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第6話

ウネメの前に立ちはだかったサギ。
月夜に照らされた顔は美しくもどこか不気味さを感じさせた。「ウネメさんの実力は相当だと聞いてます。」にっこり微笑んだ頬にえくぼができる。「鳳と対等でもおかしくないと、盆さんが言ってました。そんな方と闘えるなんて、僕はいま無性にわくわくしてます。」笑いながらも目は仄暗く光っているサギ相手にウネメは強烈な気を感じていた。(さて、どうしたもんか。こいつの隙を探すのは難しそうね。)ウネメは考えていた。全身から放たれる気にはまるで隙がない。「ウネメさんて、前回はリタイアしたんですよね?噂になってましたよ。あれ?なんだか僕ばかり話してますね。すみません、興奮して口数が多くなってます。」ヘラヘラと話してるかと思いきや瞬時に移動するサギ。(来る!)強烈な一撃がウネメを襲う。交わしたウネメに「さすが、」サギはあらたに攻撃を仕掛ける。二度三度と、距離を縮めながら詰め寄るサギにウネメは両手で交わすと筋肉の拡張を始めた。「あんた本当に花形?」ウネメは先程から感じていた疑問を口にするやいなや、強烈な蹴りで辺りを吹き飛ばす。「いまは、花形ですよ。今日で鳳になる予定ですけどね。」そう微笑むと殺気が強まる。「さぁ、本気で来てください。」構えながら余裕の表情だ。ウネメは高く飛び木の上までのぼった。「あ?」サギが見上げた。木から木へ、ウネメは遠のく。「はは、まさか逃げ出した?」追いかけるサギ。後から追いついてきたサギがウネメに襲いかかる。下へ吹き飛ばされたウネメは起き上がると血を吐き出し、サギと対峙した。「はは、逃げることもあるんですか?」サギを見つめたまま、ウネメは密かに場所を変えた作戦に出ていた。この場所には大きな池がある。水はウネメにとって圧倒的に有利だった。この闘いは憑依化を避けられないだろう。相手が強すぎる。幸いにもウネメの憑依の秘密に相手は気付いていない。「さぁ、いきますよ。」先程とは比べ物にならない気で一気に攻めてくる。ウネメは全身の筋肉を拡張させ、応戦の準備に入った。(ギリギリ交わしてるけど、体力がある今のうちに憑依しないとまずいわね。)サギは見た目からは想像つかないほどのパワーと素早さを持ち合わせていた。かがみながら一瞬のうちにウネメの懐に入り込んだ(しまった!)体をおもいきり反転させギリギリ交わしたウネメ。「さすが!今の攻撃を交わせるとは。」目をキラキラさせ嬉しそうなサギ相手に「このクソ野郎!」キレたウネメは気を爆発させた。一気にサギへ加速し、強烈な蹴りを出すが両手で交わされる。五分五分だ。辺りは煙にまみれ、静まり返った。2人を包む空気が変わる。妙に静まり返った雰囲気を打ち破ったのはサギだった。「ラチがあきませんね。」ウネメは静かに佇んでいた。ニヤリと微笑んだサギは異常なくらいの気を発しながら憑依化をした。みるみるうちに目が豹変し爪が伸びる。静かに歩きながらウネメの方へ向かってくるその様はまるで神獣のような鳥の姿だった。ピキピキと空気が張り詰める中、ウネメは来るであろう時を予測していたかのように瞳を逸らさずにサギを見つめた。(来るー!)先程とはまるで違う威力の一撃に吹っ飛んだウネメは、起き上がると口からは血が出ていた。「なぜ憑依化をしないんですか?」淡々と話すサギを相手にウネメは何とか持ち堪えようとしていた。(今憑依化をするのはまずい。)昨日の打撃の蓄積で体が悲鳴をあげていた。いま憑依化をすると体中に鱗が出来始めてしまうだろう。(1分でもなんとか時間を稼ぐしかない。)次々に仕掛けられた攻撃を交わしながら確実にダメージを受けていたウネメは水場へ向かう。万が一、憑依化をしても水があれば憑依することで体が飲み込まれていく速度が落とせる。今のウネメにとって憑依化はあまりにも体への負担が大きすぎた。そうとは言え、目の前のサギ相手では憑依化せずにはいられない。最後の強烈な一撃を受けたウネメは水場へ吹き飛ばされた。かろうじて意識はあるが、全身ダメージを受けている。意識が飛びそうな中、ウネメは不思議な感覚に包まれていた。「っは、頑なに憑依化しない理由でもあるのか。強情な人だ。」サギは毅然としてウネメを見下ろす。「いや、できないのか。逆に。」微笑むサギを相手に静止したままのウネメ。サギが一歩踏み出した瞬間、強烈な殺気を感じる。大きな音を立て、突然目の前に現れたのは1人の奇妙な男だった。「誰だ?」サギが言うやいなや、男は突然攻撃をしかけた。気が狂ったように次々と攻撃をしかけ、明らかに異様な様子だ。「お前、何者だ!?」サギは攻撃を受けながら男に問いかけた。「ああ、シャバの空気はいいなぁ。俺はモンドウ。お前、邪魔だ。」そういうと、モンドウは容赦なく攻撃を仕掛けた。かなりの強者であるとサギは瞬時に感じ取っていた。また、この男はそれだけではない危うさがあった。狂気的な気だ。強烈な覇気で二人が闘い続けるなか、意識が戻ったウネメは男を見た。「何者?」明らかに様子がおかしい。「いたた、」脇腹を抑えながら見るとかなりの出血だ。どうやら先ほど吹き飛ばされた時の衝撃でぶつけたらしい。「あいつ、やるわね。」サギを見た。その瞬間、ウネメに気付いたモンドウがニヤリと笑った。「なるほどね。」ウネメは思った。狙いは自分だと。方向転換し、ウネメをめがけてモンドウが攻撃をしかける。ウネメは筋肉を拡張させ、防御しながら応戦した。「なんだ、こいつは。」サギが不思議な顔をしている。そう、相手の目的はウネメだ。他に見向きもしない。ドクン!ウネメは自分の体が先ほどからおかしいと感じていた。サギに吹き飛ばされ、倒れた時からだ。ドクン、ドクン、と体中が音を立てる。そんな中、モンドウが急激に気を集め始めた。すると、おびただしい数のキトリたちが集まり、それらを口から吸収し始めた。「なに?!」大量のキトリを吸い込んだモンドウは、先程とは明らかに違う様子で目をぎらつかせながら不気味に立っていた。 
6話完


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