”配送体験の向上と物流業界の課題解決" メルカリの新しい配送サービス 『エコメルカリ便』のデザイン
🌱 はじめに
2024年3月に『エコメルカリ便』という新しい配送サービスがリリースされました。
サービス開発の背景や狙いは、以下の記事↓にて詳しく記載されているので、この記事では主にUXデザインに焦点を当てて書いていきます。
📦 2つの課題の解決
物流業界の課題
近年、物流業界では急速な物流量の増加と2024年問題に起因するドライバー不足に伴い、様々な課題に直面しています。配達ドライバーの負担の増加、配達車両のCO2排出量の増加、コンビニスタッフのオペレーション負荷の増加など。メルカリとしては、今後もより多くのお客さまにメルカリを使い、取引を行って欲しいと思っています。ただ、メルカリの取引量が増えれば増えるほど、上記の課題も大きくなり、これはサステナブルなサービス設計とはいえません。日本のC2Cフリマ事業を牽引するメルカリだからこそ、この物流業界の課題をサービス設計を工夫して解決に導く必要がありました。
メルカリのビジネス上の課題
従来の配送体験は、パートナー企業に完全に依存した形になっており、お客さまにはパートナー企業の配送サービスを利用していただいていました。そのためメルカリ側では配送オペレーションや配送システム、料金体系やUXなどを柔軟に変更・改善することはできませんでした。時流を捉えユーザーファーストの体験を提供したいメルカリとして、他社に依存しない形のサービス設計を開発する必要がありました。
そして、生まれたエコメルカリ便 🌱
『エコ』を冠するエコメルカリ便は、エコロジーかつエコノミーなサービスという意味を込めてそう名付けられました。前述の課題をサービス設計で解決しつつ、配送の体験自体も向上させることが、このプロジェクトのUXデザイナーとしてのゴールでした。
それを為すためには、そのサービス設計上の制約と戦う必要がありました。
⛓️ 制約の中での最適解の模索
エコメルカリ便には従来のメルカリ便とは異なり、サービス設計上の制約があります。
非対面での発送・受取を促進することが物流業界の負荷軽減のキーになります。それで採用された「置き配」と「スマリボックス」の活用。もちろんこれらは便利な発送・受取の手段です。ただ、今回難しいのはそれらの利用に限定されていること。
これに加え対象エリアが初期は1都3県*²のみ。Sellerは出品時点ではまだ、Buyerが対象エリア内になるのか対象エリア外になるのかわかりません。このマッチングをうまく成立させる必要があります。(※ Seller = 商品の出品者、Buyer = 商品の購入者)
これらの制約があった上で、エコメルカリ便を選ばれて使われるサービスにする必要があります。
📝 エコメルカリ便で発送されるまでのチェックポイント
取引体験のジャーニーを俯瞰しつつ、エコメルカリ便が利用されるまでのチェックポイントを見定めます。
この4つのチェックポイントを突破して初めて、エコメルカリ便での配送が成立します。
【チェックポイント1】 SellerとBuyerがともに対象エリア内にいる
単純に
● 対象エリア内のSellerのみ、エコメルカリ便を指定して出品できる
● 対象エリア内のBuyerのみ、その商品がフィードに表示され購入できる
と、できればわかりやすいです。
ただ、Sellerは商品が表示される対象者が絞られている出品方法をわざわざ選ぶでしょうか。対象エリア内だけでなく全国のBuyerに対して露出したいと思うのが当たり前です。エコメルカリ便だと送料が安くなるというSellerのベネフィットがありますが、それだけでは同じ商品を"全国向け出品"と"対象エリア限定向け出品"として、二重に出品されてしまう未来も見えます。
二重出品は避けてほしいですし、不要な作業が促されていることも良くない点です。これでは選ばれて使われているサービスか?と聞かれると疑問です。
そのため、出品時には全国向けに出品し、実際に購入したBuyerが対象エリア内だった場合にSellerの発送方法選択画面にエコメルカリ便が選択肢として入ってくるような設計にしました。
つまり
という独立した選択肢ではなく、
と、全国対象とエリア限定の配送方法が混在した配送方法として出品する形です。スクリーン上では、Sellerは従来通り、らくらく or ゆうゆうメルカリ便を選択して出品します。
【チェックポイント2】 Buyerが「置き配」「時間指定不可」を許可している
Buyerが対象エリア内であっても、必ずしもエコメルカリ便で配送して良いわけではありません。エコメルカリ便での配送は「置き配限定」、「時間指定不可」、また従来のヤマト運輸・日本郵便とは異なる配送業者が配達を行うことになるのでBuyerからの許可が必要です。このために商品の購入確認画面にて確認を取ります。
「置き配」でもOKかNGかが重要で、主にそこを強調してます。ただし、あくまでBuyerから許可を取るだけであって、Sellerが必ずしもエコメルカリ便で発送するとは限りません。「配達ドライバーさんや環境のためにONにしておこう」、そんな表現になっています。
【チェックポイント3】 商品のサイズが「100cm以下」である
Buyerの許可が得られた商品の場合、Sellerの取引画面にはエコメルカリ便の選択肢が追加されてされています。
Sellerは従来通り、商品の大きさを測り、サイズ選択画面の選択肢から一つを選びます。商品サイズによってはエコメルカリ便より安く発送できる発送手段があるので、Sellerはエコメルカリ便を選んでもいいし、選ばなくてもよい設計になっています。
【チェックポイント4】 Sellerが「スマリボックス」で発送できる
エコメルカリ便を選ぶと、発送場所には「スマリボックス」が表示されています(発送可能場所は順次、拡大予定)。Sellerが「スマリボックス」で発送できる場合はそのまま進みます。
これで晴れてエコメルカリ便で発送が成立します。
🎨 デザインの意図
ややこしい制約はありつつも、デザインの意図としては、たとえSellerもBuyerもエコメルカリ便に関してよくわかっていなくても使えるデザインです。
Seller、Buyerともに、いつも通りにメルカリを使う中で、エコメルカリ便が自然に選択肢の中に入ってくる、そんな体験にしました。既存体験のユーザビリティを毀損することなく、自然に受け入れられて使ってもらうための設計です。1stフェーズでの最適解として、これを採用しました。
もちろん今後、対象エリアや発送可能場所が拡大され、エコメルカリ便の荷量が、らくらく/ ゆうゆうメルカリ便に追いついてきたら、1つの独立した配送方法としてリニューアルされることは間違いないと思います。その際のリブランディングも今から楽しみです!
最後に
エコメルカリ便は、まだ生まれたばかり。Day1のサービスです。
UXもまだまだ荒削りですが今後、アップデートや改善が継続的に加えられていきます。サステナブルかつ直感的な配送体験を作っていきますので、楽しみしていてください。
エコメルカリ便のUXデザインは僕が担当しましたが、
関連するグラフィックの制作はアートディレクターの@Takuroさん、サービス内に用いられるワーディングの精査にはUXライターの@Koseiさんに制作いただいてます。
同世代の3人組🤝 お2人とも、ありがとうございました!
メルカリではUXデザイナー、UXリサーチャーを都度、募集しています。
募集状況は以下から確認できます。