虹を探して
突然降り出した雨
コンクリートを黒く染めていく
雨の臭い
大粒の雨が地面に激突し、弾け、蒸発する
植え込みの草花が雨粒に揺れている
葉の先からしたたり落ちるしずくがきらきらと輝いている
自転車置き場のトタン屋根を打ち鳴らす音はいっそう激しくなってきた
非常階段の踊り場もだんだんと濡れていく
空はあんなにも狭いのに、どこからこれだけの雨が落ちてくるのか
雲が勢いよく流れている
今日は一段と空が低い
ずっと見上げていると何かに押しつぶされそうな気分になる
かといって黒く染まったアスファルトを見下ろしても飲み込まれそうな感覚に襲われる
仕方がないのでひざを折り、お尻が地面につかないようにしゃがみ込む
軒下に雨が流れ込んでいるのが見えた
蜘蛛の巣に付着したしずくはまるで宝石のようであるのに主はどこかに行ってしまったようだ
目の前を通り過ぎていく自転車は雨から逃れようとして失敗した
激しく動くワイパーは、見ていて飽きない
それでも濡れた路面を走る車はどこか得意げで興をそぐ
やはり雨の日は歩くに限る
『やまない雨はない』とそんなことは雨が降っているときには考えないものだ
もしかしたらずっと降り続くのかもしれないという不安こそ、この景色にふさわしい
子どもたちの声が聞こえる
雨音に負けないたくましさを疎ましく思う
失くしたものを嘆くのならこんな日が良いのだろう
もう十分に楽しんだ
そろそろ出かけよう
虹を探しに