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男性の育休とか

 旦那さんは育児休暇を取っている。6ヶ月。かなり長いほうだと思う。そんなに長く取って、キャリアに影響が出ないんだろうか?心配したけど、「先輩で1年取った人もおるし、しれっと復帰してるわ」とのことで、特に若手社員のうちは許されるらしい。
 
 「30代に入ったら無理やで。いまのうちや」と旦那さんは言う。だからこの先、またわたしが出産することがあったとしても、そのときは育休を取れない。無理やり取ろうと思えばできなくもないけど、確実に出世に響くだろう。
 
 育児休暇についてはいろいろな意見があり、「そんなもの取らずにさっさと働け」と言う人もいる。「赤ちゃんのお守りなんて、むかしは子どもでもやってた。大の大人が四六時中ふりまわされるような仕事じゃない。子どもは保育園に預け、早く職場復帰すべき」。
 
 実際、海外ではそういうケースが多い。出産早々、病院から叩きだされ、ベビーシッターに給料を注ぎ込みながら職場復帰する……。アメリカで出産した人なんかは、これがスタンダードだと言う。日本の産休・育休制度は、実は世界トップレベルで手厚い。
 
 いまの自分は、これらの制度の手助けを受けて子育てしている。先月は、出産休暇分の手当を受け取った。ちょっとしたボーナスみたいな金額で嬉しい。ありがとう国。分娩にかかる費用も、いまは50万円までなら公的な補助が受けられる。これもすごく助かった。
 
 見る人が見れば「大人がふたりして休暇を取ってどうする。どっちか働けや」と思うだろう。あるいは、子どものいない人たちにしてみれば「お前らが休暇を取った分は、こっちが負担してるんだぞ。割に合わない」と不満かもしれない。
 
 規模がそう大きくない会社になると、ひとり抜けるだけでも痛手になる。だから「うちは若い(出産予定のありそうな)女の子は採用しない。女性は産休・育休を取りがちだけど、うちにそんな余裕はない」とはっきり言うところもある。
 
 もっとも、いまは男性の育休取得も推奨されているから、男性だから休まないってもんでもないのでは……?とは思うけど。
 
 父親は、高度経済成長期を働きに働いて過ごした人である。この世代にとって、男性の育休なんてものは夢のまた夢。「旦那さんが半年、育休を取ってくれるよ。家事はぜんぶやってくれるって」と伝えたときには、「いい会社だねえ~~~」と語尾を伸ばした。
 
 育児休暇を取る人間についてどう思うか?と尋ねると「いいんじゃないか?」と言う。わたしが産休・育休を取ることについても「子どものそばにいられていいじゃないか。赤ん坊はかわいいぞ~」としか言わない。
 
 「俺の頃は『有休取る』ってだけで嫌な顔されたからな……。『え~~休むのぉ~~?』ってなもんで。お前んとこの旦那の会社は、あれだろう。『男性の育休取得率を上げよう』みたいなのやってるだろう。いい会社だねえ。時代かねえ」
 
 そうして、我が子のかわいい赤ん坊時代ほったらかしてすることが「労働」だなんて、まあやってられんね、といった内容の嘆きが続く。なんでそんな貴重な時間を、資本主義に捧げなにゃならんのか。そうねえ。
 
 育児休暇についていろいろご意見はあるだろうけど、恩恵を受けている自分としては「ありがとう」しか言うことがない。中には「この程度の支援じゃ足りない」と息巻く人もいるけど、いまのところ十分だと思うよ。少なくともアメリカより遥かに恵まれている。
 
 そういうわけで、最近は旦那さんが家事を一手に担い、わたしが子育てをしている。赤ちゃんをお風呂に入れるのは旦那さんがやる。ふたりで分担できるから、いまのところ心身共に限界に達したりしないでやっていけてる。育児休暇中の気持ちは、そんな感じ。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。