ホームシックならぬ、「ワークシック」なのかもしれない

仕事を辞めて、1日目。

決まった就職のために、昨日をもってバイトを辞めた。不安定に気の向くままに生きている私にとって、地元に帰ってくるたびに働く場所をくれたことにはとても感謝している。

私はなんの資格もなければ経験も特技もないただのフリーターだけれど、何もできないからといって家にずっといるのではなく、そうしてバイトでも雇ってくれることが、まだ微かに「社会復帰しよう」という私の心を繋ぎ止めてくれているように感じた。

学生時代に鬱を味わってから、気分が激しく落ち込んだ時は出勤すらできない日もあった。それでも、出勤10分前に連絡しても、快く受け入れてくれた。

個人店だけれど、いつだって忙しい店だった。
店主は、どれだけ経費がかかって利益が下がっても、商品のクオリティは落とさない。その代わり、多くのお客様に来てもらうことでカバーする、という考えの人だった。

たった5.6時間の出勤。平日でも、一滴の水も飲む時間がない。そんなことは日常茶飯事。忙しくて、丁寧な接客なんて正直している暇もない。それでも、そんな店主の想いに共感して、極力お客様に笑顔で帰ってもらう接客を心がけた。お客様の要望に極力寄り添って商品を紹介して、時にはフランクに世間話も交えながら、いつ来店してもらっても「来てよかった」そう思えるように心がけた。

不登校で、通信制に通う高校生。
最初は、高校生NGだったところに人が来ないからと条件緩和したところを狙って、どうしてもこの店で働きたいんだと、頭を下げた。従業員の中では当時、当然反対意見もあったそうだけれど、私の熱意を汲み取って、たくさんのことを学ばせてもらった。

そんなこんなを繰り返して、累計在籍期間、3年。
お店にお世話になっている期間は、もう5年以上になる。

最終日、チラリと社員さんの口から漏れた言葉があった。
この5年間、考えていないはずもないと分かっていて、一度も出なかった言葉。

本当はにゃみさんを正社員として雇ってあげたい。できなくてごめんね。

経営的に、新たに正社員を雇うことが難しいのは分かっていた。
けれど、業務的に私が抜けると厳しいのも分かっている。

本当は、辞めずにこのままバイトを続けることも悩んだ。
実家に帰ってきて、家賃も光熱費もかからないのだから、このままアルバイトの収入でも食べていける。こうしてnoteを書いて、適度に働いて、療養すればいい。そんな気持ちもあった。
疲れるし、しんどいけれど、ここ以上に働きやすい環境なんてあるだろうか。だから、就職が決まって、めでたいことなのに、どうしてもうしろ髪引かれるような気分になってしまう。

それでも、就職すると決めたのは自分だ。
新天地で不安なのは、きっと私だけじゃない。

決めたのは自分だから、頑張らないといけない。
ここで簡単に背を向けてしまっては、苦しい中送り出してくれた前の職場の人たちにも、申し訳ない。

人生は、積み重ねだ。
歳を重ね、環境が変わるごとに、疎遠になっていく人もいるだろう。
私自身だって考え方は変わるし、それは相手だってそう。

何にもない人生で、きっと死んだって誰も悲しまなくて、私なんて誰にも必要とされないちっぽけな存在だと思っていた。
けれど、こういう小さな「大切」が、積み重なっていくことが、成長なのかもしれない。

なんて、少しだけカッコつけたことを、酔った勢いで記してみる。
仕事を辞めて、たった1日。ただの休みの日とそう変わらないはずなのに、どこかぽっかり空いた気がする穴が、虚しい。

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