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サザンオールスターズ「逢いたくなった時に君はここにいない」歌詞を味わう

ラッキーストライクさんからのリクエストで今回はこの曲を。

(※サザンの歌詞について考えるのが趣味な私なので、リクエスト募集しております~)

アルバム「SOUTHERN ALL STARS」(1990年)の最後に入っている

「逢いたくなった時に君はここにいない」はタイトル通り、失恋の悲しみを切なく歌う一曲。

※全歌詞はサザン公式サイトに掲載されています。

桑田さんが描く失恋の風景は、ほとんどの曲において同一だ。

彼女からの突然の別れ。

自分にとっては青天の霹靂。恋に浮かれ舞っていた天国から、どん底の地獄へ突き落される。

彼女には既に新しい相手もいるようで、今更全く相手にもされず、言い訳の機会もなく、復縁は絶望的…。

彼女が嫌がることをしてしまったかもしれないという心当たりもあるが、それは彼にとってはほんの冗談の悪ふざけで二人の仲なら許されるだろうと高をくくっていた。

だから、「え?ちょっと待ってよ~!そんなつもりじゃ…」と焦り、後悔にうなだれ未練を募らせる。

ほんの少し前まで、見つめ合って微笑んでくれていた彼女なのに…。

この曲の歌詞は、感情をストレートに吐露したもので、聴いていて意味がとてもよく伝わり、共感できる。

ただ、二か所、意味を取りづらいと話題にのぼる部分がある。

一つは、冒頭の

♪昨日までの喜びが悲しみに変わるよ

♪あんなに空が丸く見えるこの頃なのに

の「空が丸く見える」。

「丸く」とは、

「丸く収める」のように、「何事もなく、平穏無事に」の意味がある。

自分以外の世間は、何も変わらずいつも通り楽しげなのに、

自分だけが世界が一変してしまった。

悲しみで胸が穏やか(丸く)でなく、ギザギザに尖って、痛い。

或いは…

空に丸く見えるのは月。

欠けるところなく満ちて輝く満月が出ているというのに、自分の心は彼女の存在を失ってボロボロにえぐれている…。

もう一つの箇所は

♪一番身近な相手を

♪他人の目の中でうぬぼれてた

恋人である自分が一番、彼女のそばにいたはずなのに、

自分しか知らない彼女の顔も知っていたはずなのに、

皆の憧れの的、美しい彼女を手に入れた自分に酔っていい気になってしまい、

彼女自身を、二人の関係を大切にすることができなかった。

そのことを彼はとても悔いている。

♪噂の後に割れた絆を

とあるので、やはり何らかの誤解と言うか行き違いがあって、結局、修復不可能な関係になっている。

彼の弁明、釈明の言葉は全て言い訳の独り言…。

彼女はもう聞く耳も持たない。

♪目の前に好きな女性がいればなおさら辛い

桑田さんの奥さま原由子さんの著書「娘心にブルースを」によると、(桑田さん自身もラジオ等で何度か話されているが)

大学時代、桑田さんは大学中の人が知るほど、ある女の子に一途に猛アタックしていた。

ところが結局その女の子は、ヘッドライナーのメンバーと付き合い始めてしまったのだった。 (「娘心にブルースを」102ページに記述)

青学の音楽クラブ「ベターデイズ」に桑田さんや原さんが所属していたのは有名な話。
それぞれバンド活動をしていたその頃、原さんがキーボードとして掛け持ちでやっていたバンドがヘッドライナー。
メンバーは体が細く、髪の長いビジュアル系の男の子4人と原さんだったらしい。

同じベターデイズの仲間内でのことなのだ。
学生時代なら、よくある話ではあるのだが…。

そして、桑田さんは
「原さん、一緒にブルースやろうぜ!」と、その彼女の家にヘッドライナーのメンバーが集まっている時、原さん宛に電話をかけてきて口説く。

当時は家の電話しかない時代。
元カノの家電にわざわざかけてきて、
「君じゃない。原さんいるでしょ?出して。」って言うってのは…
これは、ほんと意地を感じますねぇ〜…

しかし、このことによってサザンオールスターズの前身「青学ドミノス」が生まれ、今に繋がるのだから、若い日の痛い経験も大きな財産…!

桑田さんの書いた帯に
「はからずも暴露本」とあるけど、
一番そばで見てきた原さんしか知り得ない話が多く、貴重な一冊。

※コメント欄に、ラッキーストライクさんが男性目線からの秀逸な歌詞考察を書いてくださっています。
ぜひ、ご一読を…! 

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