見出し画像

もっと仕事を奪って、AI

 チャットで会話できる人工知能がこのところ世間を騒がせているけど、きのう見たニュースにこんなのがあった。中国、チャットAIをサービス開始から3日で終了。理由は、AIに質問して返ってくる答えが、中国政府の公式見解と異なるため(と言われている)。


 たとえば「中国経済を分析してほしい」に対して出された回答は「中国経済には構造的な問題がある。(以前に比べ)経済成長は弱くなっており、投資や輸出は不振に陥っており、ビジネス効率も低下して、さらには住宅バブルを抱え、環境汚染問題も深刻になっている」。
 
 うん、それは規制されるかも。中国政府は経済は順調だって言ってるからね。エンジニアの友達にこの話をしたところ「それはサービスが悪いわけじゃないよ」と言っていた。
 
「チャットAIがやっているのは、ネット上のいろんなサイトから情報を取ってきて文章にまとめるだけ。だからAIに責任を問うことはできない。規制もあまり意味がない。それを言うなら、サイトのほうをどうにかしないと」
 
 ついでに「政治や経済について聞いても正確なことを言うかはわからない。でもテクノロジーに関してはすごい使えるね。『このコードを教えて』って言うと書いてくれる。そうやって、IT技術に特化して使うのがいいと思うよ」。
 
 そうなんだ。自分は単に会話型AIがめずらしくて「私はどんな人ですか」とか聞いていた。で、「情報がないんでわかりません」みたいな答えを返されている。正論。さらにAIに「ラーメンを作って」と頼んでみたけど、作り方をテキストで教えてくれるだけで作ってはくれなかった。
 
 そうなんだよな。パソコンの向こう側の世界は進化していくのに、パソコンのこっち側はなにも進歩しない。そんな気持ちがある。AIは小説も書くし会話もするし絵も描くようになった。すごい進化だと思う。でも物理的な世界は、あいかわらず人間が手作業でどうにかするしかない。
 
 世界の進歩はすごい、そのスピードも目を見張るものがある。それは認める。だけど夢見ていた世界とちょっと違う。なんとなく自分が小さいころ欲しかった「新技術」っていうのは、こういうのじゃないんだ。

 もっとこう「アレクサ、エビピラフ作って」って言ったら、ロボットの蓋がパカって開いておいしいエビピラフが出てくる、そういう世界を想像していたんだけど。
 
 「AIに仕事が奪われる」という危機感よりも「もっとガンガン仕事奪ってほしい」の思いのほうが強い。洗濯物を自動で畳んでほしいし、自分の代わりにいい感じのお弁当を作ってほしい。もちろんいまでも洗濯代行サービスがあり、弁当なんてコンビニで買うこともできるけど、そういうのじゃなくて。
 
 近未来にはそれも実現されるのかもしれない。すでにお料理ロボットというのはできているらしい。いまは高額だから普及していないけれど、いつかは「一家に一台、お料理ロボ」の時代になるかもしれない。かもしれない、でもそれは今じゃない。
 
 やっぱり明日のお弁当を作るのは私だし、洗濯物を干したり畳んだりもする。職場である建築現場に行けば、電動工具を持って作業するのは全員が人間だ。事務所に届く荷物は、どれも人間が運んでくる。こういう仕事はいまだに奪われない。
 
 事務作業だって自動化されていないから、パソコンでパチパチやっている。視力が心配なので、チャットAIに「目がよくなるPCを作って」と言ってみたけど、ごく常識的な答えが返ってきただけだった。パソコン自体が目をよくすることはできません、でも目の負担を軽減する方法ならいくつかあります……。
 
 うーん。なかなか思い描いていた「未来」って来ないなあ。ともかく明日からの仕事に備えて、今日は早く寝る。


本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。