めどれー

昨日と違う今日・あにまーれイベントにVTuberの未来を見た

2020年2月8日に、VTuberグループ「有閑喫茶あにまーれ」の初の単独リアルイベントが行われました。新しい試みがいろいろ盛り込まれた、見どころの多いものだったと思います。

その模様について、4つのパートに分けて書きます。まず、あにまーれイベントと同じ場所で開催されていた「Vリアルゲーム」、次にリアルイベントの「大運動会」パート、「音楽ライブ」パート、そして「重大発表」です。

Vリアルゲーム

「V×R GAME」 と書いて、Vリアルゲームと読むようです。こちらにプレスリリースがありますが、ショッピングセンターのラゾーナ川崎とタイアップして、施設内に点在している問題を探し、さらに専用スマホアプリのAR(拡張現実)で表示されるVTuberにヒントをもらいながら謎解きゲームをするというものです。あにまーれだけでなく、登場VTuberが違う数種類のゲームが選べるようになっていました。下はアプリの画面で、このようにARでVTuberが自分のいる風景と合成されます。

はねるAR

実はARでVTuberを動かすこと自体は、Unityといくつかのライブラリを使えば簡単に作れます。これは私が以前作ったものです。(ビデオの途中からAR映像になります)

VTuberとARの組み合わせは誰でも考えることですが、問題はそれで何をするかです。Vリアルゲームの、いっしょに謎解きをするというのは面白い応用でした。その場所で一緒に謎を解いている気分になれるから。

ただ、謎解きという性質上、問題のバランス設定がキモかもしれませんね。今回の問題は、私には難しすぎて解けませんでした。こういうの苦手なんですよ。謎解きが好きな人は、あのバランスでよいのでしょうし、すごく楽しかったという声は多かったです。まぁそこは調整次第として(※)、こういう方向でARを使うのはいいなと実体験で感じました。
(※その後、ヒントのサイトが改訂されて難度が下がったようです)

大運動会

そしてメインの、リアルイベントです。ラゾーナ川崎内の映画館で行われて、大阪の映画館でも同時開催されていました。映画館でのイベントは、Balusが制作している”TUBEOUT!”を私は何回も見ていますが、今回もBalusの制作なので、画面の作りはTUBEOUT!と同じでした。映画のスクリーンにステージが立体的に投影されていて、そこにステージがあるように見える「疑似AR」になっています。

めどれー

そこで「運動会」の各種ゲームが行われたのですが、面白かったですね! あにまーれのコラボは「動物園」と言われるくらいで、わちゃわちゃとにぎやかなのが特徴なので、運動会という企画はぴったりでした。3Dで動ける貴重な機会なので、動きがあるのも良いところです。

観客は座席番号でチーム分けされていて、3人それぞれの応援団になります。そして観客の応援の声の大きさで玉入れのカゴの高さが変わるとか、観客がスマホ画面のTAPボタンを連打することでメンバーを手助けできるといった仕掛けがありました。TAPの数は座席番号(チーム)ごとに集計しているようで、よく出来ています。

たまいれ

TAPボタンでの連動はTUBEOUT!の最初期からありましたが、当初は押した数に応じて画面演出が増えるだけでした。使い方がだいぶ進歩しているし、できることはまだいろいろありそうですよね。テクノロジーを活用して面白い企画を実現したり、観客との一体感が高まるといったことは、とてもVTuberらしいです。VTuberイベントの未来はこの方向ではないでしょうか。

運動会なので、最後に順位が決まります。それぞれの種目の1位、2位、3位にポイントを付けて合計を競うのですが、なんと全員同点でした。しかしこれは、全くの偶然というわけでもないでしょう。種目によって、その種目が苦手そうな人にはハンデをつけ、得意そうな人は手加減する、あるいは邪魔されるという空気が自然にあったからです。

例えば早押しクイズ種目では、因幡はねるは手加減してたし、苦手な日ノ隈らんは先にスタートするのを許されてました。次々と現れる星にタッチするという、身体能力が必要な種目では、宗谷いちかがゲームにならないレベルで妨害されてましたが、宗谷さんは文句を言うものの楽しそうでした。その結果の同点であり、キャッチフレーズの「あにまーれは仲良しです」を表したものでした。普段は不仲なフリをすることも多くて、このキャッチフレーズはそれに対する「棒読み」ネタなところがあるのですが、でもやっぱり仲良しだよねと。

途中、機材トラブルで45分間も映像が止まる(後半は音声も止まる)というアクシデントがあったのですが、メンバーはその中でも会場を楽しませようとしていたし、会場も荒んだ雰囲気はなく、再開したときには暖かい拍手で迎えたことは特筆すべきでしょう。

音楽ライブ

やはり、リアルイベントといえば歌ですよね。まず3人が順番にソロ曲を歌い、最後に全員でふぁんふぁーれを歌う構成でしたが、特にふぁんふぁーれが素晴らしかったなと。

因幡はねる(以下ねるちゃん)が振り返りの放送で「ライブで歌って改めて思ったけれど、ふぁんふぁーれは名曲だ」と言ってましたが、実際ライブですごく映える曲でしょう。いわゆるモータウンビート(でっでっでー でっでっででー というリズム)の曲で、例えばプリンセス・プリンセスの「ダイヤモンド」もこのリズムですが、ノリがよくてハッピーな気分になります。歌詞もハッピーだし、ライブの最後を締めるのに本当にふさわしい曲です。

ライブ

今回、ねるちゃんの歌がすごく良かったと思うんですよね。ソロ曲では、運動会で喉を酷使した影響で声が出なかったそうですが、ふぁんふぁーれのときは声が出ていて、賑やかな会場の中でも声がよく通っていたのが印象的でした。

これについて、以前にふくめん秘書さんの番組「因幡はねる大好き芸人2」に出た時、一緒に出演したAlfineさんがやっていたプレゼンを思い出しました。こういう図を出して、因幡はねるの声の特性はバイオリンに似ている、いわばストラディバリウスだ、という話でした。

弦楽器と一致

この時に私はコメントしたくて、でも時間が押していたので言わなかったんですが、ストラディバリウスって必ずしも、キレイな音ではないのですよね。ストラディバリウスと、10万円の練習用バイオリンをプロが弾いて、どちらが良いかを聞いたら多くの人が10万円のを選んだ、という番組を見たことがあります。ストラディバリウスの価値は、大きなホールでオーケストラに交じっても、ソリストの音が後ろの席までしっかり聞こえるということです。一方、ねるちゃんも大人数コラボの時でもよく声が通るので、「ストラディバリウス的」というのはそういう面でも当てはまるなと。

音にある種の歪みがあったほうが、ほかの音にかき消されずに通りやすい、というのがその原理です。  きれいな波形が出るデジタル・シンセサイザーよりも、微妙に歪みがあるアナログ・シンセサイザーのほうが、他の楽器に埋もれずに前に出るということで重宝されたりします。

ボーカリストも同様に、オケや会場の音に負けずに声が通るというのは重要な資質なのです。ねるちゃんは元から声質がボーカリスト向きで、ボイストレーニングをして声量が出たので、今回特に良かったのだと思います。今後もどんどん歌を聴かせて欲しいですね。

重大発表

「重大発表」として、あにまーれに2人の新メンバーが参加することが発表されました。会場は大歓声で、Twitterなどでもその話題で持ち切りでしたが、ここで発表したのは演出効果として素晴らしいし、タイミングも絶妙だったのではないでしょうか。

新メンバー

ちょっと話は逸れますが、「どんなVTuberが強いか」という風潮には、変遷があるというのが私の持論です。2018年の頃は「早く始めた人が強い。後発は厳しい」という風潮でした。VTuberの認知度がまだ低く、新しいファンはとりあえず「VTuber四天王」とか、にじさんじの有名どころを見るということが多かったからでしょう。

2019年くらいから次第に雰囲気が変わり、にじさんじの新人でブレイクする人が出たり、ホロライブが増員するにつれて既存の人の人気も上昇したりで、今ではすっかり「箱が強いところが強い」という風潮ではないですか。後発であっても、強い箱からデビューすればブレイクする可能性があるし、逆に弱い箱や非グループはなかなか厳しいと。

あにまーれファンの空気も、その風潮に伴って変遷していると思えます。2018年の末に稲荷くろむが引退したときは、「いまさら補充メンバーを入れないほうがいいんじゃないか」という空気がファンの間にはあったと思います。でもさらに減って3人になってしまったことと、最近のホロライブやにじさんじの隆盛を見て、「やっぱり人数がもっといたほうがいいんじゃないか、新規メンバーを入れるべきじゃないか」という機運が大きくなったところだと思います。そこにこのタイミング、あにまーれの初ソロイベントというおめでたい場での発表なので、みんな大歓迎という空気になったのではないでしょうか。

新メンバー追加と言えば、新メンバーではなくライバル店でしたが、ハニーストラップが発表された時を思い出します。この時、ねるちゃんはライバル心をむき出しにして「公式アンチになる」と宣言し、これが面白いということで話題になりました。

このことは、ハニストの注目度を高める役に立ったと思うし、また、「この件をきっかけに因幡はねるを知った」という人が結構いるので、ねるちゃん自身の知名度向上にも役立ったはずです。

新メンバーを可愛がるため、ねるちゃんはいろいろ(地獄のような)企画を練っているようで、今回もうまくやるでしょう。新メンバーも既存メンバーも知名度がアップして、ファンが増えるのが理想的ですよね。

長くメンバーを固定した状態や、少人数からのメンバー追加はわりと珍しいので、これが成功すれば、他のVTuberの運営にも参考になる事案ではないでしょうか。要注目でしょう。

振り返り放送で、因幡はねるが「次は5人で歌って踊りたいね」と言った時、私は「それはエモい!」と胸が一杯になりました。メンバーが抜けるという悲しいことがあって、残ったメンバーでがんばって、そして新しいメンバーと一緒に「ふぁんふぁーれ」を歌う、そういう情景が押し寄せたからです。早く見たいですね。あにまーれは変わっていきますが、歌詞にもあるように、「昨日と違う今日 はじめましょ!」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?