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家で聴くための音楽、その13:Pablo Juárez 『Sumergido』

フォルクローレとジャズの魅惑的な融合

 家にいることが増えてきた人に、家で聴くとよい感じではないかしら、と感じる音楽を紹介していく連載。

 第13回はPablo Juárez の『Sumergido』(2012)。

 ほんとうは、このところ、気候がめまぐるしく変わるので、落ち着いたジャズでも紹介しようかと思っていた。しかし、そうなると候補を絞り込むのがなかなか大変だ。なにしろ、無数にある。それだけで、この連載が1年ぐらい持ってしまう。

 そこで、ちょっとひねって、外に出にくい昨今の情勢を踏まえ、旅情をかきたててくれるような、イマジネーションを刺激してくれる音楽を選んだ。その上で、昼でも夜でも、部屋で聴くのにぴったり、というものを。

 第3回で、Andrés Beeuwsaertの『Dos Ríos』について触れた。

 フォルクローレやタンゴなどのアルゼンチン音楽をベースに、ジャズ〜室内楽〜クラシックを溶け込ませた、現代アルゼンチン音楽、あるいはネオ・フォルクローレと呼ばれるシーン。『Dos Ríos』はその代表作にして、その深遠な世界のよき導き手でもある名盤。

 この『Sumergido』も、現代的な感性と、アルゼンチンの土着的な旋律を併せ持つ、魅力にあふれた1枚だ。フォルクローレとジャズの、魅惑的な融合とでも言おうか。

 基本は、Pablo Juárezのピアノに、フルート、ベース、ドラムという編成。このフルートが、絶妙に効いている。

 1曲目の「El Caminante」だけでも、聴いてほしい。この曲に、郷愁の感情を誘われない人など、いるのだろうか。

 ウッドベースのフレーズにピアノが絡み合う瞑想的な導入から、南米の広大な風景を思わせるフルートの音色が入ってくる、この見事さ。ほどよい哀愁を帯びたメロディーに、あっという間に魅了されてしまう。

 かと思えば、続く「Sumergido」では、メロディアスなピアノソロから、スピリチュアル・ジャズを思わせる渋い演奏を見せる。ここでは、フルートは、むしろレア・グルーヴの名盤のようなムードを演出するのに一役買っている。

 いたずらに民族的な要素を前面に出さなくても、自分たちのスタイルは聴かせられるよ、という余裕がある。このあたりのスマートさも、実に好ましい。

 5曲目の「Memoria De Pueblo」はCarlos Aguirreのカバー。ここではゲストの女性ボーカルを迎え、いかにもネオ・フォルクローレな世界を聴かせてくれる。

 小編成ではあるが、ピアノ主体の曲にハーモニカが加わったり(吹いているFranco Lucianiはフォルクローレ界の名演奏家)、ジャジーな掛け合いを聴かせたりと、飽きることがない。

 しかし、いつもならSpotifyやApple Musicなどへのリンクを貼るのだけれど、このアルバムは見当たらなかった。なんともったいない。

 Pablo Juárez本人が、YouTubeにアルバムをすべてアップロードしているので、そこから聴いてほしい。CDを聴く環境がある人なら、中古市場で探してみるのも手だろう。古い感性かもしれないけれど、手元に置いておきたくなるアルバムだ。

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