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トップアスリートは競技の先に何を見ているのか?【新川明子さんを取材Part3】

※新川明子さんは、プロのロードレース選手でありながら、メリックス㈱の学校給食事業部でも副責任者として活躍するマルチプレーヤー。

この記事は「新川さんが掲げるビジョン」についてまとめたインタビュー記事の第三弾です。

↓前回の記事はコチラ↓

トップアスリートに学ぶ チームワークを高めるコツとは?【新川明子さんを取材!part2】


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▲表彰台に上がる新川さん(写真右、黒ベースのスーツを着用)


はじめに

前回の記事まででは、新川さんの人柄や生活観についてお伝えしていきました。

多方面でご活躍する新川さんはどんなビジョンを持って自己研鑽を積み重ねているのでしょうか。
新川さんの今後の目標について入社2年目社員が質問しました!


将来はどんなことを目標にしている?

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---競技を通して、新川さんが今後目指しているものは何ですか?

新川:1つ目は、ロードレースの競技人口を増やしていきたいという事です。
ロードレースって男子ですらマイナー競技と言われていて、競技人口が何百人しかいないのに、女子の競技人口ってさらに少なくて…。全体で数十人しかいないんです。
そのくらい少ないから、女子では人数がそろっているチームってあまりなくて。私のいるチームは、初めてチームとして機能するくらいの人数が揃ったチームなんです。だから、特に女子の競技人口を増やして行きたいと思っています。

2つ目は、チームのために機能していって、チームとして強くなりたいという事です。
ロードレースでは各選手によって脚質があって、平坦な道で強い人と坂道で強い人がいるので大会のコースによってリーダーになる人が違うんです。大会の時には、自分がサポート側に回ったらしっかりとサポートして、自分がリーダーになったらちゃんと統率して、という風にチームのために機能していきたいと思っています。

---自分が強くというよりはチームのために機能していきたいんですね。スポーツ選手としては珍しい気がします。将来的にはチームのサポーターになるとか、そういったことまで考えているんですか?

新川:確かに、「自分が強く…」というよりは「チームのために」という考えの方が強いですね。
メリックスで働き続けているのも、ロードレースは、ケガや年齢でいつまで続けられるのかわからない面があるので、選手をやめたらどうするかという部分まで考えているからですし、競技をやめてもやりがいのある仕事を続けたいと思っているからです。

---ひたすら夢を追うというわけではなく、現実も見ながら両立されているのですね。先ほど、「競技人口を増やしていきたい」とおっしゃっていましたが、どのような方法で増やして行けると思いますか?

新川:ロードレースの競技人口が少ないのは、“会場の雰囲気が張り詰め過ぎている事”が問題だと思っています。
自転車の競技はいくつかあるのですが、その中でもシクロクロスはロードレースに比べて競技人口が多いんです。ふたつの違いは会場全体の雰囲気にあると思います。
ロードレースは選手同士がピリピリしていて、すごくプライドが高い感じで、レース中にちょっと危険なプレイがあると観客の方からブーイングがあったりするんです。対してシクロクロスは、レース中もお祭りみたいに会場が一体になって盛り上がるし、終わったら皆で和気あいあいとしてて、開場の雰囲気がとってもいいんですよね。
シクロクロスは自転車を担いで階段を登ったりして結構大変なんですけど、それでも人口が多いのは会場の雰囲気がいいからだと思います。
ロードレースにも毎年新しい選手は入ってくるんですが、やっぱり、やめる人が多いです。市民用のレースにも、実業団に入れる強さの人もいますが、実業団には中々入ってきません。
それと、女子は人数が少ないせいで階級分けもできないんです。大会では「タイムに差が開いてきたら打ち切り」というルールがあるので、不慣れな選手はせっかく出た大会でゴールテープを切れなくなってしまいます。
人が少ないから階級分けができなくて、階級分けができないから人が少ないという負の連鎖が起きているんです。
だから、まずは会場の雰囲気をもっと良くしていければいいなと思っています。

後は、“一般の人に魅力を伝えられる機会が少ない”という事ですね。
ロードレースって基本的には公道で行うので、無料で見れるからお客さんが入りやすいレースのはずなのですが、ドクターヘリや救急車が必要になるくらいの大ケガをすることもあるので、事故が多くて危ないという悪いイメージがついてしまって、近所の方から自粛を求められてしまって、あまり公道ででできなくなってしまっているんですよね。
もっと魅力を伝えていって、一般の人にも広く親しまれるような競技にしていきたいです。

---いろいろな課題を含め、「ロードレースの競技人口を増やしていきたい」という新川さんの想いが伝わってきました。私も一般の方にも広く親しんでもらえるように微力ながらお手伝いしたいと思います!ありがとうございました。


まとめ

新川さんとお話しして感じたことは、本当にロードレースを愛しているんだなという事でした。

「自分が強くなりたい。」とか、「優勝したい。」というだけでなく、いろんな人にロードレースの楽しさを知ってもらって、観戦する人も、競技をする人も多くなると良いなという新川さんの想いは、新川さんがロードレースを始めたきっかけである「自分の足で、人力で、こんなにも速く走れるのか」という感動が元になって、それを伝えていきたいと考えているからなのではないでしょうか。

今後も注目して、応援していきたいです!


取材・文 平井龍大朗

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