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その町について知っているわずかなこと

京都府南部、奈良県と三重県と滋賀県の県境が交差するあたりの山あいに、和束町という町があります。
京都市内からは車であれば1時間ちょっと。町内に鉄道の駅はなく、お隣の木津川市にあるJR奈良線加茂駅からバスで20分くらい。1時間に1本くらいの間隔でバスが出ています。

先週末、その和束町で開催されたこんなイベントで演奏してきました。ヘッダーの写真は会場から望む景色。

2014年春にスタートしてから5年間毎年開催されているイベントですが、初開催時に呼ばれてから、なんだかんだで毎年声を掛けてもらってます。

そもそもなぜオファーがあったんだったか、なぜ毎年呼ばれてるのか、いまいち良く分からないまま続けていますが、多分、あまりまともに耳を傾ける必要がなさそうなぼんやりした感じと地元のおじいちゃんおばあちゃん(実際あんまり来てないけど)を意識したあざとい選曲が、場を埋めるのに便利なんだろうなと想像します。
その絶妙に期待されてない立場を最大限に活かして、こちらもあざといながらもかなり好みに偏った選曲と思いつきに任せた演奏で、いつも少し山の空気を汚して帰ります。

和束という町

ここ5年、毎年欠かさず行っているこの和束という町。
…の割に、僕にはこの町について知っていることがあまりありません。
会場まわりの風景や、いつもここに集まる地元の人たちにはそれなりに馴染んだものの、町の中もほんの一部しか散策したことがありません。

茶畑で埋め尽くされた山の斜面が光に照らされる風景には、人工的自然の美しさとでもいうべきものがあるし、町の中心の、これまた茶畑に覆われた小高い丘の上に鎮座する安積親王陵の佇まいは最高にチャーミングだし、山間部の割に広く開けた町の地形には独特の明るさがあります。
あと、めっちゃお茶がうまい!

安積親王は奈良の大仏を建立した聖武天皇の息子なので、そのお墓がこの土地にあることからも町の歴史の長さが窺い知れるし、恐らくこの日光が降り注ぐ明るい地形も、長い開墾の歴史によって作られたものなんじゃないかと想像します。

▲安積親王陵墓

僕は今住んでいる土地から特に離れたいとも思っていないし、田舎暮らしに全く幻想はないけれど、和束に来ると、ここに住みつくのもいいなぁなどと考えたりします。

とはいえ、僕が直接見たことの中から言えるのは、だいたい上に書いた程度の風景の印象みたいなことだけで、僕がこの町に対して抱くイメージは観光者のそれです。
更にこの土地に興味を持って、人口や産業や歴史について知ろうと思うなら、ちょっとWikipediaを覗くだけでも知れることは相当多いので、僕の印象なんて何の足しにもなりません。

我が町語りの定型

さて、ここで話は飛んで(だいたいいつも飛ぶのです)、これまた別の活動で、こんなイベントの運営責任者をやっております。

岐阜県郡上八幡の無形文化財にも登録されている盆踊り「郡上おどり」を、年に一度だけ京都でやる…というイベントですが、岐阜県各地の事業者や自治体を集めた観光物産展も併催するので、イベント前になると各自治体の産業振興課とか広報課とか観光協会とかの方とやりとりをすることが割と多くあります。
最近では多くの自治体が他地域からの移住・定住の推進に力を入れているようで、そうした事業の担当者の方とお話をすることも。

先日も、行政の移住・定住事業の担当者や実際に移住した人、ローカルコミュニティーのデザインに関心のある人が集まる交流会に参加してきました。
これまでもそれ程たくさん見てきた訳ではないですが、移住をテーマに行政の担当者が自治体のプレゼンをする場合、ある種の型みたいなものがあるような気がします。あくまでまとめ的な短いプレゼンの場だからという事情はあるかと思いますが、だいたい以下のような流れ。

地理→人口→気候→産業→行政サービス→地域社会

前半の4項目はググれば大抵分かる程度のことだったりして、後半の2項目はトータルに見るとぱっと聞きではあまり地域差が感じられなかったりもします。
でも、仮に僕がその地域への移住希望者だったとして、結局のところ一番聞きたいのって、登壇者本人の生活や、その中で日々感じている実感だったりすると思います。地理や気候や産業についても、そうしたフィルターを介した話だととても面白くなる。

虫の目と鳥の目

本当に実感を持って人に伝えられることって、多分せいぜい半径数メートルの範囲で見たり感じたり実践したりしていることです。それよりも広範囲の鳥瞰的な情報に、厳密な意味で実感なんてもつことは出来ない。
それでも、そういう単位の大きなものも含めて出来るだけ実感を伴って語るためには、半径数メートルの中で得た身体的なフィードバック(虫の目)と鳥瞰的な情報群(鳥の目)を結び付ける作業が必要です。
でも、身の周りの小さなフィードバックに鈍感だったり、付け焼刃的な情報摂取しか出来なかったりすると、その接続が全然うまくできません。

僕のnoteの下書きには、実感が伴ってないくせに無理に何かを書こうとして行き詰まったり、逆に、心動かされたものについて書こうと思ったけど、周辺の知識がなさ過ぎて稚拙な感想文にしかならなかったり、そんなふうにして投げ出した文章が溜まっています。

つまるところ今回だって、「こないだ和束行ったし和束のこと何か書こー」ってとこから書き出して、「やべー書けることほぼないわ!」となって今に至るという次第なのです。

ちなみに、ビールはどちらかと言えば嫌いな飲み物ですが、和束のお茶を使った茶ビールはめっちゃ美味しい!おすすめです。
京都駅から歩いて行けるところに醸造所兼バー Kyoto Beer Lab があるので、興味のある方はぜひ!


どうもありがとうございます。 また寄ってってください。 ごきげんよう。