『月への吠えかた教えます』イーライ・イーストン ~攻めも受けも暮らしやすいBL業界を夢見て~

ご無沙汰しております。私です。

BLえっちゲームのレビューも書きおわらぬうちから何を…?!という感じですが、とても素敵なBL小説に出会ったのでまたまたご紹介を!

レーベルは信頼と安心のモノクローム・ロマンスさん。残り20日間でとんでもない出会いがない限り、「ベスト・オブ・新しいBL概念に出会わせてもらってありがとう2020年」作品はこちらになります。

(Amazonさんより引用)
人生に挫折したティムはひとりマッドクリークにやってきた。新種のバラをつくることで負け犬人生をやり直そうと。ところがその街には秘密があった。そこは犬シフターたちが暮らす犬たちの楽園だったのだ。よそ者にも優しいその街で、鋭い眼差しでティムを見つめる保安官・ランス。彼はティムがマリファナ栽培に関わっているのではないかと疑っていた。そこでボーダーコリーの姿で彼の車の前に飛び出しティムの家に潜入する。ティムの誠実な心に触れたランスは、翌朝犬がいなくなったことに傷心のティムを見て、心がうずく。一方、ティムの種は一向に芽を出す様子がなく、ティムは希望を失いかけていた。そんなある日心配するランスはそれが母親が関わっていることに気づいたーー。傷ついた心に寄り添う犬たちの街、マッドクリークで繰り広げられる犬と人間の交流。「月吠え」シリーズ第1作。

太っ腹なモノクロームロマンスさんより、kindle unlimitedで読めます!うわーい!

なんとなく以前から存じてはいたものの、なかなか手を取らなかった今作。友人が面白かった!というのと、シリーズ三作目が出たということで読み始めたところ、なんと……久しぶりに……朝まで読みふけってしまいました(徹夜)

設定等々はもうあらすじの通りなのですが、面白かったのがティムのキャラクター!「天然で、頑張り屋のどじっ子で、でも芯はしっかりあって、恋愛には奥手な淫乱」という文字に起こすと「男の夢か?!」というようなキャラクターを真剣に描くと、こんな変な子になるんだ……と冒頭より大爆笑です。そう、変人なんです、ティム。

人としゃべる時はぼそぼそとしゃべるか高圧的(?)なしゃべりになってしまう、オタクや人見知りやおしゃべりがよほど得意な人じゃなければおそらく身に覚えがあるだろう「やらかし」を常にやってしまう…!若いからしょうがないよ頑張って!
それを反省しつつ、次の瞬間には出会ったばかりの好みの男とのいろんなプレイを想像する…(相手のランスとまだろくに話せたこともないのにコスプレプレイの妄想が出た時は「ポジティブ過ぎでは?」と思いました)…そんな変人特有の前向きさや思考のふり幅、そしてまだ仲良くなってないランスくんが家に上がり込んだときは太腿と股間を凝視する率直な欲望。いいね、君。

彼はあるトラウマから暴力の気配や、支配的な男を嫌悪しつつ、欲望としては男性的権威に優しく組み敷かれたい……というソフトMというか夢見がちな願望も持っています。
BLの受けに女性の欲望や立場を仮託することは珍しくないですが、こういうわがままな欲望を赤裸々に描くのが、この作品やこのシリーズの鋭いところだな~と感じました。全体的にラブコメで軽いノリで読める作品なのですが、一人ひとりのキャラクターの細やかで立体的な人柄が、それぞれの思考や行動、着眼点から読み取れるのが、作品としての面白さや登場人物たちへの愛を深めてくれます。
それゆえに「天然で、奥手で、淫乱」という、いわゆる男の夢のようなキャラクターが、こんなに生き生きとした変人になってしまい、結果こんなに好きになってしまいました!ティム…おまえおもろいやつだな…

ティムくん、男の夢でありながら一筋縄でいかなすぎて、それでも男の独占欲に全力で答えてくれるのです…そう、初夜のベッドの中でも……

「俺のだ、お前は俺のだ、そうだろう?」
「うん!」

元気か。
いや……そうだよね……まっとうな答えだし間違いじゃない……間違いじゃないんだ……
ティムくんのこと、一生忘れられないと思う……

ところで話は変わりますが、私はBL業界に対してある一つの疑問を持っていました。

それは「攻めのち○ちんの巨根信奉」です。

攻めのTNTNはデカけりゃデカいほどいい!子どもの腕ほどあるものだ!
そんな風潮、BL業界にありませんか?あ、ない?その風を感じているのは私だけ?そんなことないと思うな~~~~!

とにかく、TNTNのサイズで攻めを縛るのは、要するにTNTNに男性的権威を仮託することで…みたいな感覚で、令和なんだしそろそろキョコンにばっかり夢を持たせるの、ダサくない? 攻めと受けに男性性と女性性の規範を押し付ける行為のようでなんとなく反発心があり…いやでも大きくしたくなるキャラ付けもわかりつつ…でも小さいほうがZENRITSUSENにはよく当たるって話もあるよ…ともそもそ思っていたところに、出会ってしまったのです。

世の中にペニスは数あれど、このめぐり合いはまさに当たりだとティムは思う。むっちりと太くて、それでいて規格外のでかさというほどでもない。欠けたもののない素敵なフルセット、先が少し細くて根元は太い。まさに用途に最適。

ティムーーーーーーー!やっぱりお前は天才だよ!!!!

ティム視点のランスのTNTNの描写、すごくないです?

これが令和ですよ。ナンバーワンではなくオンリーワン。

僕たちだけの素敵なオンリーワンTNTNに出会うのが令和のBLなんです。

はぁ。最高。これからは私も攻めのTNTNは受けのためにピッタリのかたちであるべきだと心に留めて生きていきたいです。TNTNの多様性。グローバリゼーションでありダイバーシティでありユニバーサル。これでTNTNのサイズだけを杓子とした時代は終わります。攻めにとっても受けにとっても暮らしやすいBL業界になることを心から祈っています。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?