フランツ・カフカ「父への手紙」1

カフカが父親に書いて、受け取られることなく終わった手紙です。日本語版だと読まれる機会が少ないので、冒頭だけでも訳して、マガジンとしてお届けすることにしました。

父親との葛藤、確執が書かれたこの手紙は、これから親になる人にも、誰かの子どもだった人にも、心に来るものがあると思います。読んでいただけたら嬉しいです。(訳の無断転載などはお控えください)

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最愛なる父へ。シレジアにて。

あなたは先日、僕にこう尋ねましたね。なぜ僕が、あなたを恐れていると言って止まないのかと。

僕はいつも通り、あなたに何も答えることができません。ひとつには、あなたに抱いている恐れのせいで。そしてまた、恐れている理由というのが、僕がまとまった話にできるよりもずっと多くの、細かなことでできているせいで。

そして、僕がここで文章で答えようとしても、それはひどく不完全なものにしかならないでしょう。恐れとその影響が、僕があなたに宛てて書くことを妨げ、そして扱う出来事の大きさは、僕の記憶力や知力をはるかに超え出ています。

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555字
週1でゆるっと更新します。ボリュームは1回500字~。時々おまけでいろんなことを書きます。

カフカ「父への手紙」を訳しています。400円の買い切りです。 よい作品だと思いますが翻訳が少ないようなので、皆さんのお手元で読んでいただけ…

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。