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喰わず嫌いしたら損するマンガ

昔、外国人のアニメオタクに
「日本の漫画ってとにかくジャンルが多い!」
と言われました。

確かに日本の漫画は
様々な文化や職業、趣味、スポーツなどなど
色とりどりのテーマを漫画にしている。


なんちゅー豊かな国なんだ!


でもそういう漫画って
そのジャンル好きだけが
楽しめるコンテンツになりがちで
手に取りづらい。。。


だが、しかし!
その中でも「漫画好き」も
グッとくるような漫画もたくさんある!

読んでないのがもったいない!



というわけで
そういう漫画をちょっと紹介します。


①私の息子が異世界転生したっぽい / かねもと


はい。でました。
「異世界転生モノ」です。
これ系って自分には関係ないと思って
思わず喰わず嫌いしちゃいますよね。


でも違うんです。
このマンガは、
それらとは一線を画した設定なんです。

まず、

主人公の女性が
「私の息子が異世界転生したっぽい」
同級生のオタクに相談するところから
物語が始まります。


これつまり、
異世界転生された側のお話なんです。

冴えない独身オタクが
息子を亡くした美人妻と
息子がどの異世界に転生されたかを
いっしょに探す物語なんです。

異世界転生モノを知らない人も
ご安心してください。
このマンガで
若者がよく言う「転生」「なろう系」
のことがよくわかるようになります。

ボクが「へえ」となったのは、
「転生」と「転移」は意味が違うということ。

「転生」は、実世界で死んで、別の人間や世界に生まれ変わること。
「転移」は、生きたまま異世界に行くこと。

らしいです。
つまり、『JIN』や『漂流教室』は
転生モノではないんですねー。

それで、異世界転生モノの多くは
転生した異世界先で
主人公が無双状態になって
活躍をする話が多いのですが、

この話は、
大切な息子が転生した(っぽい)ことで
取り残された母親の話なんですね。

つまりそこには、
異世界転生のような夢物語はなく
現実だけが突きつけられていくんですね。




この物語のメタ構造が生まれたきっかけは
転生モノが好きだった作者自身が
「親」になったことかららしいです。


自分の息子が死んで転生したら
取り残された人たちはどうなるんだろう。



という親目線から着想したそうです。

取り残された人の話・・・・
まさに『葬送のフリーレン』と同じテーマです。

取り残された人たちの悲しみを描きつつ、
僕たちにとって
創作の世界とは一体何なのか
までを深く描いています!

なので、ジャンルマンガというよりも、
純文学としても楽しめる漫画なので、
読み応えは保証します!
amazonで99円で読めます!


②スケッチー / マキヒロチ

ボクみたいな文化系の人間からしたら、
板の上に乗って滑る行為の何が面白い?!
ケガするだけだし、
何の対価もないし、
と、スケボーを完全軽視してました。

スケッチー読めばわかりますけど、


今まで本当にすみませんでした!


って気持ちになります。

スケッチーは、
人生に悩める女性たちが
スケボーを始めるガールズストーリーです。
いわゆる女性コミュニティ系です。

スケボーって、
ガチのストリートカルチャーで
僕らみたいな温室育ちの
インドアオタクにとっては
相反した文化じゃないですか。

でもマキヒロチ先生は彼らのカルチャーを
ちゃんと大衆マンガに昇華してるんですよ。

スケボーのイメージで連想するような
「悪ガキ」「危ない」「治安が悪い」
みたいなものは一切ありません!


だって、主人公たちはちゃんと
スケボーパークで滑ってます。


じゃあ女の子がスケボーして
きゃっきゃしてることが
シズルのマンガなの?
というと、
そうでもないのです。

スケッチーは
スケボーの楽しさやかっこよさ、
伝統と文化、
そしてコミュニティー感を
現代の視点でちゃんと描いていて、
で、ドラマティックなんです!

特にスケボーの文化が
どうやって形成されていて
どうやって社会と関わっているかが
緻密に描かれててすごい取材能力!


マキヒロチ先生の代表作は
『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』
なんですけど、
はっきり言って同じ作者?!
と目を疑うほどチャレンジしてる感じ。

でもよく考えると
町は人で形成されて、
人々によって町に文化が生まれていく。
この立体的な「町感」を
マンガの世界で築いていけるのは
やはりこの作家らしい
アプローチだと思いました。


マンガで興味なかった文化に触れられるって
本当ステキなことですよね。
なので、

スケボーを喰わず嫌いしてる方に
是非オススメ!

③ハイパーインフレーション / 住吉九

最後にジャンプから一作。
今ジャンププラスで絶賛連載中の
『ハイパーインフレーション』。


タイトルとキーヴィジュアルから察する通り、
お金のマンガです。


主人公は偽札を好きなだけ
製造する能力を神から与えられて
奴隷となった姉を救う話。


このマンガ、一言で言うと、

相当クセが強い

です。

『チェンソーマン』の藤本タツキ先生の
デビュー作『ファイヤーパンチ』の
衝撃に匹敵するクセの強さ。

第一話を読んだとき、
「あれ?俺は今何を食べてるんだろう?」
と噛んでも噛んでも
何の味かがわからないような
不思議な世界観に包まれます。
(そして中毒になります)


ストーリーは常に
僕らの斜め上の展開に行き、
とにかく物語の続きが読みたくなる
お話の推進力と台詞のセンス
このマンガの最大の魅力と言っていいです。

主人公を窮地に追い込んだり、
圧倒的に不利な状況にする演出、
それがとてもうまくて、

「いや、これどうやって解決するのよ」

と、その次の展開を期待しつつ、

「さすがに打開策思いつかんだろう」

と思ってたら
さらに斜め上の展開にいくので
もう発想力に脱帽します。


先ほど最大の魅力はこれと豪語しましたが
本当の最大の魅力は
まさに「ハッタリ」なんです。

頭脳バトル・・・
しかも倫理としても醜い頭脳バトルが秀逸!

人の欲望と欲望の戦い。


そして、AとBの道筋を用意して、
Cに向かう作者の意地悪さというかトンチ。

でもこのマンガ、
滅茶苦茶なことやってるようにみえて
ちゃんと登場人物の目的を明確に描いてるので
読者はハッタリ合戦をドキドキしながら
楽しめるんですね。

ようは一休さんみたいなものです。

そして毎週、
トンチの効いたハッタリを楽しめるから
ハイパフォーマンスなんですよ。

作家は住吉九先生。

この作品がデビュー作になるんですが、
もともとジャンプルーキーで
『ヴァルハラ戦記』という
読み切りを掲載していました。

この作品には
「ハッタリ」バトル要素はないのですが
世界観を作るのがうまくて
その才能を買われたんでしょうね。

いやーしかし、
ここから『ハイパーインフレーション』を
描くような作家に変貌させた
ジャンプ編集部の手腕!
まさに驚きと感謝!

絵に癖がある分、
手を出しにくい作品ですが、
騙されたと思って読んでみてください。

『ヒストリエ』、『チェンソーマン』、
『進撃の巨人』が好きな方にはオススメ。

以上!

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