百葉

カフェをオープンしました。 カフェにまつわる純愛小説「お花がほしいのです」に続いて「ひ…

百葉

カフェをオープンしました。 カフェにまつわる純愛小説「お花がほしいのです」に続いて「ひまわりの約束」を書きました。

最近の記事

ひまわりの約束

Promessa del Girasole ひまわりは、いつも太陽のほうをを向いて咲いている。朝日が昇れば東を。夕日が沈む頃には西を。 イタリア語で「ひまわりの約束」という意味の古いカフェが下町にある。オーナーの不動産会社社長が、後妻の陽子ために洋装店だった店を買取り、改装したのが始まりだった。それから40年経った今、オーナーもカフェの店主も代がわりしている。当時学生だった常連客ももう60歳前後になり、店も相当古びてきた。しかし、先代のコレクションである、イタリアの

    • 未来という船

      20年閉めていたカフェを再開した。20年間ずっと守っていたこと、それは食べ物の味を感じ続けることだった。有機質に富んだ土で作られた米や野菜、国産小麦粉、平飼い卵、グラスフェッドの牛乳やバターなどは、素材そのものが「美味しい」ので、化学調味料を使わず、薄味で料理を作ることができる。 私には子供はいない。子どもがいたら、人参やピーマンをどんなふうに工夫して食べさせるだろうか?私もそれらの野菜が嫌いな子どもだったが、大人になって自分で料理を作るうちに食べられるようになった。 私

      • お花が欲しいのです

        智子のカフェ 智子はビジネス街と住宅街の間にある小さなカフェ「アロマティカス」を切り盛りしている。センスのいい植え込みのある外観と昭和レトロな内装、手作りの家庭的なメニューは、ビジネスマンにも住宅街の奥様方にも人気があって、そこそこ繁盛している。このカフェのオーナーは、中堅ゼネコンの社長だ。 社長は10年前に妻を亡くし、未だ再婚せずにいる。智子の夫は建設会社の現場監督をしていたが、ある台風の夜、建設中のビルの様子を見に行って転落し、身体障害を負った。45歳で要介護5の認定

      ひまわりの約束