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花奏かのんの12時間耐久ベース演奏チャレンジと、VTuberの戦略

2019年10月18日の夜9時から、VTuber花奏かのんによる「チャレンジ」が始まりました。チャンネル登録者数が22,222人に到達するまで、レッチリの「Can't Stop」をベースで弾き続けるというものです。始まった時の登録者数は20,624人だったので、1,600人増やすことが必要になります。

これは彼女にとってかなり高い目標で、難しいのではと私は思っていました。到達しない場合は翌日の18時まで、つまり最大21時間弾き続けるというクレイジーなルールでした。

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私はこのチャレンジを、途中3時間ほど寝たのを除けばずっと見ていましたが、やり方がすごく上手いな、鉄板だな、いわば孟子だなと思い、後発のVTuberの戦略として学ぶところが多いのではと思ったのでした。

花奏かのんについて

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花奏かのんさん(以下敬称略)は、正確には後発というほどではありません。2018年5月から個人勢として活動していて、得意のエレキベースの演奏を生かした「ベーシストvtuber」を名乗っています。曲も作れるし、歌も歌えます。

2019年9月29日に、あにまーれハニーストラップと同じ運営のグループ、「ブイアパ」に所属することが発表されました。つまりつい最近、個人勢から企業勢になったわけで、第二新卒みたいなものでしょうか。

ブイアパは、クリエイター系VTuberを集めるというコンセプトのものですが、所属VTuberが2名しかいないという時期が長く、彼女は久しぶりの加入者です。ブイアパはまだ小規模ですが、あにまーれやハニーストラップも含めた広い意味の箱としては確固たる勢力があるので、ブイアパに加入した日に登録者数が1500人増えました。それまでは1万6千人ほどだったので、1年4カ月かけて得た人数の1割を、1日で稼いだわけです。

その後も順調に伸びて、この「弦を茹でる動画」が話題になったこともあり、2週間足らずで2万人を超えました。ちなみに私もこの動画がキッカケで登録しました。しかしそろそろブイアパデビューのボーナス時期は終わり、伸びが緩くなったかなという時期に、冒頭の企画をぶっこんできたのでした。

天の時

「天の時・地の利・人の和」は、孟子の戦略として有名です。勝つためにはこの3条件が必要だというもので、ビジネスでもよく言及されますね。古来から現代まで参考にされ続けているということは、真理を含んでいるわけで、今回の「チャレンジ」を見ながら、まさにこれが当てはまるなと思っていました。

まず「天の時」は、この企画をやるタイミングです。本来は2万人を目指してやるつもりが、意外と早く超えてしまったので、22,222人を設定したということです。でも本来はキリのいい数字のほうが良いはずで(VTuberには登録者数がキリのよい数に達したときに祝う文化があるので)、2万5千人や3万人目標でやることも考えていたようですが、でも唐突に22,222人でやると、1日前に発表されました。きりの良い数字を狙うと実施が遅くなるので、このタイミングがベストだという感覚があったのでしょう。

以下はuserlocalから取ってきた、登録者の伸びのグラフです(赤線)。ブイアパの加入時に一気に増え、そのあとも伸びるが、やや鈍化したタイミングでのこの企画があったこと(2日間で大きく伸びているのがそれ)がわかります。これが「天の時」です。

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地の利

「地の利」は、この場合は花奏かのんの地力、特技を生かしているということです。ベースを弾けるというだけではなく、普段の練習でも3時間くらいぶっ通しで弾くのは普通ということで、長時間弾くことには自信があったのでしょう。

黙々と長時間ベースを弾くというのは、配信映えしないと普通は考えます。ベースは地味だし、弾きながら雑談もできないですしね。でも彼女のベースはどこか心地よいし、展開したり、別の曲のフレーズを混ぜたりなど変化をつけてくれるので、不思議とずっと聴いていても飽きませんでした。作業用BGMとしてもうってつけでした。

コメント欄には音楽好きな人が集まっていて、彼女が黙ってベースを弾いている間も、コメント欄で音楽談義や楽器談義で盛り上がっていて、マニアもそうじゃない人も混ざって良い雰囲気でした。これも彼女が築いてきた地力でしょう。

人の和

そして「人の和」ですね。VTuberって、ファンに「この子を応援したい」と思わせることが何より大事、だと思えます。特にまだファンが多くない人にとっては。まずコアなファンが増えて、その雰囲気が外に拡散される過程でメジャーになっていくことが多いと思うので。孟子も、一番大事なのは「人の和」だと言っています。

1600人増やさないと演奏をやめられないというのは、かなり無茶な目標だったはずです。最近の増え方を見ると、配信した日で200人というところでした。本人も終わった後に「正直行かないと思っていた」と言っていて、タイムリミットの18時まで、21時間弾く覚悟だったようです。確かにそれはそれで話題になるかもしれないが、見ているほうとしては、そんな無茶はさせたくないわけですよ。それに、難しい目標であるだけに、達成する歴史的瞬間を見たいという気持ちもあり、チャレンジを見た人は拡散をがんばることになりました。

そういった拡散を見て来た人は、一目見れば彼女のがんばりは分かるので、「これは応援しなきゃ」とチャンネル登録をしてくれたことでしょう。そうやって登録者は伸びていき、100人単位で増えるたびにおめでとうと言い、深夜の人が増えない辛い時間帯を耐え、そして午前9時29分頃、演奏を開始して12時間ちょっと経過したところで、集まったファンに見守られながら22,222人を達成したのでした。彼女も喜んでいますが、見ていたほうも、すごい瞬間に立ち会えたという達成感がありました。

その他の成功例

「天の時・地の利・人の和」を得た成功事例としては、因幡はねるの例も挙げられます。VTuberって頭の回転は速いが、学力は残念という人がわりと多いですが、彼女は学力が高く塾講師などの経験もあるというのが地力で、それを生かした学力テスト企画で知名度を上げました。

初回は内輪のメンバーで行いましたが、この第二回からは外部の多数の人気VTuberをゲストに迎えています。すごいメンバーを集めてたわけですが、この1か月ほど前、BS日テレのキズナアイの特番の中で行われた「バーチャルYouTuberランキング2018」で、因幡はねるが4位を取ったことが話題になっていました。そういったタイミング的に、有名な人を呼びやすい環境だったと想像できます。「天の時」だったわけです。

コラボの日になって、間が悪いことにYoutubeにトラブルが発生し、配信予約していてもチャンネルに表示されず、通知も来ないという状態になりました。すごく大事なコラボの日なので、因幡はねるは悲鳴を上げていましたが、それを見たコラボ相手やファンたちが拡散に力を入れて、結果的にはむしろ宣伝になったくらいでした。「人の和」ですね。こうして企画は大成功して、VakaTuber企画は有名になり、以後も豪華なゲストと多くの視聴者を集めるようになりました。

後発VTuberが成功するには

近頃、有名な人だけでなくいろんなVTuberさんを見るようにしているのですが、それほどファン数は多くないし伸びてもいない方で、でも「もし2018年の早い時期にデビューしていれば、今頃は十万人以上のファンがいたかもしれないな」という才能の方をちらほら見ます。VTuberは大勢いて、すでに有名な人がパイを押さえており、後発組が目立つのはかなり難しい状況があるでしょう。にじさんじのような強い箱に所属している人を除けば。

そういった中でどうすればいいんだろうな、と常々思ってたのですが、今回の花奏かのんちゃんを見て、やはり鉄板のやり方かと。「天の時・地の利・人の和」という古典的な戦略をきちんとやればいいのか、と思ったのでした。それがうまくハマれば成功できるのではないかと。花奏かのんちゃんはそんなケースになれると思うし、今回の成功は大きかったと思うので、今後も注目しています。


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人類の行き着く先はバーチャルであるはず。なのでVRやVTuber関係をウオッチしています
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