します。
また、委託手数料や消費税等が発生した場合は、決済時にまとめて支払う為、有価証券の信用取引と同様に未払金勘定で計上します。
期末時の仕訳
期末時の評価は、暗号資産の処理に準じます。
反対売買による決済時の仕訳
反対売買によって決済を行った場合は、その暗号資産の決済時の時価と帳簿価額の差額で暗号資産売却損益を計上します。
上記では省略していますが、支払利息、開始時・返済時手数料といった代金は、決済時に精算する為、対応する勘定科目で計上する必要があります。
仕訳(売り手側)
差入時の仕訳
買い手側の仕訳と同一
開始時の仕訳
取引開始時、暗号資産の約定金額で担保差入金勘定(流動資産)を計上し、相手方に借入暗号資産勘定(流動負債)を計上します。
また、委託手数料や消費税等が発生した場合は、決済時にまとめて支払う為、有価証券の信用取引と同様に未払金勘定で計上します。
期末時の仕訳
期末時の評価は、暗号資産の処理に準じます。
反対売買による決済時の仕訳
反対売買によって決済を行った場合は、その暗号資産の決済時の時価(買い手数料含む)と帳簿価額の差額で暗号資産売却損益を計上します。
上記では省略していますが、受取利息、開始時・返済時手数料といった代金は、決済時に精算する為、対応する勘定科目で計上する必要があります。
2.例題
(1)暗号資産の信用買い
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:千円)
なお、期末時の評価方法は洗替法によるものとし、小数点以下は四捨五入とする。
①当社は、暗号資産の信用取引を行う為、暗号資産A300単位分(1単位当たりレート:@7,500)を委託証拠金として差し入れた。
②当社は、暗号資産A(取得日レート:@7,800)を450単位、信用取引で買い付けた。
なお、委託手数料が30,000円発生している。
③期末日を迎えたので、時価評価を行う。
暗号資産Aの決算日レートは@7,600であった。
④翌期になったので、再振替仕訳を行う。
⑤決済日を迎えたので、反対売買によって決済を行った。
暗号資産Aの決済日レートは@8,000であった。
なお、以下の金額が発生している。
・返済時手数料:40,000円
・支払利息:30,000円
(2)暗号資産の信用売り
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:千円)
なお、期末時の評価方法は洗替法によるものとし、小数点以下は四捨五入とする。
①当社は、暗号資産の信用取引を行う為、2,500千円を委託証拠金として差し入れた。
②当社は、暗号資産B(取得日レート:@3,500)を1,100単位、信用取引で売り付けた。
なお、委託手数料が50,000円発生している。
③期末日を迎えたので、時価評価を行う。
暗号資産Bの決算日レートは@3,300であった。
④翌期になったので、再振替仕訳を行う。
⑤決済日を迎えたので、反対売買によって決済を行った。
暗号資産Bの決済日レートは@3,200であった。
なお、以下の金額が発生している。
・返済時手数料:25,000円
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