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投資銀行とFASの緩い比較②(FASの良いところ)

 こんにちは、めるです。
 本日は、前回noteからの続編として、投資銀行と比較したときのFASの良いところを紹介してまいります。内容はBig4 FASを念頭に記載しておりますが会社によって違いはあるかと思いますので、あくまでも参考程度の内容ととらえていただければ幸いです。

FASの良いところ(組織面・制度面)

①働き方に裁量が認められている

 上記のツイートでも触れておりますが、FASにおいて特に素晴らしい点はやはり働き方に柔軟性が認められていることです。日系IBもコロナの影響で一時は在宅勤務を取り入れたが情報管理の観点などから結局はオフィス出社に戻していると聞いております。

 一方で、FASは多くの会社で引き続きリモートワークを取り入れており、フルリモートかどうかは会社によりますが、少なくとも日系IBよりかなり裁量があると感じております。
 それを証拠に、ご結婚やご出産などのライフイベントを背景にこれまでの働き方を見直して日系IBからFASに転職を検討される方も一定数おります。逆に、実力的にはFASから日系IBに転職することが可能で年収がアップすることも分かっているが、現状の働き方を手放したくないためにFASで働き続けることを選択する方もいらっしゃいます(もちろん、クライアントMTGや往訪があればスーツ着装や出社の必要性が出てきますが)。

②(日系IB対比で)異動リスクや配属リスクが比較的低い

 現場の声や評価は十二分に考慮されているとはいえ、日系IB(というより日系証券会社)では基本的に配属や移動などの人事権は人事部にあり、ある日突然、上長や自分にとって思いもよらない辞令が言い渡される…なんていうのも珍しくありません。

 一方で、FASは人事権に関しては基本的にフロントチームにあり、フロントチームが感知しない人事異動というのはありません(少なくとも私は存じ上げません)。また、会社によっては入社後一定期間用意されているローテーション期間を除けば、そもそも部署に本配属された後は異動というものが組織設計として考えられておらず、本配属後に別部署に異動させられる…というのも一部の例外を除いてはありません。
 
 このような点を踏まえると、少なくともスタッフレイヤーにおいては、FASは日系IBより配属リスクや異動リスクが限定的なため比較的キャリア設計をしやすい環境にあると言えます。

③サービスライン間の垣根が低い

 日系IBは情報管理の観点から部署ごとのやり取りを制限しており、仕事上の付き合いや同期の繋がりなどがなければ他チームと交流を持つことは限られております。

 一方で、FASに関して言うと、部署間毎のやり取りを日系IB程には厳密には統制しておらず、サービスラインやセクター関係なく人材交流は行いやすい状況です。そのため、コンサルチームやFDDチームなど、チームに拠らず個人的な関係性を築いて独立をされた後にその人脈を活かしている方々も見受けられます(かく言う私も、案件で一緒になった他サービスラインの方々とは定期的にランチを共にして情報交換するなどして交流を個人的に深めています)。また、FAチームは金融関連のキャリアを持っている方々が太宗ですが、特にコンサルチームには異色の経歴を持つ方々も多数おり、そのような方達と個人的に飲みに行ったりすると新しい発見があり、かなり刺激的な経験になります。
 
 このように、サービスライン間の垣根が低いことで人材交流を行いやすい環境にあるのは、FASの隠れた魅力の一つと考えております。

④ドライな人間関係

 先日も日系IBのお土産文化に触れましたが、リテール部門や(銀行系証券であれば)銀行の影響からか、日系IBはどちらかというとウェットな人間関係の部署の方が割合多いと感じています。

 一方で、FASは基本的に職場はドライな人間関係で、案件が終わった後のチーム打ち上げや会食がある程度でそれ以外のオフィシャルな飲み会はなく、あったとしても出席は強制されず欠席しても評価に特に影響しません。
 
 もちろん、ウェットな人間関係が好きという方もいらっしゃるかと思いますが、周りを見ているとそういったドライな人間関係を好かれている方はM&Aアドバイザーの方に多いと感じておりますので、あえてFASの良いところとして取り上げました。

⑤ハラスメントに対する感度の高さ

 FASでは全体的にハラスメントに対しては厳しいスタンスで臨んでおり、当方が直接確認できる範囲ではパワハラやセクハラなどのハラスメント行為は確認できず、他会社や他部署でもハラスメント事案には厳粛に対処していると伝え聞いております。

 当方が在籍していた日系IBの部署は体育会気質が強く、FASだとかなり微妙なハラスメント行為も程度の差こそあれど多少は黙認されておりました。また、ハラスメント相談室も設置はされておりましたが、それが機能している例を終ぞ確認できず、会社全体としてハラスメントに対して厳しいスタンスで臨もうという雰囲気は感じられませんでした(もちろん、ハラスメント研修は用意されており、対外的にハラスメントに対して厳しく対処することは公表しておりましたが)。

 そのため、現職の雰囲気は入社当初はとても新鮮であり、かつ私個人にはとても好ましいものでした。

FASの良いところ(M&Aアドバイザー業務の観点)

⑥チームメンバーが限られているため経験できる業務範囲が広い

 これは既に広く知られた話ではありますが、日系IBは案件が大きい分一つの案件に複数のメンバーをアサインするため、担当業務が細切れになってしまう点を指摘されています。

 一方で、FASはそもそも人数をそこまで抱えてはおらず、基本的に国内の中規模案件(~100億円)程度であればP/MDを除くと3-5名で回します。そのため、細切れにするほどの余力もなく、(担当者としては幸いなことに)結果的に網羅的な経験を得ることができます。
 
 無論、網羅的な経験を得られると言っても結局は中規模案件までなので得られる経験にも限度はあります。とは言え、M&Aアドバイザーとしての足腰を鍛える分には中規模案件の執行経験を網羅的に積むことも将来的には十分役立つと思うため、こちらに記載させていただきました。 

⑦アサイン案件に(ある程度)希望が出せる

  日系IB M&Aチームの場合、基本的には部署のマネジメントクラスやアサイン担当が決めた割り当て案件にアサインされる形が主流で、アサイン案件に希望は出せない、もしくは出せても一応考慮される程度と認識しております。

 一方で、FAS FAチームはそもそもが投資銀行ほど明確なトップダウンではないため、割とアサイン希望は出しやすい環境にあります(もちろん例外もありますが)。実際、当方もFAS入社1年後にどうしても関与したい案件があり、アサイン担当に打診したうえで同僚とアサインに関して融通しあうことで調整して最終的に当該案件に無事アサインしてもらうことができました。

⑧(日系IBと比較すると)自分の所属チーム以外の仕事にもチャレンジしやすい

  日系IB M&Aチームの場合、当然ながらM&Aの案件執行を担う部署であるためFA業務およびその関連業務を主業務とします。そしてウォールが引かれているため、M&Aチームに在籍中は他チームの業務(極端な例で、ECM業務やDCMなどのキャピマ業務)には関与することはできません。

 一方で、FAS FAチームの場合もM&Aの案件執行を担う部署であるためFA業務が主業務となりその点は日系IBと変わりません。しかしながら、前述のとおりサービスラインの垣根が低いことも影響してか、現場レベルでは割とサービスライン間での人の融通が行われており、コンサルやVAL主担当のスタッフがFA業務を一時担当する例を直接拝見しております。また、当方を例に挙げても、所属はFAチームなのでFA業務とVAL業務は当然行うのですが、それ以外にも希望して他業務を担当させていただいたことがあります。

 FA業務だけを経験したい人にとってはあまり必要ないことかもしれませんが、FA業務をやっているとFDDレポートやBDDレポートがどのように作られるのかなどを知っておくことは有益なので、幅広い業務にチャレンジできることをメリットの一つとして取り上げました(もちろん、会社やチームの事情次第ではこのようなチャレンジができない可能性もあるので、この点はご留意ください)。

まとめ

 二回にわたって投資銀行(日系IB)とFASの良いところを書いてみましたがいかがでしたでしょうか?

 日系IBとFASは近しい業界であるため、ともすれば内情もほとんど変わらないと思いがちですが、仕事はともかくカルチャーは少なくない点で異なる業界です。入社してくる新人の方を見ても、「この人はFASに合いそうだ」と思った人は自分のやりたい分野でぐんぐん成長する傾向にあり、そのような人を見ると個人的にはとてもうれしく感じます(なお、当方は日系IBとFASはそれぞれに善し悪しがあると考えており、前提も考えずに「どちらに入社すべき」というポジションは取らない姿勢を原則的には取っております)。

 ブランド価値やキャリアとしての箔という点も大事ですが、是非それ以外の点も考慮したうえでキャリアをご検討いただければ幸いです。そして、公表した一連のnoteがその一助になれば望外の喜びでございます。


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