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暦の上ではもうすぐ春で、うぐいす餅が売られている。

 「健康で文化的な生活」。

 憲法で保障されているあれは、どれくらいの暮らしを指すんだろう。本気でやろうと思ったら、そこそこの気合が必要だ。確か「健康」の定義って、心身ともに問題がないこととか、そんな意味じゃなかったっけ。
 
 「心」と「身」。両方パーフェクトっていう人が、一体どれだけいるか。「文化的な生活」に至ってはもっとハードルの高いものに見える。
 
 たとえば、毎日おなじ服を着て、最低限の栄養だけ摂取する暮らしは「文化的」なのか。とりあえず人体が納まるくらいの広さのところで、どうにか寝起きする生活は文化的と呼べるか。
 
 とりあえず生きてはいける……くらしの味気ない日々を、あまり文化とは呼びたくないんだよな。自分も、季節感のない恰好に身を包み、バリエーションのない食事を摂っていた時期があるけど、あの頃ってけっこう荒んでいた気がする。
 
 そういうわけで、かつてのような生活に陥らないためにも、どうにか文化的な暮らしを心がけたい。こういう気持ちがある。なにか日々の暮らしに季節を取り入れて、餌ではないまともな食事を摂り、精神的な余白を持ちたい。
 
 その点、和菓子はいい。いきなりなんの飛躍かと思われるかもしれないが、あの世界はとにかく季節に敏感だ。それも、実際の四季より和菓子のほうが先に発売される。このへんの事情に詳しくなると、少しは自分の思う文化的に近づける。はず。
 
 近くの和菓子屋では、最近「うぐいす餅」を売り始めた。名前しか聞いたことがない。調べてみると、つまりはこんな感じの生菓子らしい。

うぐいす餅
画像引用元:https://www.olive-hitomawashi.com/column/2021/04/post-14346.html
うぐいす。
画像引用元:https://global.canon/ja/environment/bird-branch/photo-gallery/uguisu/index.html


 餅の名前に関しては、豊臣秀吉が名付け親だという説が有力。

うぐいす餅の由来には諸説あるが、1580年代に豊臣秀吉が名付けたという説が有力だ。大和郡山城の城主であった豊臣秀長が、茶会で兄の秀吉をもてなす際に、御用菓子司の菊屋治兵衛に餅菓子を献上させた。あんを餅で包みきな粉をまぶした餅菓子を気に入った秀吉が、うぐいす餅と命名したという。当時はうぐいす粉ではなくきな粉で作られていたことから、現在もその歴史を受け継ぎ、あえて一般的なきな粉で仕上げる老舗店舗も少なくない。

https://www.olive-hitomawashi.com/column/2021/04/post-14346.html

 いちおうネットにはレシピも転がっていて、家でも作れるらしい。「市販の小豆あんを購入し、求肥を手作りするのがおすすめ」……。

 えっ、なに「求肥」って。調べたところ、キュウヒではなくギュウヒと読むらしい。

求肥とは、粉状のもち米や白玉粉に、水飴または水や砂糖を入れ練り上げたものです。
求肥そのものとして食べられるのはもちろん、大福や練り切り、すあまなど、定番の和菓子にもよく使われています。ほんのりとした甘さと、もちもちした食感が特徴ですね。

https://tokubai.co.jp/news/articles/4792


 自力で作れるならそのほうが文化度が高い気はするが、お菓子作り初心者にはハードルが高い。手づくりするのは見送って、結局買ったのは草餅と桜餅だった。これでも春っぽい感じはするのでよしとする。

 季節感のない暮らしにならないための、これは些細な抵抗だ。そのうちに菜の花の一品料理とかも作りたい。なんか季節的にそれっぽいし。

 世の中には、生まれつき「文化的」をインストールされたかのような人もいるけど、自分はたぶんそうじゃないから気合を入れて文化をやる。菜の花のレシピを見てちょっと挫折しそうになってるけどちゃんとやる。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。