歌詞を読む【読解】桑田佳祐 新曲「金目鯛の煮つけ」 34 める 2020年8月29日 01:14 SOMPOグループ× 桑田佳祐 新テレビCM「腕まくり」篇http://www2.sompo-hd.com/company/kk/で流れる桑田さんの新曲「金目鯛の煮つけ」。先週のラジオ「やさしい夜遊び」で初オンエア&歌詞披露された。歌詞はサザン公式サイトhttp://southernallstars.jp/mob/pageShw.php?site=SASJP&cd=kinmedai(←ここ)で公開されている。オンエア前に桑田さんが「大した曲じゃないんです」とずいぶん謙遜されていた。自分の中では小作品といった気持ちなのか、それともいつもの照れ隠しか…。実際に聴いてみて…ものすごく良い曲…!穏やかながらも力強く、コロナ渦の中にある今の世の空気にとても馴染む。この曲は桑田さんの作品としてこれまでにない新しい感覚、視点が全編を通じて見られ、とても興味深い。歌の中の主人公は、30代くらいのサラリーマン男性。郊外に住み、既婚。妻は妊娠中。時刻は夕暮れ。満員電車の車中。仕事に疲れ、嫌なことつらいことも色々あったようだが、「俯かないで家へ帰ろう」と歌っている。「悲しみを迎えに行くのは止めたよ」この一節は桑田さんの歌詞として、とても新しい。サザン、桑田作品(特に初期)の多くの曲の中核になるテーマは未練、後悔、慕情であり、女々しささえも隠さない歌詞が人々の心の奥深くに突き刺さる。(ファンは他にもいろんな名曲があるのを知っているけど)10年くらい前から桑田さんの歌詞世界は大きく変化してきている。ご両親やお姉様を亡くされたり、ご自身もご病気をされたつらい経験が、桑田さんの血肉となっているのだと思う。「明日は笑顔でいるために」必要以上に落ち込んだり、ネガティブになったりはしないでいよう。そのほうが幸せでいられる。とても健康的な思考で、地に足のついたしっかりとした人物像が見える。2番の冒頭で、彼に子どもができることが示される。守るべきものが増えた。より良い未来にしていかねば。生まれ来る子らのためにも。金目鯛は曲のタイトルにもなっているキーワード。「甘辛く煮た金目鯛」ちょっと贅沢で、だけど誰もが好む甘辛味。箸で身をほぐせば、ホロリ。滋味あふれる、ホッとするような煮つけ。温かな食卓の光景が広がる。何気ない一日の、家族で囲む夕食。この当たり前の風景こそが人生の幸せ。金目鯛というワードにこれらの全てを集約させた。日本人ならわかるもの。金目鯛の煮つけの味が。次に奥さんへの感謝の言葉がある。「麗しいあなた」と妻を呼ぶ。奥さんを麗しいとは、通常なかなか言わない。しかし、麗しいと表現することで、きれいな奥さんの姿をイメージできるし、夫婦共にお互いを敬い合っている良い関係性であることも伝わってくる。「シャボン玉」は、いつ何が起こるかわからない世の中を漂う心許なさを上手く表している。その後に「さ迷い トンネル抜け出して」と続くが、この部分は、その困難さをも楽しんで歩く朗らかな調子で歌唱されている。1番で「何処かで失くした」と歌った「夢も希望も胸の奥で燃えている」と芯の強さを見せる。誰にも言わない、見せない、彼の心のうちに、色々思うところも計画もあるようだ。そして…ここまでこの歌を聴いてきた我々にも、そういう、普段は見せない、そして自分自身も忘れかけていたような「夢も希望も」あることに気付く。小さな炎が揺らめく。そして最後にもう一度、「悲しみを迎えに行くのは止めたよ」と、くよくよと悩み過ぎたり、マイナス思考は、もうしないと言う。「止めよう」ではなく、「止めたよ」。あくまでも、主語は自分の個人的なスタイル。高らかな宣言でもない。しかし、このキッパリとした言葉は聞き手の胸へストレートに届く。更に追い打ちをラストにかけてくる。「今宵は月さえついて来る」万事上手くいくさ!だって、月(ツキ)も味方についてくれている。このような満ち足りた男を歌った曲が桑田作品にあっただろうか?とてもとても少ない。そして、この最後の一節は聞き手への応援、励ましにも聴こえる。がんばってほしい人へ「がんばれ!」と声援を送ることさえ気遣うこの頃。この曲は絶妙なコントロールで球を投げてくる。この球は桑田さんでなければ投げられない。そして、より良い人生とはどういうものかを歌うこの曲は保険会社のCM曲としても素晴らしい。更に数年後、CM曲だったことを忘れて聴いても心にしみるだろう。*********私のブログ「夢で逢えたら…」http://merusas.seesaa.net に同じ記事があります いいなと思ったら応援しよう! 最後まで読んでくださって、ありがとうございます…! 「おもしろかったよ~」って思っていただけたら、ハートマークの「スキ」を押してみてくださいね。 コメントもお気軽に! チップで応援する #音楽 #歌詞考察 #桑田佳祐 #サザン #金目鯛の煮つけ 34