めりのら

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掌編1 君の見ているフェンス越しの世界は

……こんなところにいたのか。 今日はサボり? ああ、いや、言いたくなければいいんだ。無理に言う必要なんてない。 隣りにいるだけでも、少しくらいは慰めにはなるだろう? しかし、ここはいいとこだな。こんなにここに居たことがなかったから、知らなかったよ。 空しか見えないと、いろんなことがどうでも良くなるな。 ……とても、聞きづらいんだけど、今日で最後、なのか? そうか。わざわざ言わせてしまって、ごめん。 間に合わないもんだな、こういうのって。 ああ、こちらこそ、あ

    • 朱と雪の中で

      これは一人の少女の愛の終わり、そして証明 「やってしまった」 最初に抱いた感情だ。何故かこうやって俯瞰できるくらいには心が落ち着いている。 生ぬるい液体に浸かっているかのような感覚。呼吸は荒く、息がうまく吸えないせいで肺にまで酸素は回らず、脳は痺れて…心臓が煩い。 なるべくしてなった、という感情と同時に、先程まで私に笑顔を向けてくれていた目の前のモノは、もう二度と動くことはないという現実感のなさ、もしくは罪悪感から逃げようとしての客観視か。目の前が見えているのはずなの

    掌編1 君の見ているフェンス越しの世界は