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後編:あらすじの書き方について

 前回の中編では、あらすじは簡単に書けることと、ガチの人はあらすじで差をつけようということを書きました。
 今回は実践していきます。

 昔、偉い人は言いました。

「相手の服を脱がせる秘訣は、まず自分が脱ぐこと」と。
「もしダメだったら、謝って服を着ろ」と。
 その教えを実践すべく、まずは自分が脱ごうと思います。

 あらすじを書いた

 戦乱の時代では屈指の死霊術師ネクロマンサーだったアリア。平和な現在では人里離れた森の奥で、孤児のミラを弟子として育てている。ミラは命を尊ぶ白魔法の適正があり、アリアに回復魔法を教えて欲しいとせがむ。だがアリアは魔法の適正から、白魔法は教えられなかった。ミラには本を与えて独学をさせるも、ミラの才能のために、街にある学校へ行かせることを考えはじめる。折しも、アリアの元に戦乱時の仲間であり英雄のジンから、街で起こっている異変の調査の依頼が来る。アリアは、ミラを街の学校へ入学させることを条件にその依頼を受ける。ミラは初めての生活、初めての学校、初めての友達を、笑顔でアリアに報告する。そんなミラを見て、アリアは目を細めると共に、自分の役割の終わりを感じる。
 アリアが異変を調査するほど、きな臭さが強まってくる。そして、手の施しようが無いほど事態は悪化していることを知る。アリアはジンを問い詰める。ジンは言い訳をしなかった。街に住む人々の平和とアリアの命を天秤にかけたことを告白する。親友の苦しみを自身に重ねたアリアは全てを受け入れる。親友にミラの今後を頼み、単身で黒幕に立ち向かう。だが、すでに黒幕の術中であり、アリアは捕らえられ、牢に入れられてしまう。なまくらになった自分を嗤い、すべてを諦めるアリア。だが、ミラが助けに来たことで覚悟を決める。アリアはミラに隠していた真実、ミラを孤児にしたのは自分であることを伝える。そんなアリアに、ミラは自分の想いを伝える。
 アリアとミラで行動するが、敵の策略に絡め取られ窮地に追い込まれてしまう。アリアは禁断の魔術で自身を死霊化し使い黒幕を倒す。ミラは、死霊となったアリアをこの世に繋ぎ止めるように死霊魔術を学ぶことを、またアリアが復活できるように白魔術を学ぶことを。相反する二つの魔術を修める、という無茶苦茶を決意する。

   (あらすじ部分のみで783文字)

 必要事項をチェックしていきます。
ジャンル:ファンタジー
だれが、なにをする:師匠が弟子のために頑張る。
話の流れ:今の生活に限界→街の学校に行かせるために事件を解決する→黒幕を倒してハッピーエンド

 大丈夫ですね。
 では、面白かったでしょうか?
 おもしろポイントは一切ありませんでしたね。
 でも、大丈夫。こんな感じでOKです。
 自信をもって書いていきましょう。



 ……ノルマ達成。

 地獄へようこそ:差がつくあらすじの書き方

 では、基本的には、漫画原作で意識することを参考にあらすじを組み立てます。詳しく見たい人は過去記事 (前編)(後編) から。
 あらすじの作り方で意識することは3つ。
 ①冒頭で「なにをする or したいか」を書く
 ②冒頭で「困難 or 障害」を書く
 ③結末を明確にする
 この3点を、あらすじの例に当てはめてみましょう。

 Lv1 チェック! あらすじから物語のレベル感を見る

 ①ミラを学校に通わせるため事件を解決したい
 ②実は弩級にヤバイ事件
 ③黒幕を倒し事件を解決
 ①~③の要素がしっかり入っていますね。
 ですが、全体的に必然性・関連性が薄いので、少し残念なことがわかります。このあたりで、レベル感がお察し・・・されてしまいますね。
 戦いに行くのであれば、もう一度練り直しが必要なことがわかります。
 あらすじで物語の弱い部分がわかりました。これがあらすじを書くメリットでもあります。
 今回はこのまま、次のレベルに行きましょう。 

 Lv2 裏ストーリーを滲ませる

 裏ストーリーとはなにか。
 詳しくは別の機会に書きたいと思います。ここでは裏ストーリーとは、表ストーリーと比べて、より心理的な部分のストーリーだと思ってください。

 例えば『ジョジョの奇妙な冒険』
 ジョジョってどんな漫画でしょう?
 答え①「バトル漫画」
 答え②「特殊能力を使って戦う頭脳バトル」
 答え③「人間讃歌・受け継がれる意思の物語」
 ①②が表ストーリーです。③が裏ストーリーです。
 裏ストーリーを理解すると、物語の解像度が一段上がります。

 ここからは書き手サイドの視点です。設定も絡めた内容になっています。「知らんがな」を前提に読んでください。
 この物語はアリアが「命とは何か」に自分なりの答えを出す物語です。

 アリアはその生い立ちから、命という抽象的なものをうまく理解できていません。だからこそ死霊魔術と相性がよく、大きな力を使うことができていました。不道徳というデメリットがメリットとして働いていました。ですが、戦乱が終わり、力を使う場所がなくなると自分の価値はなくなります。今は弟子のために生きているだけです。そんななかで、街で起こる事件の黒幕が、過去の自分と重なります。弟子という他者と関わっていくなかで、弱くなってしまった自分にあきれ、あざけり、生きることを諦めようとします。ですがそこに弟子が助けに来て、アリアと一緒にいたい、と伝えます。弟子のおかげで、アリアは自分に命の意味を見い出しました。だからこそ、過去よりも強力な死霊魔術を使い、黒幕(過去の自分)を倒します。

 これが裏ストーリーです。

 こういった裏ストーリーがあり、それを滲ませられると、文字数以上のものを伝えられるので、差がつくあらすじになります。
 今回のあらすじでも、「命を尊ぶ」白魔法、と書きました。単に白魔法で問題ないところをわざわざ書いています。そこに気がつくと、主人公の死霊術師ネクロマンサーという設定からも、物語に「命」が関わっていることがなんとなく感じられます。
 そこまでくれば、この物語が、主人公が弟子とキャッキャウフフしたりする話ではない、ことがふんわり伝わってきます。主人公が「命」というものに対して、価値観が変化する話なのかな、となんとなく感じ取ってもらえます。

 ココですよ

 あらすじを読む相手はプロです。裏ストーリーという、面白くするためのテクニックも知っています。ですので、ちゃんと読み取ってもらえます。そして、そういったあらすじを書いてくる作者には期待をします。物語を読む前から期待が生まれれば、大きなアドバンテージです。
 裏ストーリーを滲ませるあらすじを書きましょう。ココがこの一連の話の終着点です。

 おまけ:Lv3 さらに先の話

 ココから先は未知のエリアです。
 文章の美しさとまとまりを兼ね添えた、格の違いを見せつけるあらすじが、確かにあります。Lv2まではテクニック的な話でしたが、最早そんなものなくても戦える人達は確かに存在します。
 そんな人たちと戦うのが、コンテストであり、賞レースです。素手で挑むのは、あまりにも危険が多すぎます、活用出来るテクニックは武器として、是非活用してみて下さい。

 以上、長くなりましたがあらすじの書き方でした。
 ここまでお付き合いいただき、ありがとうござます。

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