無花果
遠い夏
太陽はどこに隠れてもすぐに僕を見つけ出しそうな位強い日差しで街中を照らす。
庭の大きないちじくの木には
いつも蜂がうるさく舞っていた。
木の下を潜り抜けると蜂が耳元で唸った。
まるで俺のものに近づくなと威嚇されているようだった。
祖父が捥いだいちじくをはじめて見たとき、
その姿のおぞましさに顔を歪めた。
赤黒い肌、少し開いた尻から覗く肉襞のような果はこちらをじろりと覗き込んでいるようだった。
実も葉もザラザラと肌触りが悪く
葉の付け根から出る白い汁は
手につけばいつまでもベタベタとまとわりついた。
美味だと言われても口にすることすら嫌だと思った。
こんなものに狂酔する蜂にすら嫌悪した。
それがどうしたことだろう。
今私は目の前の愛する人の尻を強く叩き、
いちじくのように赤く腫れた皮膚を見て酷く興奮している。
赤黒く腫れ上がった尻を見て、
美味そうだと歯を立てたい気持ちを膨れ上がらせている。
棒の先から垂れる白い液体を自分の手に塗りたくり、何度も愛おしいとこすり合せる。
ミツバチが踊るように尻を振る。
いちじくの中で死ねる蜂を今は羨んですらいる。
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