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桑田佳祐「さすらいのRIDER」歌詞を読む

9月15日発売の桑田佳祐さんの新作EP(ミニアルバム)『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』 (タイトルが…長い!!)

2曲目に収録の「さすらいのRIDER」が先日のラジオ「やさしい夜遊び」で初披露された。

ユニクロCM曲「Soulコブラツイスト~魂の悶絶」
SUBARU 新型「フォレスター」のTVCM曲「炎の聖歌隊 [Choir(クワイア)]」は爽やかで明るいポップな曲だが、
こちらの「さすらいのRIDER」は埃っぽい道を大型バイクで走る男臭さのある大人の歌。

歌詞に描かれる世界は映画のワンシーンを想起させる。

時刻はまだ暗い早朝、夜明け前。
外では強い雨が降っているようだ。
昨夜、情を交わした女がまだ眠っているベッドを抜け出し、男は朝のコーヒーを淹れようと薬缶(やかん)を火にかける。

「湯呑み茶碗を一つ」彼は戸棚から取り出す。
夜明けのコーヒーを二人で飲む…とかじゃないのだ。
まだ眠る女に対して、男は既に起き、次への支度を整えている。
しかも、女を起こさず眠らせておこうとしている。
気遣いや優しさと言うより、女が眠っている間にスルリと姿を消そうとしているのだ。

ポット、カップではなく、
薬缶、湯呑み茶碗と無骨な言葉を使う。

この部屋はどこなのか。

歌い込まれる「ガンボ」という単語がヒントになる。
彼は彼女と束の間愛し合い、得た安らぎをガンボと表現している。

ガンボとは、アメリカ ルイジアナのシチューだそうだ。
旨味たっぷり、野菜も煮込んだシチューを米にかけてかき込む。
そんな家庭的な田舎料理の温かさを彼女に感じたのだ。

そう、ここはアメリカ。片田舎の道路沿い、とあるモーテルの一室。

彼はさすらい、旅する男。
コーヒーを飲み終えたら、彼女を置いてここを去って行く。

…何となくカッコイイが…
これはいわゆる…“やり逃げ”として今のご時世では一番非難され、無責任を問われ槍玉に上げられるやつだ。
そこを敢えて歌にするのが…ロックだよなぁ!

女に産み育てよ、と言っているのに自分は去っていく。
「幸せになるがいい」と彼女の人生を祈りつつ…。

いや、でもね〜。
昔の映画とかでは、こういう価値観は普通だった。非難されることはなかった。カッコ良かった。

この曲は、そういう前時代の背景を借りて、男の理想を描いている。
だから、小道具として“薬缶”や“湯呑み茶碗”を配しているのだ。

この歌詞世界と似た曲として「恋の大泥棒」(桑田佳祐 アルバム「MUSICMAN」収録)が思い浮かぶ。

↓公式サイト 全歌詞&試聴あり


こちらもイントロから大変、時代がかった大仰な曲で、昔の映画の世界を感じさせる作りになっている。

行きずりの恋をして去っていくのは同じだが、「恋の大泥棒」では男が未練を見せている。
そして格好をつけて、女性を渡り歩く男の内面はうら寂しい空虚なものだと締めくくっている。

今回の「さすらいのRIDER」の男はその点、クールだ。
泥棒のように逃げるのではなく、
「地球が丸いなら」また会えると、縁があれば再会の可能性も残す。

桑田さんは無責任な恋愛を推奨しているわけではない。
事実、桑田さん自身が結婚生活を長く順調に過ごしている。
桑田さんの近年の曲に

「最近はエロが足んねぇ Why?」(桑田佳祐「ヨシ子さん」

と歌い込まれるのは、恋愛の自由度やエロティックの表現、コンプライアンス等々のアウト判定が厳しくなり過ぎている、と偏りを感じているからではないかと思う。
そのバランスを取り戻したほうが、世の中明るく、楽しく、幸せになるんじゃない?そう思わない?というメッセージを感じる。

※追記 2021/09/18
桑田さんのインタビュー記事に昨今のコンプライアンスの厳しさに「これ大丈夫かなお化け」になってるとあり…!

※追記1
桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」大阪公演にてこの曲を歌う前に桑田さんが
「こんな男に憧れる気持ちがある」
(記憶により正確ではありません。ニュアンスを感じてください。)
と曲紹介していました。

明るく盛り上がるCMタイアップ曲のカップリングには、クセの強い曲が必ず入る。
もう一曲の「鬼灯(ほおずき)」はきっと更に…癖がありそうで発表が楽しみ…!

※追記2
鬼灯ほおずき」…予想を気持ち良く裏切ってくれる名曲だった…!!

ごはんEPは名曲揃い!!

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