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コウペンちゃん展とコウペンちゃんカフェ

 銀座・松屋で12月29日まで開催されているコウペンちゃん原画展に行ってきた。
 予約時間制ではなく待ち時間や行列を覚悟して行ったが、平日の午前中だったせいか、わりとすぐ入れた。
 2017年、るるてあ氏が「出勤してえらい!」の吹き出しと共にTwitterに投稿した「コウテイペンギンの赤ちゃん」のキャラクターがコウペンちゃん。いまや大人気、いや、どこででも見かけるようになった。日本のキャラクターで知名度ベスト10に入るのではなかろうか。
 原画展ははじめてだった。ひとつひとつの作品は小さい。A4サイズくらいの用紙にたくさんのコウペンちゃんやアイディアが並んでいて、近づかないとなかなか見られない。けれども、見慣れたグッズやカレンダー、絵本などの印刷物にはないパワーが原画からは放たれていて、すーっと惹きつけられてしまう。

 コウペンちゃんの人気のひとつは、「やなこと」を持っていってくれたり、お湯につけて溶かしてくれたり、氷水に入れて固めたりしてくれるという、「自分が抱えている嫌なこと、マイナス要素」を取り去ってくれるところではないだろうか。
 ものごとへの不安や焦り、誰かへのマイナス感情など、みなネガティブな何かを抱えている。その「やなこと」をグレーやパープルの雲というアイコンに代表させ、それを取り去ったり、小さくしたりしてくれる赤ちゃんペンギンの様子を可愛く描く。
 疲れが溜まっていると、好きな映像や画像であっても、強い線や色彩のものは見られない人もいる。わたしがそうだ。やさしいタッチのやわらかい線、トーンを落とした色の何かを見ていたいものだ。
 そんなとき、コウペンちゃんがゆるやか~に、やわらか~く「やなこと」を「あっちへもっていって」くれたり、小さくしたり、追い払ってくれる様子を見ると、顔や口の筋肉が一瞬ゆるむ。
 そういう原画をたくさん見て、身体じゅうの筋肉から、不要な緊張や力がどんどん抜けていった。

 出口の前にはコウペンちゃんぬいぐるみが大集合。みな「あーうちにいる子だ!」と指さしていた。もちろんわたしも。こういう「自分(自宅)とキャラクターを結びつける」仕掛けも、ファン心理を突いていてすごいなと思った。
 また、作者るるてあ氏の制作風景の動画が流されていた。これはとてもよかった。すべて手描きでコウペンちゃんを描くるるてあ氏は、下絵から先、ペン入れや彩色など、すべての工程で手袋をしている。かなり神経を使い、集中力が必要な作業なはずである。
 これだけの超売れっ子が、文字通り「手を動かして」作品を生み出しているのがなんだか嬉しかった。机上に日本の山野草の図鑑や歳時記が置かれていたのにも安心し、「ああ、やっぱり常に資料を見て描いているのだ」と思った。
 信用できる仕事とは、信用できる資料があって成り立つ。ふだんは自分がいつもいる「文字」の世界のことだけしか考えていないが、イラストの世界もまったく同じなのであった。
 最後にカフェのことも書いておく。この作品展にはキャラクターカフェが併設されている。大体キャラクターカフェというのは席が狭くメニューも美味しくない。提供品の順番も選べない(デザートが食事より先に来たりする)のであまり好きではないが、ここのカフェに入ってみたらとてもよかった。
 デパートの食堂街でほんらいカフェとして営業しているレストランを一時期キャラクターカフェに模様替えしたという体(てい)なので、「カフェ」としてのオペレーションが確立されている。
 カレーもケーキもちゃんとした味がしたし、デコレーションもきちんとしていた。席も特別狭いとは感じない。もちろん、キャラクターカフェお決まりの「ぬいぐるみ」も1テーブルに1体ずつちゃんといる。ふつうのカフェとして合格点というベースの上に「キャラクター」がのっていて、居心地と印象のよい空間だった。
 作品展とキャラクターカフェ、どちらも「ほっとできる」エネルギーをチャージしてくる場所でとてもよかった。
 クリスマスや年末になんの予定も縁もない自分だが、ここに来られて「やなこと」を取り去ってもらったのが「忘年会」となったかな。

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