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山口拓朗『マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。』感想

 タイトルから、文章が連ねてある本かと思ったが、めくってみたら「英語のフレーズ集と同じ!」という印象だった。まずは当該フレーズがあって例文がある。わたしは英語の学習参考書や教材を制作してので、そうした構成に慣れている。著者によると「フレーズを読む→書き写す→フレーズを使った文章を書いてみる」とあり、このプロセスが英語のフレーズを覚えるのとまったく同じ。ああ、そうか……。たしかに、これまでありそうでなかったトレーニング本である。まずは本書のフレーズを、語句として知っているかどうかをチェックする。知っていれば使ってみる。結局、言葉を使えるかどうかはその繰り返しなのだ。
 英語の単語集と同じだから、本書は「受動語彙としては知っているフレーズを能動語彙に持っていく」という使い方もできるだろう。数年前に校閲した英語学習書に「自分の使うフレーズをインストールする」と記されていたが、この本も「日本人が母国語のフレーズ集を(改めて)インストールする」本なのである。
 面白いのは、この本には音声セミナーがついてくる。著者が音声で語るのは、たとえば本書のフレーズを使ってSNSで「マネブン」のハッシュタグをつけて投稿しようということだ。これまでに「類を見ない(本書のフレーズである)」文章術の本であろう。文章がうまくなるには、 SNS であろうとブログであろうと、とにかく書き続けるとことが大事である。どんな文章術の本を読もうと、書かないことには上手くならない。
 でも、書けない人は、何をどうやって書いていいのかその糸口がないのだ。そこでこの本を登場させる。ぱっと開いたところのフレーズを使って文章を作ってみる。ツイッターがいいだろう。これは画期的だ。本を使って、実際に書く訓練ができる。この本の一番良いところはここではないか。
 最後に、英語教材に携わる者としてひとつだけ本書に提案がある。「フレーズを読む→書き写す→フレーズを使った文章を書いてみる」のプロセスで、「フレーズを読む」の次に「音読する」を入れるのはどうだろう。英語のフレーズを覚えるときに音読するのはごくふつうの勉強法だ。この本でもそれを入れたらどうだろう。「フレーズを(目で)読む→音読する→書き写す→フレーズを使った文章を書いてみる」とやってみると、さらに効果がアップすると思う。いかがだろうか。


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