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アドリアン・イングリッシュ4 海賊王の死~既婚男の昔の恋人への未練の解像度が高すぎる~

※このブログは読書感想文というより、超個人的かつあんまり綺麗じゃない恋愛経験談に基づく作中のキャラへの罵倒と怒りと私の情緒の破滅を記録したものです。笑って読める人だけどうぞ。※

と、いうわけですよ。アドリアン・イングリッシュ4巻 海賊王の死……
深夜0時から読み始めて(そもそもそんなことをするな)、途中で何度もkindleのページを閉じてむせび泣いて、時々水分補給して、時々いろいろ思い返してずびずびして怒って落ち込んで、また進んだと思ったら同じシーンを見返して、気づいたら朝の6時……完徹、しました(大人とは……)

2年前に、ジェイクが職場の同僚女性と結婚するのと同時に別れた二人。しかしアドリアンにはすぐガイ・スノーデンというインテリジェンスがあって大学教授という高収入で魅力的な彼氏ができる。なんだかんだで半年以上男が切れたことがないアドリアン……というのは置いておいて、別れて2年たって、アドリアンが執筆した小説の映画化記念パーティで殺人事件が起こり再会する二人。2年間おとなしくしていたアドリアンも、目の前の殺人事件への好奇心と背中を押してくる新しい友人のおかげでまた事件に首をつっこんでいく。

そして、ジェイクとまた関わりあうわけですよ。左の薬指にこれ見よがしに金の結婚指輪をつけたジェイクと。

……余談というか、私は別れてから数年後に、すでに結婚をしている元カレと何度か二人で会ったりご飯食べたり挙句の果てに…ってことがありまして。きっかけは仕事か転職関係での相談だったんだけど、その時の元カレとジェイクの言動があまりにもシンクロしすぎて情緒揺さぶられ怒りにかられ卑怯な男の解像度が高すぎてちょっと狂いそうになりながらこの話を読みました。

まず、ジェイクが結婚後でも通い続けていたSMゲイクラブでのパートナー(?)だった男から又聞きしたり、本人から直接聞いたりしたアドリアンへの評価がすごい。

「だが、君には才能があると、たしかにそう言っていたよ」
 本当にそんなことを、ジェイクが? そりゃおもしろい。なにしろ僕がはっきり覚えている限りでは──。
「俺は、昔、お前には捜査に必要な勘がそなわっていると言った筈だ」
「おかしいな」僕は言い返した。「まったく覚えてないね。事件から手を引けと露骨に脅された記憶ならあるけど」

ジェイクのやつ、まるでアドリアンに対して『俺は昔からお前のことを評価していた』って言いたさげなこのマウントの取り方ですよ……付き合っているときは一切アドリアンのことを褒めなかった(すくなくとも素人探偵稼業に関しては。私も前日に1~2巻を読みましたが、アドリアン同様まったく記憶にない)くせに、いざ過去のことになると相手を美化して、自分は昔からお前のいいところを知っていたぞ、というような口ぶりですよ。そして他の人にもそれをいうんですよ。魅力的な人と自分は付き合っていたんだ、でも別れたんだ……ってね。

うるせーーーーーーー!付き合ってた時にいえ!!!!!!

あとそんな美化するなら!!!!別れるな!別れを切り出したのはお前だーーーーーーーーーー!

 ジェイクが無感情に返す。
「つながりを完全に断ち切ったのはお前の方だ、アドリアン。俺がそう望んだわけじゃない」

だから!!!お前が!!!別れを切り出したんだろうが!!!

別にアドリアン(と私)は!!!!お前と別れたいなんて!!!!一言もいってねーーーーーーーからな!!!!!

ジェイク(と私の元カレ)の脳内回路がどうなっているのかここに関してはわかるようなわかりたくないような感じなのですが、俺と会いたがらなかったのはお前じゃないか、とか、連絡を絶ったのはお前の方だ、とか、別れる前に反応が鈍くなったのはお前じゃないか、とか彼らは言いたそうです。が、そんなん意思確認せずに別れを切り出したのはそっちだからな。
どういう思考回路でアドリアン(と私)のせいで別れたことになっているのか知りませんが、完璧お前(たち)が自主的に別れを切り出したんだからな……!!!!別れたら次の相手がすでにいる状態で会いに行くわけがないだろ馬鹿野郎……!!!!

ふーーーーーーーーーっ。

その後、アドリアンが事件の関係者に話を聞きに行く前後で必ず自分に連絡を入れるように約束させるジェイク。しつこいくらいに何度もその約束を念を押すジェイク。そして「必要か?」ってぐらい何度も電話をしたり、会いに来るジェイク。そしてついに、ジェイクは言うんですよ。

「嘘だ。俺は、ニナ・ホーソーンのことを話しに来たわけじゃない。お前に、また友人になってくれと言いに来たわけでもない」

ジェイク、お前は本音が言えるいい子だね。

「何なのかはわかってるだろ、ジェイク。これは、僕らがやっと互いに言えた、本当のさよならだよ」

アドリアンーーーーーーーーー!あああああーーーー!だよねえええええーーーーーーーー!

…………

閑話休題。

この後、物語の中では二人は結局我慢できずに何度も会うし、いろいろあって五巻に続き、いろいろあってハッピーエンドにもなるわけです。詳しくは読んでね。感情ジェットコースターで死ぬけど。

でも現実はそうではなくて。言い訳をすると、私の方は同棲しているカノジョがいるんだろうな~とはわかりつつまさか入籍しているとは知らず(マジ)、後日共通の友人から「お前、あいつと仲良かったから結婚式の動画手伝ってくんない?」っていう連絡がきて入籍の事実を知るという悪夢が待っていたんですけど……
とはいえ、現実はロマンスじゃないとはいえ、この別れた相手(しかも現在自分とは別にステディな相手がいる)とあやまちをしたのちに冷静になってしまうアドリアンの気持ち、すごくわかる。私の現実ではここで関係は終わり、ぶっちゃけ飲み友で続いていたほうが楽しくてよかったな~と思いつつ、アドリアンの言うように、

「それにもし、お前が僕と友達でいたかったとしても──そんあのは嘘だけどな、どうごまかそうが──一体僕らがどのくらいの間、潔癖な関係でいられたと思う?」

ってまさにこれだな~と思うわけです。

一度進んでしまった関係はもとには戻らない。ジェイクはゲイであること、警察官であること、いろんな理由でアドリアンを手放さなくちゃならなくて、自分自身に素直になれなかった。だから物語としてその後ふたりはうまくいくけど、やっぱり傷つけた人や壊したもの、そしてアドリアンの中の許せない気持ちはのちのちまでも後を引くし、その傷痕は一生残るのだとこのシリーズは最後まで示していて、一筋縄ではハッピーエンドにさせてくれない。
現実は、そんなにきれいじゃないし、ジェイクのように一途で不器用な理由で人間は別れを選ばない。だからここで現実は終わりにできてよかったな~と私自身は思うわけです。(いや、倫理的にはここまで来ちゃったのもよくないけど)

外国の物語、しかもフィクションでゲイロマンス、なのにこんなに解像度の高い昔の男の未練の見せ方を表現されてしまって、この数日は瀕死でした。思い出した怒りと悲しみと、でも自分の過去のことが、異国でも通用するよくある出来事なんだな~(?)と処理することが出来たので、そういう意味では積年の恨みがちょっぴり浄化されたかも。

その後、2年間、アドリアンに会えなかった期間に積もったジェイクの悲しみの慟哭に心を打たれたり、美しいラストシーンで4巻は幕を閉じます。
4巻の前半部分は自分自身と重なるところもあれど、後半はもう怒濤の展開で我を忘れて没頭しました。

「だがな、もしすべてをトイレに流すみたいに捨てちまうなら、俺のこの二年間は一体何のためにあったんだ? 誰にわからなくても、お前にだけはわかる筈だ」

ジェイクが愚かで哀れでどれだけ身勝手にアドリアンに想いを馳せていたのか、その身勝手な分だけどれだけアドリアンが欠かせない存在になっていたのか、アドリアンの斜に構えた視線から覗きみえるジェイクの一途さや不器用さ。

私はジェイクのこと、最低だけどすごく人間らしくて、一途で素敵なあと感じて好きです。元カレとは違って。


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